私たちが普段目にする「果実」や「種子」はどうやってできるか理解しているでしょうか?今回は果実や種子がどうやってできるのかを詳しく見ながら、果実の種類や種子の種類、果実の形成に関わる植物ホルモンについても学習していく。
大学院で植物の研究していた、生物に詳しいライターAnnaと一緒に解説していきます。

ライター/Anna

大学で生物学について幅広く学び、大学院では植物の研究をしていた。生物学の楽しさをたくさんの人に広められるよう日々勉強中。

種子はどうやってできるのか?

image by iStockphoto

種子はみなさんもご存知の通り植物の種のことです。生物学的に言えば、種子植物の胚珠(はいしゅ)が受精後に成熟し休眠状態になったものを種子と呼んでいます。また、種子は被子植物や裸子植物の繁殖器官と言われることもあります。種子が作られていく過程を見ながら一つずつ学習していきましょう。

種子をつくる植物とは?

まず、植物には種子を作る植物と作らない植物があります。種子を作る植物は「種子植物」と呼ばれ、被子植物や裸子植物などは種子を作って子孫を残します。一方種子を作らない植物にはシダ植物、コケ植物などがあり、これらの植物は種子ではなく「胞子」によって仲間を増やします。

植物は元々シダ植物やコケ植物などの胞子で仲間を増やす植物しかいませんでしたが、進化の過程で種子で子孫を残す種子植物が誕生しました。なぜ種子で子孫を残すことにしたのでしょうか?

それは種子は保存ができ、栄養を蓄積することができるためです。種子は成長に適した環境(水、気温、酸素、二酸化炭素、光など)だと発芽しますが、それ以外の環境では発芽せず種のまま休眠状態でいます。ちなみに休眠状態の種子や花芽がある条件によって活動状態になることを「休眠打破(きゅうみんだは)」と言うんですよ。

種子形成は受粉から始まる

image by iStockphoto

それでは実際に種子ができる過程を詳しく見ていきましょう。先ほど「胚珠が受精後に成熟し休眠状態になったものが種子である」と説明しましたね。植物が受精するにはまず受粉が必要となるため、受粉が種子形成のスタートとなります。

植物では花粉(精細胞)が柱頭につくことを受粉と呼びますよね。受粉すると花粉管が胚珠に向かって伸び、その管の中を精細胞が通っていきます。胚珠にたどり着いた精細胞は胚珠内の卵細胞とくっつき「受精」が起こるのです。精細胞と卵細胞がくっついたものは受精卵と呼ばれ、受精卵は胚珠内で体細胞分裂を繰り返して胚球(はいきゅう)と胚柄(はいへい)になります。そして胚珠は受精が終わって成熟すると胚や胚乳を包む種子となり、胚珠の外側にある珠皮は、種子を包む「種皮(しゅひ)」という硬い皮で種子を守るのです。

種子の構造

種子の構造

image by Study-Z編集部

胚珠の中には胚のうがあり、卵細胞、中央細胞、助細胞、反足細胞からできています。胚のうの中では先ほど説明した精細胞と卵細胞が合体して受精卵になるとともに、精細胞と中央細胞が合体して胚乳細胞となるのです。

受精卵は胚球と胚柄になりますが、このうち胚球は分裂を経てへとなり、胚は子葉(しよう)、幼芽(ようが)、胚軸(はいじく)、幼根(ようこん)から成ります。子葉は最終的に退化してしまいますが幼芽は葉に、胚軸は茎に、幼根は根になる部分です。一方胚柄は退化して植物体にはなりませんが、胚球を胚のうの中央部へ押し上げることで乾燥など環境による被害を受けないよう守ってくれます。

一方、胚乳細胞も分裂を経て発芽に必要な栄養分を蓄える胚乳となるのです。私たちが普段食べている白米は、籾殻(もみがら)や胚芽(はいが)、糠層(ぬかそう)を取り除いて胚乳だけが残った状態のお米なんですよ。

\次のページで「果実はどうやってできるのか?」を解説!/

果実はどうやってできるのか?

image by iStockphoto

種子を作る植物のうち、被子植物は果実を作りますが裸子植物は果実を作りません。被子植物は胚珠が子房に包まれている植物のことで、「子房」が成長することで「果実」となります。裸子植物には子房がなく、胚珠がむき出しになっているため果実を作らないのです。

果実の構造

image by iStockphoto

果実の形成も受粉によりスタートします。被子植物の雌しべの基部にあり、胚珠を包んでいるのが子房と呼ばれる部分です。受粉を終えると、植物ホルモンのジベレリンが子房を果実に変化させます。また、オーキシンは花の成長を止め、種子が形成された後に種子で合成されるオーキシンが果実を肥大成長させるのです。他にも果実の成熟にはエチレンと呼ばれる植物ホルモンも関係して、果実の軟化や落葉・落果の促進、葉や茎の成長を阻害しています。

ちなみに果実はでき方によって「真果」と「偽果」に分かれるのは知っていますか?「真果」とは子房だけが成熟・肥大してその中に種子がある果実のことで、「偽果」は子房以外の部分(花托、萼など)が加わって果実となったもののことです。

モモ、ブドウ、ミカン、カキなど多くの果物は真果ですが、イチゴやリンゴなどは偽果で私たちが食べている部分は果実ではなく花托になります。花托はおしべやめしべ、花びらなどがつくところで茎の先端が厚くなって変化したものです。ちなみにイチゴのつぶつぶは「痩果(そうか)」といって果肉がない1つの種子を持つ果実なんですよ。

種なしブドウが種子はないのに果実をつくるのはどうして?

