2026.6.4

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EUと加盟国大使が語るLGBTIQ+への取り組み

EUと加盟国大使が語るLGBTIQ+への取り組み

毎年6月は「プライド月間」として、世界各地でLGBTIQ+の権利に対する理解促進や啓発活動が行われている。東京・代々木公園で開催される、LGBTIQ+の権利推進と多様性のある社会の実現を目指すイベント「Tokyo Pride 2026」に先立ち、LGBTIQ+政策において世界に先駆けて取り組んできた欧州連合(EU)およびEU加盟国のうち3カ国の駐日大使が、これまでの法制度整備の進展や今後の課題について意見を交わした。

本セッションでは、ジャン=エリック・パケ駐日EU大使がモデレーターを務め、アントワン・エヴラー駐日ベルギー王国大使、デミアン・コール駐日アイルランド大使、ジルベルト・ジェロニモ駐日ポルトガル大使が参加した。

LGBTIQ+:レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー・インターセックス・クィアなど性的少数者

モデレーターを務めたパケEU大使(2026年4月23日、東京)

EU大使:欧州や日本において、LGBTIQ+コミュニティと社会がどのように向き合ってきたのか、またそれぞれの社会がいかに包摂的(インクルーシブ)であろうとしてきたのか、さらにLGBTIQ+に対する差別の問題にどのように取り組んできたのかについて議論できることを嬉しく思います。

まずは、各国において政策の転換点となった出来事についてお聞かせください。あわせて、社会や制度、組織の変化がどのように生まれたのか、その要因についてもお伺いできればと思います。

ポルトガル大使:ポルトガルでは段階的に取り組みが進展してきましたが、決定的な転換点となったのは2010年の同性婚の合法化です。これにより、我が国は世界でもかなり早い段階で同性婚を認めた国の一つとなりました。この画期的な法律は、差別禁止措置の強化や性自認の自己決定を法的に認めるといった法律上の進展にもつながりました。

また、重要なのは、これらの動きが単独で生じたものではなく、ポルトガル社会におけるより広範な意識変化を反映している点です。すなわち、基本的権利、尊厳、そして平等といった価値をめぐり、社会全体および人々の間で共通理解が徐々に形成されてきたことを示しています。

ポルトガルのLGBTIQ+政策の転換期について語るジェロニモ大使(2026年4月23日、東京)

アイルランド大使:アイルランドにとって、真の転機となったのは、2015年の同性婚合法化に関する国民投票でしょう。62%対38%で賛成が多数を占め、アイルランドは国民投票によって婚姻の平等を実現した最初の国となりました。これは、この問題に深く関与し積極的に活動する人々が、草の根レベルから市民社会へと広げる形で運動をけん引してきた成果です。ポルトガルと同様に、長期間にわたる社会変革のプロセスが結実したものと言えるでしょう。

アイルランド社会にとって、尊厳と平等の原則を確立した非常に重要な瞬間であり、私たちはそれを国民投票によって成し遂げたのです。人々はこのことを誇りに感じていますし、社会の継続的な発展に対する貢献は大きいと思います。

EU大使:重要な社会変革に賛成しなかった38%の人々も、「国民投票の結果だから」ということで、その変革を受け入れることができたのでしょうか?

アイルランド大使:はい、そう思います。長年にわたる運動の末に実現したわけですから、社会的にも政治的にも十分に議論され、公開され、検討されてきたと考えていいと思います。全員が賛成票を投じたわけではありませんが、賛成しなかった人々も「自分たちの声に耳を傾けてもらえた」「決定のプロセスに参加できた」と感じていたはずです。ですから、この国民投票が大論争に発展するようなことはなく、逆に以前であればもっと合意が困難だったであろう問題について、人々が一つにまとまることができたと思います。何より、社会の中でより広範な対話と議論が行われ、多くの意見が聞かれるようになったという点が重要です。

アイルランドにおける同性婚合法化に関する国民投票について説明するコール大使(2026年4月23日、東京)

EU大使:市民を巻き込み、十分な準備を整えた上で国民投票を実施するというアイルランドの手法は、2018年の人工妊娠中絶禁止に関する憲法規定の撤廃を問う国民投票においても見られたように、注目すべきものです。これはアイルランドにおける政治・社会のあり方、そして草の根レベルの市民参加の大きな特徴を示していると思います。

ベルギー大使:ベルギーにおける転換点は、2003年の同性婚の合法化でした。私たちはオランダに次いで世界で2番目にこれを実現した国となり、さらに2006年には同性カップルによる養子縁組も認められました。

もちろん、これらはNGOによる数十年にわたる運動の結果であり、議会における議論も決して容易なものではありませんでした。しかし特筆すべきは、同性婚が導入されると、議会においても社会においてもその議論は消えていったという点です。比較的短期間のうちに、それは社会の既成事実として受け入れられ、もはや論争の対象ではなくなりました。

EU大使: EUレベルの政策枠組みは、加盟国レベルにおける制度的・社会的な動きに強く影響を受けながら形成され、発展してきたものです。一方で、この問題は世界の多くの国々において現在も議論が続いており、異議が唱えられることもあります。そのため、性的マイノリティの権利擁護に対する反発は今後も生じる可能性があり、全ての課題が解決されたわけではありません。こうした状況を踏まえ、ベルギーにおいて現在残されている課題をどのようにお考えでしょうか。

