【独自】陸自情報部隊が「愛国心」など調査か 国内有識者ら対象に個人情報収集 数千人分、シビリアンコントロール逸脱も
陸上自衛隊中央情報隊(東京・埼玉、朝霞駐屯地)の対外情報部門「現地情報隊」が、日本人の大学教授やNPO法人代表ら市民を対象に、「愛国心」や「対自衛隊感情」といった思想信条の情報を組織的に調査・収集しているとみられることが22日、元隊員らへの取材や関係資料で分かった。本来は海外でのインテリジェンス(情報活動)を任務とする部隊が、明確な法的根拠なく国内での人的情報収集活動(ヒューミント)を担い、集められた情報は数千人分に上る可能性がある。活動内容は、防衛相をはじめとする政治家や官僚らにも知らされていないとされ、シビリアンコントロール(文民統制)を逸脱している恐れがある。
現地情報隊は、2003年からの自衛隊のイラク派遣で現地の情報が乏しかった教訓を踏まえ、海外で活動する目的で07年に新設された。朝霞駐屯地を拠点とし、関係者によると約50~60人の隊員が所属する。しかし実際は、隊員の大半が国内で市民の個人情報を収集しているという。
熊本日日新聞が入手した資料などによると、調査対象とした大学教授らの氏名や経歴に加え、「対日本感情」「対自衛隊感情」「思想・信条」などが「個人BSD(ベーシックソースデータ)」という報告書に詳細にまとめられ、朝霞駐屯地内で少なくとも数千人分が保管・共有されているとみられる。元隊員の1人は「対象者に同意は取っていない。部隊内で活動の目的や法的根拠が示されたことはない」と証言した。
収集された情報は個人の内心に踏み込むものだった。NPO法人代表の男性の報告書にあった「愛国心」の欄には、海外で中国人と間違えられた際に「徹底的に口論する」などと具体的な言動が記録されていた。
調査対象は、海外事情に精通した有識者が多く、その人物が情報源として利用可能かどうかを見極めるため、現地情報隊が思想的な選別を実施していたとみられる。調査対象となった男性大学教授は熊日の取材に「自衛隊員と名乗る人物が接触してきたことはあるが、まさか個人情報が収集されていたとは想像しなかった。情報収集には全く同意していない」と話した。
防衛省は「(熊日の)取材の前提となっている市民の個人情報収集については把握していない。事実確認に時間はかかるが、何らかの対応は行いたい」とした。
東京都立大の木村草太教授(憲法学)は「収集される情報の利用目的が特定されていない上に、センシティブな情報を適正に管理できているかも疑問だ。内心を探ることは思想弾圧にもつながり得る。探知の段階でコントロールをかける必要がある」と指摘した。(植木泰士、小山智史、迫田真帆)
RECOMMEND
あなたにおすすめPICK UP
注目コンテンツTHEMES
熊本の政治行政-
天草市、次期定例会に21議案提出へ 車中泊できるRVパークなど
熊本日日新聞
-
最賃改定へ2度目の金額提示 熊本地方審議会の専門部会
熊本日日新聞
-
<2026年熊本地震>熊本市庁舎「重大被害なし」 大西市長 検証委に被害報告
熊本日日新聞
-
天草市に「恩返し」の500万円寄付 愛知・名古屋市の企業 奨学金貸与事業に
熊本日日新聞
-
2026年熊本地震3週間 被災交通インフラ、復旧進む 宇城-八代で主要道路の通行再開 新幹線、南九州道の一部は不通
熊本日日新聞
-
【独自第5弾】陸自部隊の個人情報収集、部隊関係者が「違法」と公益通報 「行政文書として管理されていない」
熊本日日新聞
-
<2026年熊本地震>大西市長「手厚い財政支援を」 木原官房長官に要請書提出
熊本日日新聞
-
御船町の廃棄物処理施設計画 住民投票条例の直接請求可能に 2住民団体提出の署名、必要数上回る
熊本日日新聞
-
<2026年熊本地震>〝火事場泥棒〟許すな 熊本県警が警戒強める 2016年熊本地震、2024年能登地震でも多発 全国から応援、防カメ増設
熊本日日新聞
-
<2026年熊本地震>八代市の断水、8割解消 大半は夜間給水制限
熊本日日新聞
STORY
連載・企画-
連載小説「家族晴れ」
桜木紫乃・作 くわはらまい・挿絵
札幌市の観光名所・さっぽろテレビ塔。大学卒業後、アルバイト生活を続けてきた菊池太陽は、正社員として採用されることになった。ところが太陽の初出社の日、専業主夫の父・誠が、突然、家出してしまう。穏やかだったはずの家族の変化に戸惑う太陽は、職場で「プラネタリウム再建」という一大プロジェクトを任されることになるのだが-。直木賞作家・桜木紫乃が、青年の成長と新たな家族のあり方を描く。 -
武田真一のおしゃべり多様性(ダイバーシティー)
熊本市出身のフリーアナウンサー武田真一さんによる大型エッセー。2023年春にNHKを退職し、月~金曜の朝9時からKKTで放送中の情報番組「DayDay.」で司会を務めるなど、活動の場を広げている武田さん。自身の日々の営みや人々との出会い、心に染みるエピソードを軽やかなタッチでつづり、今日的な社会問題にもアプローチします。