トゥモロー・ワールド
劇場公開日:2006年11月18日 109分予告編・フォトギャラリー
解説・あらすじ
英ミステリ界の女王P・D・ジェイムズのベストセラー「人類の子供たち」を「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」「天国の口、終りの楽園。」のアルフォンソ・キュアロン監督が映画化。人類に子供が生まれなくなった西暦2027年。何の目的もなく働いていた国家官僚のセオが、ある日突然、何者かによって拉致される。セオを拉致したのはセオの元妻ジュリアンが率いる反政府組織で、世界がひっくり返るような秘密を掴んでいた……。
作品データ
| 原題または英題 | Children of Men |
|---|---|
| 製作年 | 2006年 |
| 製作国 | イギリス・アメリカ合作 |
| 配給 | 東宝東和 |
| 劇場公開日 | 2006年11月18日 |
| 上映時間 | 109分 |
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映画レビュー
レビューするLast Book of the Bible
One of my favorite sci-fi films. Nearly two decades later and the world feels like its unfolding into the film's prophecy. In Cuaron's bleak England he still lets us have fun in this plot that's linearly paced like a video game. Clive Owen and Chiwetel Ejiofor are the perfect face-off sparring pair, and Michael Caine's refuge would be a futuristic dream home. Inappropriately stylish for Hollywood.
- Dan Knighton さん

-
5.0 - 編集
今改めて見ても度肝を抜かれるSF映画の金字塔
キュアロン監督が2006年に描いた「21年後の未来」。それは『ブレードランナー』の2019年よりずっと後の世界ではあるものの、冒頭、カフェを出た主人公を包み込むのは、現代の延長線上にあるリアルな未来絵図だ。通りにはジェット噴射で空飛ぶ車どころか、二階建てバスと、そしてアジアの片隅を思わせるトゥクトゥクが走り回っている始末。この混沌とした手触りがこそが、作り手たちが周到にシミュレーションした証なのだ。 重ねて炸裂するのが驚異的な”長回し”。実はどこかで切れ目が入っているらしいのだが、要は「長回しかどうか」ではなく、それがどのような効果をもたらすのか、に尽きる。いずれにしてもこの映像がもたらした衝撃性は誰もが認めるところであり、その意味でキュアロンはすべての目論見に勝ったと言えるだろう。 ともあれ、本作に触れると映画の見方が180度変わる。当時のオスカー受賞しなかったのが不思議なくらいだ。
ディストピアからの…
【概要】生きる意味を消失した男が一縷の希望を持ち闘う物語を世紀末的に描く 【特記】未来を失った人類の本能的で根源的な最後の希望劇で子供の存在を問う 【哲学】子供は未来からの使者
【79.4】トゥモロー・ワールド 映画レビュー
アルフォンソ・キュアロンが2006年に世に送り出した『トゥモロー・ワールド』は、公開から20年近くが経過した現在においても、SF映画というジャンルが到達しうる最高到達点の一角を占め続けている。P・D・ジェイムズの原作を大胆に再構築した本作は、単なる近未来劇の枠を超え、人類の存亡という形而上学的な問いを、圧倒的なリアリズムと卓越した映像技術によって描き出した。この作品の歴史的立ち位置は、ゼロ年代におけるポスト9/11文学・映画の文脈において語られることが多いが、その本質は時代を超越した「希望と絶望の葛藤」にある。物語の背景となる西暦2027年、世界は全人類の不妊という未曾有の危機に直面し、唯一政府が機能している英国には世界中から難民が押し寄せる。この閉塞感に満ちた世界観は、緻密な美術設計と冷徹な色調によって具現化されており、観客は劇中の登場人物と共に、出口のない暗闇を彷徨うかのような没入感を味わうことになる。 物語の核心を担うセオ・ファロンを演じたクライヴ・オーウェンの演技は、まさに本作の背骨である。彼はかつて社会運動に身を投じながらも、現在はアルコールと虚無感に浸る役人を、極めて抑制されたトーンで演じきった。オーウェンの真骨頂は、その眼差しにある。冒頭の爆破テロ直後に見せる、ショックを通り越した無関心に近い表情から、人類唯一の希望である妊婦キーを護送する過程で見せる、かつての情熱が再燃していく様への変遷は、繊細かつ力強い。特に、戦火の中を赤ん坊を抱えて歩く中盤以降のシークエンスでは、台詞に頼ることなく、肉体的な疲弊と精神的な覚醒を同時に表現しており、彼という俳優が持つ独特の悲哀と逞しさが、作品のテーマである「再生」を見事に体現している。オーウェンが演じたセオは、ヒーローではなく、ただ一人の人間として崩壊する世界に立ち向かう。その泥臭い生存本能こそが、本作に血の通った現実感を与えているのである。 そして、本作のタイトルが示す「希望」そのものを肉体化させたのが、キー役を演じたクレア=ホープ・アシティである。彼女の演技は、過剰な装飾を排した自然体でありながら、人類で唯一生命を宿した女性という、神話的な重責を鮮やかに背負ってみせた。逃亡生活の中で見せる不安げな少女の顔と、我が子を守ろうとする母としての力強い本能。そのコントラストは、絶望に塗りつぶされた世界において唯一の色彩として機能している。特に、彼女の産声が戦場の喧騒を切り裂き、兵士たちが思わず銃を下ろす奇跡的なシークエンスにおいて、彼女が放つ静かな神々しさは、観客の魂を激しく揺さぶる。アシティの起用は、本作が提示する救済が、権力や知性ではなく、剥き出しの生命力の中にこそ宿ることを証明した。 共演陣もまた、この過酷な世界に多層的な厚みを与えている。ジュリアン・ムーアは、革命組織のリーダーでありセオの元妻でもあるジュリアン役として、短時間の出演ながら強烈な印象を残す。彼女が体現するのは、絶望の中にあっても未来を信じようとする狂気と慈愛の混在であり、彼女の退場が物語の緊張感を一気に加速させるトリガーとなっている。また、マイケル・ケインが演じるジャスパーは、この地獄のような世界における唯一の安らぎだ。かつての風刺漫画家であり、隠遁生活を送る老人という役どころだが、ケインの軽妙さと深みのある演技は、作品にユーモアと哲学的な広がりをもたらした。彼が自由主義的な精神を貫く姿は、崩壊しゆく国家権力への鮮やかな対比となっている。そして、キウェテル・イジョフォーが演じるルークは、正義が容易に狂気へと変質する過程を冷徹に演じ、物語に不穏な緊張感を常に持続させている。 作品の格を決定づけたのは、重要人物であるナイジェル役としてカメオ出演に近い形で登場するダニー・ヒューストンの存在だ。彼は政府の高官として、歴史的な芸術品を蒐集する施設を管理しているが、人類が滅びゆく中でミケランジェロのダビデ像を保護するという矛盾した行為の虚無感を、冷淡なエリート主義で見事に表現した。 演出面において、アルフォンソ・キュアロンと撮影監督エマニュエル・ルベツキが達成した功績は、もはや伝説的である。特に、車内での襲撃シーンや、後半の難民キャンプでの戦闘シーンにおける長回しは、編集という映画的嘘を排除することで、観客を戦場そのものへと引きずり込む。音楽においても、ジョン・タヴナーの「Fragile Liberty」が聖歌のような神聖さを添える一方で、ピンク・フロイドの「Dogs」やキング・クリムゾンの「21st Century Schizoid Man」といった楽曲が、壊れた世界の喧騒を象徴するように鳴り響く。 本作の芸術的評価は、第79回アカデミー賞において撮影賞、脚色賞、編集賞の3部門に選出され、ヴェネツィア国際映画祭では技術貢献賞を受賞するなど、世界的に高く認められた。総じて『トゥモロー・ワールド』は、単なる未来予測の物語ではない。それは、システムが崩壊した極限状態において、人は何のために生き、何を次世代へ繋ぐのかという問いに対する回答である。キュアロンが描いた一瞬の静寂は、21世紀の映画史に刻まれた最も美しい救済の風景であり、私たちはこの映画を観るたびに、明日という日が決して当たり前ではないことを再確認するのである。 作品[Children of Men] 主演 評価対象: クライヴ・オーウェン 適用評価記号と点: A9 助演 評価対象: ジュリアン・ムーア、マイケル・ケイン、キウェテル・イジョフォー、クレア=ホープ・アシティ、チャーリー・ハナム、ダニー・ヒューストン 適用評価記号と点: A9 脚本・ストーリー 評価対象: アルフォンソ・キュアロン、ティモシー・J・セクストン、デヴィッド・アラタ、マーク・ファーガス、ホーク・オストビー 適用評価記号と点: B6 撮影・映像 評価対象: エマニュエル・ルベツキ 適用評価記号と点: S10 美術・衣装 評価対象: ジェフリー・カークランド、ガイ・ヘンドリックス・ダイアス 適用評価記号と点: A9 音楽 評価対象: ジョン・タヴナー 適用評価記号と点: B8 編集(加点減点) 評価対象: アルフォンソ・キュアロン、アレックス・ロドリゲス 適用評価点: +1 監督(最終評価) 評価対象: アルフォンソ・キュアロン 総合スコア:[79.4]
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受賞歴
第79回 アカデミー賞(2007年)
ノミネート
| 脚色賞 | アルフォンソ・キュアロン ティモシー・J・セクストン デビッド・アラタ マーク・ファーガス ホーク・オストビー |
|---|---|
| 撮影賞 | エマニュエル・ルベツキ |
| 編集賞 | アレックス・ロドリゲス アルフォンソ・キュアロン |

