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人や社会のために自ら行動するには何が必要ですか?

読者の提案とCEOの講評 ALSOK・村井豪グループCEO(5月25日)

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村井グループCEOの提示した「人や社会のために自ら行動するには何が必要ですか?」という課題に対し、多数の投稿をいただきました。紙面掲載分を含めて、当コーナーでその一部を紹介します。

■優しさ同士は衝突しない 

寒河江 真康(産業能率大学経営学部4年、21歳)

「正しさと正しさは衝突するかもしれないが、優しさと優しさは衝突しない」。私がいつも胸に秘めている言葉だ。

駅で白杖(はくじょう)をついた女性が私と同じ車両に乗る場面に、よく遭遇する。女性は目が見えないため、ホーム柵を手で触りながら乗車位置を確認しており、危険を伴う状況だった。しかし、その女性を初めて見かけたとき、私は「声をかけては迷惑ではないか」と考えてしまい、見て見ぬふりをしてしまった。

私がある高僧から冒頭の言葉を授かったのはその後だ。この言葉をきっかけに自分の中で意識が変わり、以降はその女性を見かけたときにためらうことなく手を差し伸べられるようになった。

正義は時としてぶつかり合う。だが、優しさ同士は争いに発展することはない。

この考え方が当たり前になれば、人々が勇気を持って一歩踏み出し、人や社会のために自ら行動できるようになると思う。

■「ありがとう」が力になる

松永 果歩(関東学院六浦高校2年、16歳)

他人のために動くことが自分の成長につながる、と実感することが大切だと思う。特に「ありがとう」と感謝される経験は、行動を続ける大きな力になる。誰かに感謝されると、自分のしたことが役に立ったと実感できて、もっと頑張ろうという気持ちが自然とわいてくるからだ。

私はボランティア活動に参加したとき、最初はあまり前向きではなかった。正直、少しめんどうくさいと思う気持ちもあった。しかし、活動の中で「ありがとう」と声をかけてもらったことで気持ちが変わった。自分の行動が誰かの役に立っていると分かり、とてもうれしかった。その経験をきっかけに、「やってよかった」と思うことが増えていった。今では、自分から進んでボランティアを探すようになっている。

他人のための行動は自分の気持ちを前向きにしたり、将来の力にもつながったりするのだと感じる。「ありがとう」と言ってもらえたら、私はもっと誰かのために行動できる。

■捨てるもの 

山本 暢也(会社員、41歳)

必要なものは何かと考えたとき、逆に不要なものが思い浮かんだ。それは羞恥である。

ある日、娘と散歩をしていると、反対側の車道を小走りで進む高齢の女性がいた。娘が「あの人あぶないよ」と強く言うので追いかけた。

女性はここがどこかわからない様子で、氏名と連絡先を書いた札を持っていた。どうやら認知症のようで、警察に保護をお願いし、無事に家族のもとへ帰すことができた。

帰り道、娘は「表彰されちゃうかも」と言った。だが私は思った。もし自分一人だったら、私は声をかけただろうか。大の大人が声をかけ、勘違いでしたでは恥ずかしい。そんな羞恥が、とっさの行動を妨げたのではないか。 

人や社会のためになるアイデアを思いついても、行動するには勇気がいる。否定されるのでは、失敗して恥をかくのでは、と恐れるから。行動するために、この羞恥を乗り越えること。それこそが最初の一歩ではないかと思う。

【以上が紙面掲載のアイデア】

■始まりは「半径5メートル」

鈴木 那央(白鷗大学法学部3年、20歳)

人や社会のために自ら行動するには、自分の「半径5メートル」以内にいる家族、友人、地域に目を向けよう。そこで幸せを願う姿勢が出発点になる。半径5メートルは両手を広げ、その少し先までの範囲だ。自分のそばで困っている人に声をかける、友の悩みを聞く、地域の活動に参加する。具体的な行動はいろいろと考えられる。

私は飲食店でのアルバイトがきっかけで地元の児童養護施設の食事会でボランティアに参加した経験がある。食事会の前は外部からの参加者に募金を呼びかけ、当日は食材や食器類を準備した。予想した以上に忙しくて大変だった。だが、終了後に養護施設の職員や子どもたちから「ありがとう」「ごちそうさま」と感謝の言葉をいただき、自分の小さな行動が多くの人の幸せにつながったと実感した。私自身も相手の半径5メートル以内で幸福になれたのだ。

ささやかな範囲での行動が周囲に幸せを広げ、社会へ波及する。これからも身近な人々との関わりを大切にし、まわりで幸福の連鎖を実現していきたい。

■「まあいいか」にはしない

武智 隆太(立命館大学スポーツ健康科学部3年、20歳)

人や社会のために動くには、日常的によくありがちな「まあいいか」という思考停止を一度やめる勇気が必要ではないだろうか。

例えば道端に落ちているゴミや、公共の場の使いにくさ、あるいは誰かが少しだけ嫌な思いをしている瞬間に、私たちはつい見て見ぬふりをする。自分が動かなくても誰かがやるだろう、という思いや自分一人では何も変わらないという、無意識の諦めに流されているからだ。この「まあいいか」という思考の癖を自覚し、踏みとどまることが行動の第一歩となる。

必要なのは、その先にいる「誰か」の存在を具体的に思い浮かべる想像力だ。「ここを片付ければ、次に通る人が楽になる」「自分が声をかければ、その人の不安が少し和らぐ」。そんな小さな予測が、無関心の壁に穴を開ける。

大きな社会変革を志す必要はない。日常の風景に潜む小さな違和感を拾い上げ、自分ができる範囲でその「隙間」を埋める。そんな小さな積み重ねが、他者への優しさが循環する社会を結果的に形づくっていくのである。

■「自分のため」を入り口に 

藪田 敦大(中央大学経済学部3年、20歳)

「人の役に立ちたい」という崇高な意識や正義感を前提にしてしまうと、行動へのハードルが上がりすぎてかえって一歩を踏み出せなくなることがある。だから、「自分のため」という動機を肯定したい。

身近な例をひとつ挙げてみる。私は大学受験を終えたあと、不要になった大量の参考書を後輩に譲ったり、フリマアプリで売却したりした。早く部屋を片付けたい、少しでもお金に換えたいという自分の都合が動機だったが、結果としてその本は安価な教材として再利用された。不用品を整理し小遣いを稼ぎたいという自分のための行動が誰かの役に立ったばかりか、資源の無駄を減らすことにもつながったのだ。

「社会のため」という言葉は立派すぎる、と私は思う。最初は自分のための行動だったとしても、それが他者に貢献し、互いに利益がある「Win-Win」の状態につながればいい。この肩の力が抜けた行動が、社会をより良く動かす持続可能な原動力になると思う。

■次世代を良くするために 

清水 亨(会社員、63歳)

銀行システムの企画や開発に長く携わる中で、私は幾度も「想定外」の危機に直面した。大規模なシステム障害や東日本大震災にも対応した。刻一刻と被害が広がる現場で、誰かが判断をためらえば、社会の決済インフラはまひする。迷うより先に身体を動かしたのは、特別な勇気ではなく、「今、ここで自分が動かなければならない」という、染み付いた役割への自覚であった。

60代になり、私の行動原理はよりシンプルになった。利害や評価から離れ、ただ「次の世代により良い社会を残したい」という願いだ。長年、安全を守るために立ち止まらずに走り続けてきたが、今一度止まって人生を振り返ることで、自分が社会に返せる役割が鮮明に見えてきた。

社会のために動くには、大きな覚悟よりも、日々の積み重ねで育つ「自分に何ができるか」という静かな自覚こそが必要だ。立ち止まり、役割を再定義する。それが、次の一歩を強く踏み出す「動き始め」の原動力になるのだと確信している。

■不完全な一歩 

皆川 藍(白鷗大学法学部3年、20歳) 

人や社会のために自ら行動するには「考えすぎないこと」が必要だ。

以前、旅行先の名古屋駅で外国人観光客から目的地への電車での行き方を尋ねられた。私自身も初めての場所だったため、自信がなく、「自分が教えたことで間違えたら申し訳ない」という不安があった。

一度は断ろうと思ったが、やらなければ後悔しそうだと感じ、目的の路線の改札まで案内した。知っている英単語をつなぎ合わせたり、携帯の翻訳機能を使ったりしながら、拙い説明ではあったものの必死に伝えた。すると改札に着いた時、外国人の方は感謝の言葉を伝えてくれ、私自身も大きな安心感を得た。

助けが必要な人が目の前にいても、多くの人は自分よりもっと適した人がいると考え、行動をためらいがちだ。しかし、手を差し伸べる時に必要なのは完璧にやれるという自信ではなく、考えすぎず、まず動いてみるという楽観的な姿勢ではないだろうか。これからもちょっとした一歩を踏み出せる自分でいたい。

