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2026-07-17

AIバブルはまだ始まっていない

結論から書く。

今回起きているのは、AIバブルの崩壊ではない。それどころかバブルははじまってもいない。

AI設備投資永遠に加速し、その恩恵AIインフラ企業利益へ直線的に流れ続けるという期待が剥落しただけである

これは市場機能しなかった結果ではない。市場が正常に機能した結果である

冷えたのは設備投資ではなく、設備投資への期待である

2026年7月17日時点で、フィラデルフィア半導体指数6月高値から約18%下落している。

しかし、AI設備投資のものが停止したわけではない。

UBSハイパースケーラー設備投資について、2026年に前年比76%増の6730億ドルへ拡大した後、2027年には25%増、2028年には6%増まで増加率が鈍化すると予測している。

減少ではない。

増加率の鈍化である

市場設備投資が減るから売っているのではない。設備投資の成長率が永遠に加速するという前提を修正している。

Reuters:ハイパースケーラーの設備投資成長率をめぐる市場の見方

これは重要な違いである。

AI設備投資過熱していることなど、最初から誰もが知っていた。

GPUHBM光通信データセンター、発電設備送電網へ巨額の資金が流れ込んでいる。市場はその規模に驚きながら、同時に採算性を疑い続けてきた。

この疑念が消えなかったから、設備投資の増加率が鈍るという予測だけで株価が崩れた。

これは陶酔ではない。

しろ、陶酔に達する前に市場の警戒機能が働いた証拠である

AI関連企業ファンダメンタルは強い

現在AI関連銘柄を、2000年前後の無収益ドットコム企業と同一視するのは間違っている。

AIインフラ中核企業は、すでに売上、利益キャッシュフローを生み出している。

株価けが先に上がり、後から事業実態を探しているわけではない。データセンター向け半導体、先端半導体製造製造装置メモリネットワーク機器では、AI設備投資が実際の受注と業績に反映されている。

今回の株価上昇の相当部分は、利益成長によって説明できる。

2026年7月時点でも、半導体関連企業利益予想は大幅に引き上げられていた。株価が上昇する一方で、利益予想も同等か、それ以上の速度で上昇していたため、中核企業評価倍率は必ずしも一方的に膨張していなかった。

Reuters:半導体株の上昇と利益成長

もちろん、すべてのAI関連銘柄が割安だったわけではない。

将来の成長を過剰に織り込んでいた銘柄もある。利益成長が続くことを前提に、高い評価倍率を与えられていた企業もある。

しかし、株価評価過熱していたことと、企業ファンダメンタル虚構であることは同じではない。

今回起きているのは業績崩壊ではない。

強い業績を維持したまま、将来成長に対する評価倍率が圧縮されている。

利益が消えたのではない。

利益成長がどこまで続くのかを、市場が疑い始めたのである

この局面バブル崩壊と呼ぶのは雑である


株価上昇は大きかったが、陶酔の広がりは狭かった

では、今回の株価上昇は、バブルと呼べないほど弱かったのか。

そうではない。

AI半導体の中核部分では、株価は十分にバブル的な速度で上昇した。

フィラデルフィア半導体指数は、2026年7月17日までの1年間で2倍以上になった。6月高値から約18%下落した後でも、この上昇率である

2026年初めから7月13日までに限っても、同指数は83%上昇していた。

Reuters:2026年の半導体株上昇と利益成長

から、今回の株価上昇が弱かったとは言わない。

弱かったのは、陶酔の広がりである

過去1年間で半導体指数が2倍以上になった一方、S&P500均等加重指数の上昇率は11%、AI関連銘柄比重が小さい欧州のSTOXX600は8%だった。

AI関連企業の中でも、上昇は主に半導体メモリ製造装置光通信データセンターなど、実際に売上と利益が拡大している供給企業へ集中した。

市場全体が無差別に上昇したわけではない。

ChatGPT公開後から2026年5月までのNASDAQ100は約140%上昇した。十分に大きな上昇だが、ドットコムバブル期のNASDAQ100は約1090%上昇している。

