改正健康保険法の危うい「一部保険外療養」 混合診療広げぬよう監視を 共同通信編集委員 内田泰
保険診療と保険外の自由診療を併用する「混合診療」は、安全面などから一部の例外を除き国が原則禁止している。ところが今国会で成立した改正健康保険法には、混合診療が野放図に広がりかねない危うい条文が盛り込まれている。
改正法の63条2項6号は、新設される「一部保険外療養」について「要指導医薬品または一般用医薬品との代替性が特に高い薬剤を用いた療養その他の(中略)一部を保険給付の対象としないものとする療養」と規定。
市販薬と成分や効能が似たOTC類似薬の薬剤費の一部を、公的医療保険から外すことを意味している。例外的な混合診療の運用となり、患者は追加の自己負担を求められる。
問題は、この条文に「その他の」という表現がさりげなく挿入されている点にある。字義通りに解釈すれば、薬剤を用いた療養に限らず、その他の療養も保険外になると読める。診察や処置、手術など「その他の」医療行為全般に幅広く保険外しが及び、自由診療扱いとなって患者負担が増大することが危惧される。
混合診療が原則禁止されているのは、保険外の自由診療には安全性と有効性が未確認の医療が含まれ、治療効果が不確かだからだ。また高額になりがちな自由診療の対価を支払う能力があるのは富裕層に偏る。医療サービス利用で階層消費が進むのは望ましくない。
国会審議では、一部保険外療養の対象範囲を巡り条文解釈の論争が起きた。保険外しは薬剤にとどまらないのではないかと野党が質問したのに対し、厚生労働省は「規定ぶりとしてはそのように読める」と答えるなど、答弁が一貫しなかった。

最終的に「議論の経緯も踏まえれば、薬剤のみを対象」と答弁し直して議論は決着。改正法の付則で、制度を見直す際にはOTC類似薬の使用状況を勘案するとの検討規定を設けており、併せて読めば対象は医療行為全般ではなく薬剤に限られる―と整理された。付帯決議も対象を十分に検討するよう求めた。
論争は収まったが、なぜ誤解を招く曖昧な条文が作られたのかという疑問が残る。ある厚労省OBは「改正に向け厚労省は〝二枚舌〟を使ったのではないか」とみる。
自民党と日本維新の会の連立政権合意書には「公的保険の在り方および民間保険の活用に関する検討」との項目がある。維新の意向を反映し、混合診療の解禁に前向きと受け取れる表現だ。厚労省は63条2項6号に「その他の」療養と書くことで解釈に幅を持たせ、維新の顔を立てた。
半面、本音では厚労省は無制限の混合診療に消極的だ。そこで付則に検討規定を設け、混合診療の拡大を防ぐ歯止めとした―。そんな見立てだ。
今回は国会がチェック機能を果たし、一部保険外療養の対象を薬剤に限ることが当面は担保された。ただ国会答弁や付帯決議に法的拘束力はない。今後、拡大解釈されて際限なく混合診療が広がらないよう厳しく監視していく必要がある。
(新聞用に2026年7月3日配信)
