種子や果実が作られるには受粉が必要ですよね。種なしブドウは果実は作られるのに種子は作られません。どのような仕組みになっているのでしょうか?種なしブドウは「ジベレリン処理」をすることによりつくられます。ジベレリン処理とはブドウの房を植物ホルモンのジベレリン溶液に浸ける作業のことで、計2回処理が行われるのです。ブドウの花が咲く前に1回目の処理を行うことで受粉後に起こる花粉管の伸長を阻害することで種子形成ができないようにし、2回目の処理は花が満開になった後に行い、子房を果実へと変化させます。その結果、受粉をせず種子のない果実を作ることができるのです。

他にも種がない果物として「種なしスイカ」などが知られていますが、種なしスイカの場合はジベレリン処理ではなくコルヒチン処理によって作られています。コルヒチン処理により2倍体から4倍体になったスイカを通常の2倍体のスイカとかけあわせると3倍体の正常に減数分裂ができない(=種子ができない)種なしスイカができるんですよ。

" /> 3分でわかる「果実」と「種子」のでき方!果実や種子を作る植物とは?植物ホルモンの役割も含めて理系ライターがわかりやすく解説 – Study-Z
理科生物細胞・生殖・遺伝

3分でわかる「果実」と「種子」のでき方!果実や種子を作る植物とは?植物ホルモンの役割も含めて理系ライターがわかりやすく解説

私たちが普段目にする「果実」や「種子」はどうやってできるか理解しているでしょうか?今回は果実や種子がどうやってできるのかを詳しく見ながら、果実の種類や種子の種類、果実の形成に関わる植物ホルモンについても学習していく。
大学院で植物の研究していた、生物に詳しいライターAnnaと一緒に解説していきます。

ライター/Anna

大学で生物学について幅広く学び、大学院では植物の研究をしていた。生物学の楽しさをたくさんの人に広められるよう日々勉強中。

種子はどうやってできるのか?

image by iStockphoto

種子はみなさんもご存知の通り植物の種のことです。生物学的に言えば、種子植物の胚珠(はいしゅ)が受精後に成熟し休眠状態になったものを種子と呼んでいます。また、種子は被子植物や裸子植物の繁殖器官と言われることもあります。種子が作られていく過程を見ながら一つずつ学習していきましょう。

種子をつくる植物とは?

まず、植物には種子を作る植物と作らない植物があります。種子を作る植物は「種子植物」と呼ばれ、被子植物や裸子植物などは種子を作って子孫を残します。一方種子を作らない植物にはシダ植物、コケ植物などがあり、これらの植物は種子ではなく「胞子」によって仲間を増やします。

植物は元々シダ植物やコケ植物などの胞子で仲間を増やす植物しかいませんでしたが、進化の過程で種子で子孫を残す種子植物が誕生しました。なぜ種子で子孫を残すことにしたのでしょうか?

それは種子は保存ができ、栄養を蓄積することができるためです。種子は成長に適した環境(水、気温、酸素、二酸化炭素、光など)だと発芽しますが、それ以外の環境では発芽せず種のまま休眠状態でいます。ちなみに休眠状態の種子や花芽がある条件によって活動状態になることを「休眠打破(きゅうみんだは)」と言うんですよ。

種子形成は受粉から始まる

image by iStockphoto

それでは実際に種子ができる過程を詳しく見ていきましょう。先ほど「胚珠が受精後に成熟し休眠状態になったものが種子である」と説明しましたね。植物が受精するにはまず受粉が必要となるため、受粉が種子形成のスタートとなります。

植物では花粉(精細胞)が柱頭につくことを受粉と呼びますよね。受粉すると花粉管が胚珠に向かって伸び、その管の中を精細胞が通っていきます。胚珠にたどり着いた精細胞は胚珠内の卵細胞とくっつき「受精」が起こるのです。精細胞と卵細胞がくっついたものは受精卵と呼ばれ、受精卵は胚珠内で体細胞分裂を繰り返して胚球(はいきゅう)と胚柄(はいへい)になります。そして胚珠は受精が終わって成熟すると胚や胚乳を包む種子となり、胚珠の外側にある珠皮は、種子を包む「種皮(しゅひ)」という硬い皮で種子を守るのです。

種子の構造

種子の構造

image by Study-Z編集部

胚珠の中には胚のうがあり、卵細胞、中央細胞、助細胞、反足細胞からできています。胚のうの中では先ほど説明した精細胞と卵細胞が合体して受精卵になるとともに、精細胞と中央細胞が合体して胚乳細胞となるのです。

受精卵は胚球と胚柄になりますが、このうち胚球は分裂を経てへとなり、胚は子葉(しよう)、幼芽(ようが)、胚軸(はいじく)、幼根(ようこん)から成ります。子葉は最終的に退化してしまいますが幼芽は葉に、胚軸は茎に、幼根は根になる部分です。一方胚柄は退化して植物体にはなりませんが、胚球を胚のうの中央部へ押し上げることで乾燥など環境による被害を受けないよう守ってくれます。

一方、胚乳細胞も分裂を経て発芽に必要な栄養分を蓄える胚乳となるのです。私たちが普段食べている白米は、籾殻(もみがら)や胚芽(はいが)、糠層(ぬかそう)を取り除いて胚乳だけが残った状態のお米なんですよ。

\次のページで「果実はどうやってできるのか?」を解説!/

次のページを読む
1 2
Share: