今回は「ヘイフリック限界」という用語について学習していこう。

多くの人にとって聞きなれない言葉だと思うが、ヘイフリック限界は生物の老化や寿命に関係しているとみられる、重要な現象です。DNAの分子レベルの話もかかわってくるが、大変興味深い内容なので、多くの人に知ってほしい。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

ヘイフリック限界とは

ヘイフリック限界(Hayflick limit)とは、細胞にみられる分裂回数の限界を指します。

私たちの身体は細胞からなり、細胞は細胞分裂によって数を増やしていきますが、ほとんどの細胞はその分裂が無限に行われるわけではありません。一定の回数分裂すると、それ以上の細胞分裂は不可能となり、細胞は老化して死んでしまいます

ヘイフリック限界が存在するからこそ、あらゆる生物は不死ではなく、いずれ”寿命”が訪れると考えられているのです。

\次のページで「なぜヘイフリック限界の秘密は”テロメア”にあり?」を解説!/

もちろん、事故や病気で早くに亡くなってしまうことの方が多いですが…少なくとも、「生物は永遠には生きられない」という考え方の根拠となります。

ヘイフリック限界が発見されるまでは、「細胞は無限に分裂し続け、不死である」という考え方がありました。この現象を発見したレオナルド・ヘイフリックについては、後ほどご紹介することにしましょう。

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中学校や高校の理科(生物)では、生物が細胞でできていることや、細胞分裂の流れを学習します。細胞分裂の際には、DNAがあらかじめ複製され、それが均等に新しい細胞に割りふられますよね。もとのDNAとまったく同じDNAをもった細胞ができるのであれば、細胞分裂に限界が生じることってないと思いませんか?

では、なぜヘイフリック限界というものが存在するのでしょうか?

なぜヘイフリック限界の秘密は”テロメア”にあり?

細胞分裂の回数の限界=ヘイフリック限界が存在する理由の一つとしてあげられているのが、DNAに存在する”テロメア”という構造です。

テロメア(telomere)とは、真核生物の染色体の末端にある構造のことを指します。

じつは、DNAが複製されるとき、その塩基配列が複製されていきますが、その末端では構造的に複製できない部分が生じてしまうのです。

そのためにテロメアがあります。テロメア部分のDNAは特に意味のない塩基配列になっていて、複製されなくても遺伝情報には問題ないのです。テロメアは、各染色体の大事なDNA塩基配列を守るためになくてはならない構造といえます。

\次のページで「ヒトの細胞のヘイフリック限界」を解説!/

Telomere.png
CC 表示-継承 3.0, リンク

ところがこのテロメアは、細胞分裂をするたびに短くなっていってしまいますから、いずれ限界が訪れます。テロメア部分がなくなってしまうと、細胞はそれ以上の分裂をしなくなってしまうのです。これこそが、ヘイフリック限界が訪れる要因の一つと考えられています。

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ヒトの細胞のヘイフリック限界

私たち人間…ヒトという生物の細胞の分裂限界は、最大でも約50回ほどだといわれています。そして、ある一人のヒトの細胞がこの最大限の回数まで分裂するとなると、その人の寿命の限界は120歳ほどと想定されているのです。

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では、世界で記録されている長寿の記録を紐解いてみましょう。

2020年現在までで、もっとも長生きだった人の記録は1875年に生まれたフランスの女性です。彼女は122歳と半年ほどで息を引き取りました。ほかにもいろいろな国で長寿の記録が出てきますが、この年齢以上の記録はありません。

このような記録を見ると、ヘイフリック限界から導き出される「約120歳」というヒトの寿命の限界は、かなり真実味を帯びているように感じられます。

ヘイフリック限界を超えた細胞たち

ここまで「細胞分裂は有限」という話をしてきましたが…なんと、ヒトの体内にはヘイフリック限界を超えて、無制限に増殖を続けることのできる細胞も存在します。たとえば、卵や精子などの生殖細胞や、幹細胞です。

これらの細胞では、テロメラーゼという酵素がはたらいています。テロメラーゼは短くなってしまったテロメアを、再度伸長する反応を進める酵素なんです。

そして、生殖細胞や幹細胞同様にテロメラーゼがはたらいている細胞が、がん細胞(癌細胞)。がん細胞は、コントロールできず、無制限に増殖し、腫瘍をつくります。テロメアが短くなり、ヘイフリック限界を迎えていれば、このような細胞は生じないはずなのです。

\次のページで「発見者、レオナルド・ヘイフリック」を解説!/

DNAも複製を繰り返すほど複製のミスが生じる可能性が出てきます。ある程度のところで細胞が死を迎えることは、生物にとって必要なことなのかもしれませんね。

発見者、レオナルド・ヘイフリック

ヘイフリック限界という現象を見出したのは、アメリカの生物学者であるレオナルド・ヘイフリック(Leonard Hayflick)です。

ヘイフリックは1928年にペンシルベニア州フィラデルフィアで生まれました。ペンシルベニア大学で医学の博士号をとり、研究者として精力的に活動。スタンフォード大学やカリフォルニア大学で教鞭をとります。

ヘイフリック限界を見つけたのは1961年ごろのことです。前述の通り、それまで生物の細胞は「無限に分裂できる」と考えられていました。ノーベル賞も受賞した著名な生物学者、アレクシス・カレルもそれを強く信じており、「自らの培養しているニワトリの細胞は30年以上も培養を続けられている」と主張していたほどです。

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ところがヘイフリックは、正常な細胞を培養する過程で、細胞分裂が停止してしまう現象がみられることに気づいたのです。それまでの定説を覆す形になりましたが、カレルの実験を他の科学者が再現できなかった半面、ヘイフリックの実験は再現が可能であったことなどから支持が得ら、多くの科学者の認めるところになりました。

いまではヘイフリック限界は事実としてよく知られています。

生物の死とヘイフリック限界

細胞の死、そして生物の死に深く関係するヘイフリック限界…なんだか恐ろしいようですが、とても興味深い現象ですよね。ヘイフリック限界やテロメアについての研究がさらに進めば、老化やがんなどの進行を抑えることができるのではないかと期待されています。

みなさんもぜひ、ヘイフリック限界やテロメアに関する研究の発展に注目してみてください。

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理科環境と生物の反応生物

3分で簡単「ヘイフリック限界」私たちの寿命に関係する!?現役講師がわかりやすく解説!

今回は「ヘイフリック限界」という用語について学習していこう。

多くの人にとって聞きなれない言葉だと思うが、ヘイフリック限界は生物の老化や寿命に関係しているとみられる、重要な現象です。DNAの分子レベルの話もかかわってくるが、大変興味深い内容なので、多くの人に知ってほしい。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

ヘイフリック限界とは

ヘイフリック限界(Hayflick limit)とは、細胞にみられる分裂回数の限界を指します。

私たちの身体は細胞からなり、細胞は細胞分裂によって数を増やしていきますが、ほとんどの細胞はその分裂が無限に行われるわけではありません。一定の回数分裂すると、それ以上の細胞分裂は不可能となり、細胞は老化して死んでしまいます

ヘイフリック限界が存在するからこそ、あらゆる生物は不死ではなく、いずれ”寿命”が訪れると考えられているのです。

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