■暇という心の余白 

井上 海(中央大学経済学部2年、19歳) 

人や社会のために自ら行動するには「暇」が必要だ。ここで言う「暇」は、単に予定が空いているという状態ではない。時間的、精神的、情報的に余裕ある、つまり心に余白がある状態のことである。

現代社会は、インターネット上のありふれた情報を取捨選択したり、SNSなどを通して人間関係に悩みを抱えたり、常に気持ちが忙しく、何かに追われていると感じる人が多いと思う。私も日々の大学の授業、アルバイト、サークル、ゼミ活動などに追われている。そうした生活を続けていると、自分のことで精いっぱいで、他人や社会にまで意識を向けにくくなる。振り返れば、高校時代は今より「暇」だった。当時は、一度立ち止まって物事を考えたり、友人の勉強を手伝ったり、自分以外のまわりに目を向ける余裕があった。

皆が効率ばかりを追求する現代社会では、困っている人を助けにくいように感じる。人や社会のために自ら行動するには、「暇」という心の余白を持つことが必要だ。

■気負いすぎない 

角田 麻紘(会社員、34歳)

小学校時代からの友人が最近起業した。子どもの頃から得意だった習字を究め、命名書を制作する仕事だ。生まれてきた子どもの名前に込めた家族の思いをくみ取り、一枚一枚丁寧に書き上げる。家族の大切な節目に寄り添い、喜びや思い出を形にするその仕事に私は魅了された。

私はこれまで、「人や社会のために自ら行動する」と聞くと、特別な能力やリーダーシップ、そして大きな活動や改革が必要だと思っていた。しかし友人は、子どもの頃から好きだった習い事を30年間続け、その得意分野を生かして、自ら一歩を踏み出した。

近年は、SNSやインターネットを通じて、個人でも自分の得意なことを社会に届けやすくなった。だからこそ、人や社会のために行動するには、「大きなことをしなければならない」と気負いすぎないことが大切だと思う。自分の「好き」や「得意」を生かした行動やアイデアが、周囲の誰かを幸せにし、社会に良い影響を与えるのではないだろうか。

■父の背中が教えてくれた

林 優輔(立命館大学経済学部2年、19歳)

現代社会は利便性が向上した半面、「誰かがやってくれるだろう」と他人任せで、無関心で、閉鎖的な社会になったと感じる。私はこうした社会において人や社会のために自ら行動するには、目の前で起きていることを自分事としてとらえ、行動へとつなげる責任感が必要だと考える。 

私がこう考えたのは19年間、父の背中を見て育ったからだ。父は地方自治体の公務員で、文字通り「全体の奉仕者」として社会を支えている。時には災害派遣として被災地に乗り込むこともあった。仕事とは別に、地元の観光地の盛り上げのために就寝前や休日も資料の整理や会議などで忙しくしていた。

当時は家族と一緒に過ごしている時でも、地域について考えを巡らしていた父がなぜそこまで仕事を増やすのか、理解できなかった。だが、成長するにつれて、社会を作るのは誰かの指示ではなく、個人の強い意志と責任感だと気づかされた。私も父のように、より良い社会に向け、自分に何ができるか、問い続けて行動したい。 

■小さな行動が社会を変える

南 優吾(中央大学経済学部2年、19歳)

人や社会のために自ら行動するには、相手を思いやる気持ちと、実際に動く勇気が必要ではないかと思う。良いことだと分かっていても、つい「自分がやらなくてもいい」と考えてしまい、行動できない人は多い。しかし、一人ひとりの小さな行動こそが社会を支えているのではないだろうか。

以前、雨の日に駅の駐輪場で何台もの自転車が倒れている光景を目にしたことがある。多くの人は急いで通り過ぎていたが、通路をふさいでいて危ないと感じたため、自転車を直し始めた。すると、周囲の人たちも手伝ってくれ、何人かで整理することができた。自分から行動を起こせば、周囲にも良い影響を与えられると実感させられた経験だった。

また、人や社会のために行動するには、普段から周囲に関心を持つことも大切だ。問題に気づかなければ、行動にはつながらないからである。特別なことをするのではない。日常生活の中でちょっとした行動を積み重ねていくことが、人や社会のためにつながっていくと思っている。