比較期間や起点が異なるため単純比較はできない。それでも、現在AI相場ドットコム期のような市場全体の全面的陶酔には達していないことは分かる。

Yahoo Finance:AI相場とドットコム・バブルの比較

さら重要なのは、今回の株価上昇の相当部分が利益成長によって説明できることだ。

2026年7月時点で、S&P1500半導体製造装置指数構成企業は、年間利益が前年の2倍以上になると予想されていた。NVIDIAの予想PERは約19倍まで低下し、過去10年以上で最低の水準になっていた。

株価が上昇しても、それ以上の速度で利益予想が引き上げられたかである

もちろん、すべての銘柄が割安だったわけではない。AMDMarvellなど、長期平均を大幅に上回る評価を受けていた企業もある。

しかし、少なくとも中核企業では、

利益がないのに、期待だけで株価が上がった

のではない。

利益が異常な速度で増えたため、株価も異常な速度で上がった

である

局地的な投機存在した。

韓国市場では、SamsungSK Hynix対象とした単一銘柄レバレッジETF信用取引個人投資家による借入投資が急拡大し、株価変動を増幅させた。

これは明確にバブル的な現象である

Reuters:韓国市場で拡大したAI株投機とレバレッジ取引

しかし、それはAI市場全体が陶酔したこと意味しない。

今回起きたのは、実益を上げる中核企業への極端な資金集中と、その周辺で発生した局地的な投機である

一部の勝者が急騰するだけでは、完成したバブルにはならない。

本物のバブルでは、勝者の成功が、まだ利益を出していない企業や、直接関係のない企業へ無条件に一般化される。

今回は、そこまで到達しなかった。

株価上昇は大きかった。

しかし、陶酔は局所的なままだった。

バブルは、偽物に投資することではない

過去バブルでも、投資対象となった技術産業自体が偽物だったわけではない。

鉄道世界を変えた。

インターネット世界を変えた。

住宅価値のある実物資産である

バブルとは、無価値ものを信じる現象ではない。

本物の技術需要から得られた正しい認識を、あらゆる企業、あらゆる地域、あらゆる投資へ無条件に一般化する現象である

鉄道バブルでは、路線を造れば儲かると信じられた

1840年代のイギリスで起きた鉄道時代には、実体的な根拠存在していた。

経済は成長していた。金利は低く、既存鉄道会社は配当を増やしていた。鉄道という技術輸送経済を変えることも事実だった。

この成功を見た投資家は、既存の優良路線が高収益であることと、新しく計画されたすべての路線が高収益になることを混同した。

その結果、鉄道会社の設立新規路線計画が急増した。

鉄道が無価値だったのではない。

鉄道は極めて価値のある技術だった。

間違っていたのは、

鉄道を敷けば、どこでも必ず儲かる

という確信である

The Railway Mania of 1845

ドットコムバブルでは、利益確認する必要がなくなった

1990年代後半のインターネットも、本物の技術革新だった。

通信広告、商取引メディアソフトウェア根本から変えるという予測は正しかった。

しか市場は、インターネットが成長することと、インターネット企業なら何を買っても儲かることを混同した。

事業モデルの実現可能性が十分に検討されないまま、ドットコム企業IPOが相次いだ。

市場収益性よりも、利用者数、アクセス数市場規模、将来の支配力を評価した。

Goldman Sachs:The Dot-Com Bubble

当時のインターネット企業分析したNBERの研究では、インターネット部門全体の株価正当化するためには、歴史的に見ても異常に高い利益成長を長期間続ける必要があったと指摘されている。