ベルギー大使:ホモフォビアやトランスフォビア、そして暴力、とりわけソーシャルメディア上の暴力に関しては課題が残っています。この点についての議論は現在も続いています。政策は常に状況に応じて調整される必要があり、EUとしても、権利が法的に保障されている一方で、反発が今後も起こり得ることを常に認識しておく必要があります。加えて、新たな形のトランスフォビアやホモフォビアの出現にも注意を払い、それらに対抗するために法的枠組みを継続的に適応させていく必要があります。

ベルギーでのLGBTIQ+の権利促進をめぐる課題について語るエヴラー大使(2026年4月23日、東京)

アイルランド大使:アイルランドは、LGBTIQ+の権利に対する取り組みを、国内および外交政策における重要課題と位置づけています。世界や欧州においてLGBTIQ+の権利をめぐる反発が広く見られることについて、私たちは非常に強い懸念を抱いています。

アイルランドは国連人権理事会(UNHRC)において2027~29年の理事国に立候補していますが、LGBTIQ+の人々の権利擁護を5つの優先課題の1つとして掲げています。その重要性を強調し、LGBTIQ+の人々の権利の擁護を引き続き推進し、依然として存在する差別が、アイルランド国内のみならずEUおよび国際レベルにおいても優先課題として位置づけられるよう取り組みます。

それでもなお課題は残るでしょう。特にソーシャルメディアに関しては強い懸念を抱いています。今後も引き続き注視し、EU法および反差別の観点から検討すべきだと考えています。

ポルトガル大使:もう一つ、別の問題について触れておきたいと思います。これまでに見られた大きな進展については、もちろん私たちは非常に喜ばしく受け止めていますが、重要な課題が一つ残っています。それは、法の下の平等を、日常生活や現実の中に完全に反映させることです。

差別や偏見は、ときに非常に目立たない形で依然として存在し続ける可能性があり、実際に存在していることも私たちは認識しています。これは特に職場や学校、そして先ほども言及されたソーシャルメディアにおいて重要な問題です。

この課題に取り組むためには、社会全体としてより持続的な努力が必要だと考えます。それは教育や意識啓発を通じた取り組みであり、また社会の全ての人々に届く包摂的な公共政策を通じた取り組みでもあります。その意味で、この闘いは今も続いていると言えます。

EU大使:若い世代の間において、依然として強いホモフォビアやトランスフォビアが存在していることに、私は大きな衝撃を受けています。教育現場がこの問題に十分かつ包括的に対応できているとは、まだ言い難い状況だと思います。こうした若い世代はいずれ政治システムを担う存在へと成長していくこと考えると、これは非常に大きな課題であり、EU加盟国全体において、より大きな関心とさらなる投資が必要な分野だと考えています。

LGBTIQ+に関するEUの枠組みの有用性について尋ねるパケ大使(2026年4月23日、東京)

EU大使:さて、次の議題に移ります。EUでは「LGBTIQ+平等戦略2026年~2030年(LGBTIQ+ equality strategy 2026-2030)」を策定しています。この戦略は加盟各国の動向に深く根ざしたものです。もちろん、27の加盟国には大きな多様性がありますが、皆さんの国においてLGBTIQ+に関する政策を推進する上で、EUの枠組みはどのように役立っているでしょうか?皆さんの国の政府や市民社会は、EUからさらに多くの支援を必要としているでしょうか?

アイルランド大使:アイルランドにとって、EUがLGBTIQ+に関して共通の問題意識とビジョンを持っていることは非常に重要です。私たちの声を一つにまとめることで、より大きな影響力を発揮できると思います。

先ほど、LGBTIQ+の権利擁護に対して国際的に広範な反発が起きているという話がありましたが、平等、多様性、包摂という私たちのアジェンダが世界で確実に受け止められるためには、EUが国際的に掲げる価値が非常に重要だと考えています。

日本では、特に市民社会との交流や、プライド月間や継続的に行われている取り組みへの支援を通じて、EUの価値を表明することで、非常に前向きな影響をもたらすことができると考えています。EUと加盟国が声をそろえて発信することで、国内での取り組み強化につながるだけでなく、国際的な場において、私たちがどのように自らを提示し、問題にどう関与していくかという点においても重要だと考えています。

ベルギー大使:EU内でも加盟国によって状況は大きく異なります。このテーブルに着いている各国も、それぞれ異なるレベルで、これまでさまざまな形でこの課題に対応してきました。そのため、加盟国が共通の枠組みに到達し、それを完成させていくための「共通の方向性」を持つことが重要だと考えます。

また、各国の法制度の違いや、ホモフォビアやトランスフォビアへの対応方法について経験を共有し続けることも重要です。国によって対応の効果には差があるため、政府間で最良の実践例(ベストプラクティス)を共有し、より効果的な方法を検討することには大きな意義があります。