■「恩返し」の連鎖 

長谷川 桜(会社員、24歳) 

放課後は校庭へ向かい、部活動に打ち込むのが私の日常だった。しかし近年は部活動の地域展開(地域移行)が進み、「学校だけ」で活動が完結する環境は当たり前ではなくなっている。 

それを知った私は、部活動の規模が縮小した中学生のために地域活動としての大会を開催する取り組みに参加した。そこではプロの試合のような選手紹介動画や優秀選手の表彰、地元飲食店による食事提供など、地域が主体となって部活動の環境を未来へ残そうとしていた。 

この経験から、自分が当たり前に享受していた環境を主体的に社会に還元しようとする意識が必要だと気づいた。こうした「恩返し」は新たなコミュニティーを創出し、地域活性化につながる。また、好きなことに打ち込める環境は、未来を担う世代の成長を支える。 

私は、部活動を通して得た喜びを次の世代へ返していきたい。人や社会のために行動するには恩返しの意識が必要で、その連鎖がより良い社会を形づくるのだと考える。 

■立場逆転スイッチ

廣田 圭純(中央大学経済学部2年、19歳)

人や社会のために自ら動くには対象を見つめる観察力と、そこからドラえもんの道具を考えるような遊び心を持って工夫することが必要だ。

私は塾講師のアルバイト中、生徒がどの話題に興味を持ち、どの過程でつまずいているのかを観察してみた。すると生徒は正解を教わる以上に理解した喜びを誰かに自慢したい気持ちを抱いていることに気づいた。

親の成績向上のために通わせたい思いと子供が抱く義務感のギャップも感じる。学びを楽しむ形で埋められないか考えてみると、生徒が先生役に挑戦する「立場逆転スイッチ」を思いついた。実際にその時間を設けたところ、受け身だった生徒が自ら進んで説明しようとしてくれた。

後日、生徒が家でも得意げにその話をしていると聞き、自分の行動が家庭の笑顔につながったと大きなやりがいを感じた。塾は先生が教える場所という固定観念に縛られずに観察で変化を拾い、遊び心を持って工夫することで、温かな循環を持つ社会を作ることに貢献できると考える。

ALSOK・村井豪グループCEOの講評

今回の課題はじっくりと考えないとアイデアが出にくかったと思いますが、積極的にご意見を寄せていただき大変うれしく思います。皆様の身近な経験などと照らし合わせた考察を読んで、多くの気付きを得ることができました。

「優しさ同士は衝突しない」は、ある高僧の言葉によって勇気を得て「温かさ」を実現していく内容で、とても共感しました。当社は警備というリスクをともなう仕事をしている以上、「強さ」と「正しさ」が必要なのは当然ですが、根底には「温かさ」も持っていなくてはならないのです。

「『ありがとう』が力になる」はボランティア活動で人と接するなかで、ご自身が成長している様子が伝わってきました。当社の経営理念においても、常に感謝の心を忘れない「ありがとうの心」を事業の基本精神と位置づけています。「ありがとう」の言葉をもらって充実感を得られたことに自分自身も感謝して、また誰かのために動く気持ちになる。そんな循環が生まれることが理想だと思っています。

「捨てるもの」は、恥ずかしさという心の障壁を乗り越えて行動を起こした体験を考察したもので、意義深く感じました。十分に準備をして警備の仕事に臨んでも、想定外の異変に気がつくことがあります。そんなときにもためらわずに早く対応して、リスクが小さいうちにつぶしておくことが大切です。

皆様のアイデアには、警備の仕事をする上での心構えと共通する要素が多くありました。世界で人々の分断や対立を映す出来事が相次いでいる今こそ、人や社会のために動く意識が求められていると感じます。当社としても何ができるかを考えていくつもりです。

◇――――――◇

何か困っている人を見たら助けようと思うのは人間の自然な感情だ。ちょっとした手伝いでも周りの人から感謝されれば自分の心も温まる。

だが一方で、そんな行動にストップをかける要素も世の中には多く存在する。例えば、あまり他人には関わるべきでないという「常識」。毎日が忙しく追い詰められて、周りに目をやる余裕がないひともいる。

世の中が混乱するときこそ助け合う必要があるのに、ギスギスとした雰囲気も強まりかねない。「お互いさま」で協力するムードを社会でいかに盛り上げるか。知恵の絞りどきだ。

(編集委員 鈴木哲也)

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