NBER:The Rise and Fall of Internet Stock Prices

ここで起きた陶酔は、単なる株価上昇ではない。

利益がないことが問題視されなくなった。

利益がないことは、成長のために積極投資している証拠解釈された。

赤字事業の弱さではなく、未来を獲得するための費用とされた。

上場できること自体事業の正しさを証明し、株価上昇がさら資金調達を容易にした。

価格上昇が事業正当性を生み、その正当性さら価格を上げる自己循環が完成していた。

これが陶酔である

住宅バブルでは、価格上昇が信用を生んだ

2000年代のアメリカ住宅市場でも、同じ構造が生まれた。

  1. 住宅価格が上昇する
  2. 担保価値が上がる
  3. 金融機関融資条件を緩和する
  4. 新たな買い手が市場へ入る
  5. 住宅価格さらに上昇する

金融機関は、借り手の返済能力だけでなく、将来も住宅価格が上昇するという前提に依存するようになった。

住宅価格の上昇が、住宅価格の上昇を正当化した。

価格が上がり続ける限り、誰も損をしないという確信が広がった。

これも陶酔である

Federal Reserve Bank of San Francisco:Housing Bubbles and Homeownership Returns

過去バブル共通していたもの

過去バブルには、共通した段階がある。

  1. 本物の技術革新や需要拡大が起きる
  2. 一部の優良企業が実際に高い利益を上げる
  3. その成功市場全体へ一般化される
  4. 投資額を増やすほど将来の利益も増えると考えられる
  5. 資金調達が容易になり、借金による投資が拡大する
  6. 従来の利益指標や採算基準が「古い考え」として退けられる
  7. 損失への恐怖よりも、成長機会を逃す恐怖のほうが強くなる