EUの枠組みは非常に重要です。こうした問題の重要性が相対的に低く見なされている可能性のある加盟国に対しては、その重要性を訴え、より注意を払うよう促すことも必要です。また、EUが域外に対しても発信することが重要であるという点について、アイルランド大使の意見に大いに賛同します。EUはジェンダー平等や婚姻の平等など、人権の擁護に積極的に取り組んでおり、私たちはそうしたEUの立場に基づいて、域外でも人権擁護を推進することができます。

ポルトガル大使:EUの枠組みは、私たちに方向性を示すだけでなく、推進力も与えてくれます。この集団的な側面こそが各国の水準を引き上げる一方、27加盟国の各国がそれぞれの実情に応じて実施方法を調整することを可能にしているからです。その意味で、EUの枠組みは相互の励ましを生み出し、時には前進を促す前向きな圧力としても機能しています。

私たちは、今後も取り組むべき課題があることを認識しています。したがって、EUレベルで行動することは、こうした取り組みの認知度と信頼性を域外においても高めることにつながります。

アイルランド大使およびベルギー大使の発言に全面的に同意しますが、平等と包摂(インクルージョン)が共有された価値であり、世界共通のコミットメントであるというメッセージをさらに強化することにもつながります。

LGBTIQ+への取り組みについて語る(左から)コール駐日アイルランド大使、パケEU大使、ジェロニモ駐日ポルトガル大使、エヴラー駐日ベルギー王国大使(2026年4月23日、東京)

EU大使:ありがとうございます。では続いて、日本と欧州が互いに学び合い、協力しながらLGBTIQ+の権利擁護をどのように推進していけるのかについて、ご意見をお聞かせください。また、どのような点に希望を感じているかについてもお聞かせいただければと思います。

日本では、LGBTIQ+をめぐる問題は依然として政治的課題であると思います。特に同性婚や、LGBTIQ+コミュニティに対する差別を是正すべきだという点については、世論の考え方と法制度整備の進展との間に、明らかな隔たりが存在しているように見えます。

その意味で、EU加盟国の経験は非常に参考になると思います。国によっては政治主導で政策を前進させたケースもありましたが、多くの場合、これまで皆さんがお話しされたように、市民社会が政治家に働きかけ、必要な法的枠組みの整備を進めるよう促してきたことが大きな役割を果たしてきました。

アイルランド大使:まずは「何に希望を感じるか」という質問にお答えしたいと思います。アイルランドでの経験を踏まえるなら、世論の変化を見ると希望が感じられると思います。例えば、同性婚に関する日本での世論調査を見ると、70%以上が同性婚を支持しています。このように世論がある方向へと動き出すと、やがて政治がそれに追随するという傾向があります。

もちろん国によって事情は異なりますし、変化のスピードもそれぞれ違うでしょう。それでもLGBTIQ+の人々の権利をめぐる状況は前進しており、今後必要となる立法的・政治的措置も前に向かって進んでいると確信しています。

日本とEUが協力して、平等、包摂、非差別という基本的価値を世界に向けて発信し続けることが非常に重要です。そうした価値が圧力にさらされている今、今後も失われることがないよう、国際的な場で共に声を上げていくことがとても大切だと思います。

ポルトガル大使:私が最も重要だと思うのは、社会の誰もが参加できる開かれた議論の場を持つことだと思います。もちろん、最終的に意思決定の責任を負うのは政治家ですが、議論には政党だけでなく、市民社会やNGOも参加できる必要があります。

また、EUや各加盟国は、それぞれの経験を共有する用意があるべきです。実際、政策、法的アプローチ、さらにはパブリック・コミュニケーション戦略に至るまで、欧州には非常に幅広い経験があります。しかし、前進するために本当に重要なのは、やはり議論そのものだと思います。

アイルランド大使:私もその意見に強く同意します。社会において、あらゆる人が自由に発言でき、さまざまな視点や意見が尊重されることが重要だと思います。それによって、性別や性的指向にかかわらず、一人ひとりの個人の権利が尊重され、広く議論を行うことが可能になります。

ベルギー大使:少し個人的な話をさせてください。私はベルギー大使ですが、私自身、同性婚をして7年になります。そのこと自体が、権利の平等や機会の平等がある社会は実現可能であることを示していると思います。同性婚をしていることやゲイであることが、自分の望む仕事に就いたり、社会の中で他の人々と平等な立場を持ったりする妨げになるべきではありません。

そして、それこそが私たちが世界に向けて、そしてここ日本においても伝えようとしているメッセージです。特に日本の若い世代に対して、こうしたことは実現可能であり、何も問題ではなく、実際には、実現しようという意思さえあればそれほど難しいことではないのだということを示したいのです。

EU大使:ありがとうございました。今日のラウンドテーブルにご参加くださった大使の皆さまに感謝申し上げます。最後に、私たちはEU市民として「Tokyo Pride 2026」に参加できることを大変誇りに思っています。会場で多くの皆さまとお会いできることを楽しみにしています。

「EUと加盟国大使が語るLGBTIQ+への取り組み」ハイライト動画

関連記事:EUはLGBTIQの人々の権利をどのように擁護していますか?(2024年8月)

 

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