本当の陶酔とは、株価が高いことではない。

価格投資額について説明する必要がなくなることである

「なぜ儲かるのか」ではなく、「乗り遅れたらどうするのか」が投資判断の中心になる。

現在AI市場は、まだ区別をやめていない

現在AI市場では、局地的な投機は発生している。

半導体株への資金集中も激しかった。2026年7月バンク・オブ・アメリカ機関投資家調査では、回答者の82%が半導体株を市場で最も混雑した取引だと答えている。

それでも、AI市場全体はまだ完成した陶酔に達していない。

NVIDIABroadcomTSMCASMLMarvellの業績は強い。

しかし、その強さがAI関連企業すべてへ無条件に一般化されてはいない。

設備投資の増加率が鈍るというだけで、半導体株は売られる。

企業設備投資を増やせば、投資家は売上だけでなく、減価償却費営業利益率、フリーキャッシュフロー確認する。

将来の受注見通しが弱ければ、現在利益が強くても株価は下がる。

実際、TSMCASMLは強い決算を発表したにもかかわらず、AI設備投資の持続性に対する懸念から株価を売られた。

市場はまだ、設備投資の採算性を企業ごとに審査している。

成功企業と失敗企業区別しようとしている。

これは完成したバブルではない。

バブルとは、区別をやめることである

本当のAIバブルは、強い業績の先にある

皮肉なことに、AI関連企業ファンダメンタルが強いからこそ、本当のAIバブルはこれから発生する。

NVIDIABroadcomが高い利益率を維持する。

TSMCASML能力増強を続けても受注が埋まる。

ハイパースケーラー設備投資を増やしながら、AI売上、営業利益フリーキャッシュフローを伸ばす。

一般企業AI導入によって人件費を削減し、開発期間を短縮し、売上を増やす

この証拠が数四半期にわたって積み上がれば、市場疑念は消える。

そして市場は、正しい結論から間違った一般化へ進む。

一部のAI設備投資は高いROIを生む

という事実が、

AI設備投資は高いROIを生む

という確信へ変わる。

優れた企業AI利益を上げている

という事実が、

AI投資する企業利益を上げる

という確信へ変わる。

この変化がAIバブルの始まりである

AIバブル2027年前後に始まる

AIバブル2027年前後に始まる。

条件は、ハイパースケーラー決算で次の三つが同時に示されることである

  1. AI関連売上が設備投資を上回る速度で増える
  2. 減価償却費が増えても、営業利益率が維持される
  3. 設備投資を増やしながら、フリーキャッシュフローも増える

これが数四半期続けば、市場AI設備投資の採算性を疑わなくなる。

その後に起きるのは、設備投資競争の再加速である

設備投資を増やす企業株価が上がる。

設備投資を抑える企業は、慎重なのではなく、競争から脱落していると評価される。

データセンターを建てるための借金が、財務リスクではなく成長投資と呼ばれる。

GPU保有台数、データセンターの電力容量、確保した土地面積が、そのまま企業価値として評価される。

十分な顧客や売上を持たない企業でも、「AIインフラ」という名前だけで資金調達できるようになる。

そして市場は、設備投資ROI確認しなくなる。

設備投資をしているという事実のものを、将来のROI証拠として扱い始める。

そこまで到達して、初めてAIバブルである

疑念が消えた瞬間が最も危険である

今の市場にはまだ疑念がある。

設備投資の伸びが鈍れば株価は下がる。

巨額投資を発表すれば、キャッシュフロー心配される。

高い成長率を示しても、次年度の成長率まで問われる。

これは全面的な陶酔ではない。

市場がまだ正気を残している証拠だ。

今回の下落を見て、「AIバブルは終わった」と結論づけるのは間違っている。

終わったのは、設備投資の加速が永遠に続くという短期的な期待である

AI需要は消えていない。

関連企業利益も消えていない。

設備投資も止まっていない。

株価上昇も小さくはなかった。

ただし、その上昇は実益を上げる限られた企業へ集中し、市場全体の無差別な陶酔には発展しなかった。

AIバブルはまだ始まっていない。

本当に警戒すべきなのはAI関連企業の業績がさらに強くなり、市場から疑念が消えたときである

設備投資が多すぎる」という不安が、「設備投資が足りない」という焦りに変わる。

「本当に回収できるのか」という問いが、「投資しないほうが危険だ」という確信に変わる。

誰もが、AIに金を入れれば儲かると信じる。



AIバブルは、その瞬間に始まる。

2026-07-05

ラピダスは「量産できるか」ではなく「量産して儲かるか」が問われている

ラピダスをめぐる議論では、「日本が再び最先端半導体を作れるのか」という技術論に焦点が当たりやすい。だが経営観点から見れば、本当の問題はそこではない。

仮に2ナノ半導体製造成功したとして、それを商業事業として成立させられるのか。問うべきはその一点である。そして現実、現時点でほぼ達成は不可能である

 

半導体製造は、成功した姿だけを見れば夢のような商売だ。

直径300ミリの生シリコンウェハーは、最先端向けの高品質品でも基板そのものは2万円/枚程度である

それが最先端工程を通り、回路を形成して工場から出てくると、300万~400万円/枚、条件によってはそれ以上の価値を持つ。

もちろん差額がそのまま利益になるわけではない。数百から千近い工程、EUV露光装置をはじめとする巨額設備、超純水特殊ガス、薬液、電力、検査保守研究開発費が投入されている。

それでも完成ウェハー一枚が数百万円で、量産工場から平均数分に一枚の速度で出てくる。

仮に一枚400万円のウェハーが2分に一枚完成するなら、一時間に1億2,000万円、一日に約29億円相当の商品工場から出る。

月産2万5,000枚なら売上規模は月1,000億円である

 

これほど高い付加価値を、小さな物体に凝縮して連続生産できる産業ほとんどない。

一枚の薄い円板に数百万円の価値を載せられる。

日本政府やラピダスが見ている夢は、まさにここにある。

 

世界水準の製造技術顧客基盤を一度確立すれば、工場は莫大な付加価値連続的に生み出す。

雇用材料製造装置設計データセンター防衛宇宙まで含め、国家産業構造を変え得る。数兆円を投じてでも先端半導体へ復帰したいという発想自体理解できる。

問題は、その夢が成立するのは、高歩留まり、高稼働率、高単価で工場が動いた場合に限られることだ。

 

歩留まりが低ければ、数百万円の商品ではなく、数百万円を費やして作った不良品の集合になる。

工場の出口から数分に一枚、商品ではなく損失が出てくる。

半導体工場成功すれば現金製造機だが、失敗すれば損失製造機になる。

ラピダスの公式目標2027年度後半の量産開始である

まり2027年10月から2028年3月までに、2ナノ世代商業生産を始めるという計画だ。

ただし、「量産開始」という言葉には注意が必要である

 

トランジスタが一度動いたこと、試作ウェハーが完成したこと顧客向けチップを試作できたこと、採算の合う歩留まり大量生産できることは、すべて別の段階だ。

一般には、試作工場は量産工場を小さく動かしているものと思われがちだ。だが最先端半導体では違う。

試作では、技術者が条件を個別調整し、何度も失敗しながら一枚完成させても成果になる。

量産では、数千枚、数万枚を連続して流し、同じ品質で、顧客が買える価格で良品を取り出さなければならない。

その間には、歩留まり再現性搬送制御生産管理、品質保証保全トレーサビリティー、顧客認定という巨大な壁がある。

しかもこの壁は、金と技術者を集めれば簡単に越えられるものではない。

 

サムスン世界有数の半導体メーカーであり、長年先端ロジックを量産してきた。そのサムスン2022年世界で初めてGAA構造採用した3ナノ量産を始めたが、初期歩留まり業界推定1020%程度だったとされる。

その後、条件調整や欠陥解析を重ねても、第一世代3ナノの歩留まりは50~60%程度、第二世代では20%程度との推定が伝えられた。量産開始から数年たっても、70%へ容易には届かなかった。

2ナノも同様で、サムスンの歩留まりは当初20~30%程度、その後50%台半ばまで改善したと報じられている。それでも安定量産の目安とされる60%前後には届かないという見方がある。

 

インテル18Aも苦戦した。RibbonFETと裏面電源PowerViaを同時導入する先端プロセスだが、2024年にはBroadcom試験結果が量産に適さない水準だったと報じられた。

初期歩留まりが一桁から10%程度だったとの非公式情報も出た。

その後、欠陥密度改善したものの、インテル製品歩留まりのもの公表していない。

世界屈指の設備人材、自社製品、量産データを持つ企業ですら、新構造を導入した最先端プロセスでは、1020からまり、50%台まで上げるのに数年かかることがある。

ラピダスは、その壁をほぼゼロから越えようとしている。

 

しか相手TSMCである

TSMCは2ナノ量産をすでに開始し、その先のA16、さらに1.4ナノ級A14を2028年に量産する工程を進めている。A14向けとみられる工場建設も始まっている。

TSMCロードマップは、単なる希望的観測ではない。多少の調整はあっても、工場装置顧客設計環境、量産技術を一体で準備し、ほぼ予定どおり商業生産へ持ち込んでくる。

ラピダスが2027年度後半に2ナノを立ち上げる頃、TSMCは2ナノの量産経験を積み、次世代へ移ろうとしている。

ラピダスは競合と同時にスタートするのではない。競合が一世代分の学習を終えた後に、初めて市場へ入るのである

 

ここで致命的になるのが、歩留まり生産規模だ。

仮にラピダスの初期能力を月産6,000枚とする。ウェハー単価を2万ドル、1ドル150円と置いても、年間売上は約2,160億円。3万ドルで売れても約3,240億円である

投資額が3兆~4兆円規模の事業としては小さすぎる。

 

しかもこれは、工場がほぼ完全稼働し、全量を顧客が購入し、価格下落も補償費用もないという理想条件だ。

実際の量産初期には、評価用ウェハー、再試作、不良ロット無償提供顧客認定用の生産が大量に含まれる。

歩留まりが低ければ、顧客側の良品チップ単価は高騰する。競合が70%で、ラピダスが20%なら、同じ価格顧客がラピダスを選ぶ理由はない。

価格を下げるか、開発費を負担するか、歩留まり保証を付けるか、政府補助を間接的に顧客還元するしかない。

 

したがって、初期から歩留まり70%という夢物語を置いても、月産6,000枚では商業採算は取れない。

ましてサムスンインテル同様、1020%台から始まるなら、それは量産事業ではなく、巨額費用を投じて歩留まり学習する実証期間になる。

70%は黒字化の条件ではない。ようやく顧客とまともに交渉できる条件に近い。

事業成立の可能性が見えてくるのは、月産2万5,000枚、高稼働率、高歩留まり、高単価、大口顧客がすべて同時にそろった場合である

一つや二つの成功では足りない。ほぼすべてが予定どおり、または予定以上に成功しなければならない。

通常の優れた事業計画は、どこかが外れても耐えられるように作る。ラピダスの計画は逆だ。

工程、歩留まり顧客価格生産能力、追加投資のすべてが成功して、ようやく成立の入口に立つ。

 

さら危険なのが、大口顧客である

 

一般には、大口顧客を獲得すれば成功に近づくと考えられている。

だが未成熟技術大口顧客を取ることは、むしろ重大なリスクになり得る。

海外顧客は単にウェハーを買うのではない。

そのプロセスを前提に、数百億円規模の設計費、IPマスク評価製品発売計画を組む。

ラピダスの量産が遅れれば、顧客は発売時期を失い、他社プロセスへの再設計を迫られる。

 

当然、顧客納期保証能力確保、前払金返還、再試作費、値引き、再設計負担場合によっては遅延補償要求する。

 

TSMCなら顧客側が能力確保のため前払いし、最低購入義務を負うこともある。

しかし実績のないラピダスには、その交渉力がない。

責任限定すれば顧客が来ない。責任を受け入れれば、遅延した瞬間に技術問題契約債務へ変わる。

 

ここにはMRJ東芝ウェスチングハウス買収と似た構造がある。

MRJでは、技術完成より先に受注実績が必要とされ、楽観的な工程表を前提に営業が進んだ。

ウェスチングハウスでは、原発建設の工期遅延と費用超過を、契約構造上、東芝側が引き受ける形になった。

 

共通するのは、技術的に失敗したこと以上に、最悪時の損失を契約にどう織り込むかを誤ったことだ。

日本企業はしばしば、契約を取ること自体成功とみなし、リスクは起きてから処理しようとする。

最悪ケースを主張する者は、案件を潰す人物と見なされる。国家威信を背負った事業では、この傾向がさらに強まる。

 

ラピダスの小池淳義社長は、半導体業界を全く知らない人物ではない。若い頃には製造技術に携わり、半導体企業合弁会社経営経験している。

しかし、その経歴は、最先端ロジックファウンドリーの歩留まりを立ち上げ、世界大手顧客供給保証契約交渉し、数兆円投資を自力で回収した経営者の経歴ではない。

しろ日本企業政府海外提携先を調整し、大型プロジェクト組成する調整型経営者としての色彩が強い。

 

工場を建て、国費を集め、IBMやimecと提携する段階では、その能力有効だっただろう。

 

だが今後必要になるのは、海外顧客の不利な条件を拒否し、無理な日程を政府に突き返し、採算が合わなければ受注を断る経営能力である

調整能力撤退判断能力は同じではない。

現時点で、ラピダスが技術的に2ナノ製造する可能性はある。国家資金を使いながら、国内の先端半導体拠点として存続する可能性も高い。

しかし外部顧客から利益を得て、営業キャッシュフローを生み、その資金で1.4ナノ以降へ自律的投資する商業ファウンドリーになる確率は低い。

 

量産できるかではなく、量産して利益が出るか。

利益が出るかではなく、次世代投資まで自力で回せるか。

顧客を取れるかではなく、取った契約会社破壊しないか

 

ラピダスの評価は、この三段階で行う必要がある。

今後、量産開始や大口顧客獲得が華々しく発表されても、それだけで成功とは言えない。

見るべきなのは、歩留まり、実稼働率、ウェハー実効単価、拘束力ある購入数量、補償責任営業キャッシュフロー次世代投資資金である

それらが公開されないまま「国産2ナノ量産開始」だけが報道されるなら、ラピダスは商業事業というより、成功基準技術達成へすり替えながら延命される国家プロジェクトになる可能性が高い。

 

ラピダスはまだ技術的には失敗していない。

だが経営計画として見る限り、成功必要な条件が多すぎる。

しかも、そのすべてが同時に成立しなければならない。

半導体工場が夢の現金製造機になるか、数分おきに巨額損失を吐き出す装置になるか。

 

その境界にあるのが歩留まり顧客時間である

その意味でラピダスは量産前からすでに極めて詰みに近い局面にある。

2026-06-15

anond:20260615132943

AI使ってるのに(課金してるよね?)

当然してるよ

AI関連銘柄を買ってないとか情弱すぎない?

あいつらむしろ利益相反じゃねえのかってくらいAI関連買えって言うよ

NVIDIAとかBROADCOMとか

からS&P

三井ハイテックも買ってて、今日ストップ高なんだけど910円の時に買ったから48円しかプラスじゃねえの

これから20倍になるんか~~~~この~~~~

まあ100株しかねえから減ろうが増えようが大したことねえけどな~~~~

2024-06-11

anond:20240611110445

Broadcomに買われたことすら知らない時代から来た人かもしれないわ……

2023-10-07

いまだにツイッターはてブ馬鹿が「日本冷蔵庫テレビ中国メーカーに負けてるからオワコン」とか言ってて絶望する

負けてるから終わってるんじゃなくて、勝負してるから終わってるんだよ

意味わかる?


冷蔵庫テレビ洗濯機(ようするに家電)で勝負しているから終わってるんだという事がわかってない

冷蔵庫なんか中国に作らせときいいわけ

そんなもので張り合ってるから凋落してんだけど

日本インターネットって、冷蔵庫中国に勝て!洗濯機中国に勝て!テレビ中国に勝て!みたいな思想をもってるバカが多いよね

負けてるから終わってるんじゃなくて、勝負してるから終わってるんだよ


日本はGAFAMと戦うべきだったし生み出すべきだった

AdobeAutodeskoracleSalesforcenvidiaAMDやqualcomやbroadcomと戦うべきだったし生み出すべきだった

なのに日本コモディティー化する家電()なんかを日本の力の源泉だとかいって

日本エリートをモノづくりに従事させ、無駄突撃させて価値が上がらず無駄死にさせてたわけ

これは現代インパール作戦だよ

(まぁそれに疑問を持たない日本エリートってまじ無能だなって思うけど)


ソニー保険屋www

ソニー銀行屋www

2005年ごろのネットでは、モノづくりこそ日本の自慢であり、保険銀行なんかやってるソニーオワコン象徴だった

でも結局そんなソニーがほかの家電メーカーにくらべて一番マシなんだよなw

映画とかゲームとか音楽とかのIPビジネス保険銀行なんかも手掛けて

モノづくりに執着しない体制を作ったソニーが結局一番マシだった


ーーーーーここ追記ーーーーー

ソニーとおなじく脱モノづくりで復活したのが日立


日立2008年連結決算を発表、最終赤字は7800億円

https://enterprise.watch.impress.co.jp/docs/news/168397.html

2012年 HGSTを売却

2014年 日立マクセル、日立機材を売却

2017年 日立工機、日立国際電気を売却

2018年 クラリオンを売却

2020年 日立メディコ、日立化成、火力発電事業を売却

2021年 日立金属を売却 トルコ家電メーカーアルチェリクと共同会社設立して家電海外部門移管

2022年 日立建機を売却 

2023年

日立、通期見通し上方修正 純利益過去最高6300億円に

https://jp.reuters.com/article/hitachi-outlook-idJPKBN2UB2OO


ーーーーー追記終わりーーーーー


驚くのははてブなんだよね

IT職が多そうなはてブがモノづくりに固執していることが不思議でたまらない

トランプ大統領がそうだけどホテル業のトランプはなぜか自動車産業にこだわってるよね

モノづくりがおっさん世代の良き時代象徴であり思い出になってるというか

工場で男たちが汗水たらしてモノ作りする光景になんかマチズモめいた魅力があるのかもしれん

モノづくりこそ誇れる産業なんだと

ITにしてもやたらでかいスーパーコンピュータニュースになるし話題になるけど

それで何が行われてるかは話題にならない


かつて経済大国だったアルゼンチン

日本より先に地下鉄が通り、イタリア人出稼ぎに行っていたほどのアルゼンチンだが

そんなアルゼンチンは運よく第一次世界大戦に巻き込まれなかったので

戦争疲弊するヨーロッパ向けの農牧産品の輸出がとくによかったという

戦後戦争経験した国は工業が国力につながると嫌というほどわからせられたため、工業化にまい進したが

アルゼンチンは農牧産品こそ力の源泉だとして工業化を進めなかったため、世界の潮流から外れていくことになる


2009-12-01

http://anond.hatelabo.jp/20091129223310

計算する問題が分割されたままで良い、という領域においては当然そうなる。分割したもの同士が相互作用しないのなら。

残念ながらシミュレーション系においてはそらGRAPEが扱うなかでもごくごく一部ぐらいだけがそうで(普通は共有メモリ内で参照できるからそんな高いコストを払わなくて良い)、それ以外はメッシュだろうが格子だろうがIBだろうが最低でも隣接する領域との相互作用計算のための共有メモリ外との通信が発生する。

スケールアウトできないのはものすごく雑に言うと、

・扱う問題が原理的に向いてない

計算機同士のインターコネクトが今でも遅すぎるのにこれ以上遅くしたらまさに演算系の無駄

ってとこがものすごく大きい。

評価・統合などなどまあ使う方式で言い方も使い方もいろいろあるけど、分割しただけで統合したりする処理が要らないんだったら、まさにRoadrunnerOpteronブレード部分は無用だよ。計算するだけならCellブレードとインターコネクトボードがあればいい。だがOpteronを使わなきゃいけない(というわけでも無いんだけどあれぐらいの処理能力メモリバンドローカルメモリバランス的に欲しい)というところに何かがあると感じてくれ。これをかいてる自分増田は定量的に~とか言われると式をグダグダ書き連ねないと説明できない低脳なので。

長大ジョブを投入して計算中でも、計算を止めないままノードごと別のノードに引き継がせて、そのノードを捨てたり点検したり、ってのは超大規模クラスタではもちろんある。

脱線するが、x86は縮退させにくいとか、信頼性が足りないとかいうのも最近みかけるけどそんなことはない。x86だからということはないし、ノード設計ジョブの入れ方できまるようなもの。あとすべてのノードVMにのせてジョブを続けながらLive Migrationした実証実験なんてのもある。x86系コア・メモリのRAS機能は充実してきてるとはいえまだ足りないが、RAS機能がホントに重要ならPOWERベースにすれば実績と性能の点で申し分ない。x86の出自云々をいうならsparcだって出自がアレだしね。zシリーズにまで同一コアが使われるPOWERとは違う。脱線終わり)

それにスケールアップといったときに地球シミュレータの例はあまり適切ではないとおもう。アレは元々いろいろとアップグレードしにくいシステムだったし。

どうせならアップグレードしやすいCray XT5や、今度のXT6あたりで比較しよう。ちょうどJaguarのコアアップグレードは4Phaseにわけて実行された。

http://www.nccs.gov/computing-resources/jaguar/road-map/

コアの入れ替えだけなんでかかった費用は支援費の二千万ドル含んで数千万ドル(ちょっと語弊があるけど)。

あとJaguarはNCCSの配下にあるというのは一つの特徴だろう。利用時のスケジュールポリシーなんかもほぼ全部載ってるので、読んでみるといいよ。ちなみにNCCSのトップページにはいつも今配下のクラスタに投入されてるジョブがでてる。

ついでにGoogleシステムパソコンベースって言って良いのかわからないぐらい特化してるよ。だから省電力でもある。それを安く調達するのはまさに規模の経済

ToRスイッチを完成品じゃなくてBroadcomからチップ買って自前で専用のスイッチつくっちゃうのも規模の力。

最近いろんなところで引き合いに出されるNACCのGPUクラスタコスト面とアルゴリズムで比較対象にもいい。簡単にいうと「苦手」なものを対象としないことで他の問題に最適化したのが濱田先生のところのチームがつくったクラスタ。特性を把握して性能を引き出して、実際に運用したという意味でとても良い研究なんだけど、故に超大規模クラスタとかで走らせることになる巨大CFDモデルなんかは対象外のシステムだ。

だから最近スパコンうんたらかんたらとやらでNACCの話を持ち出してる記事やらエントリやらを見かけたら、そこに書かれてることは無視するといい。持ち出してくる奴は、基本からして間違ってるか何でも繋げればスケールアウトすると勘違いさせたがってるだろうから。

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