この記事では「生体防御」をテーマにみていこう。

我々の体を守る生体防御のメカニズムは複雑です。高校の生物学では”恒常性”の単元に関連する内容ですが、たくさんの仕組みだ一度に出てくるため、混乱しやすい。ここでしっかり確認しよう。生体防御について理解しておくことは、普段の生活にも役立つことが多いぞ。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

生体防御とは

私たち人間も含め、あらゆる生物は自身の体を病原体(細菌、ウイルス、寄生虫など)から守るための仕組みをもっています。基本的には病原体を侵入させないようにし、体内への侵入を許してしまった場合には、それを除去しようとする…そのようなしくみをまとめて生体防御(せいたいぼうぎょ)というのです。

高校の生物学では、「生体防御は大きく3つの段階に分けて考えられる」と習います。ヒトの生体防御機構の仕組みを中心にご紹介していきましょう。

第1の生体防御機構

”第1の生体防御機構”には、「そもそも病原体を体内に侵入させない」ための仕組みが含まれます。ぜひ、ご自身の体をイメージしながら読んでみてください。

この第1の生体防御機構は、さらに物理的防御化学的防御に分けられます。

物理的防御

普段はほとんど意識されませんが、私たちの肌(皮膚)は病原体や毒物を体内に入れないための重要なバリアです。切り傷や擦り傷ができてしまったときには患部を消毒し、絆創膏や包帯で保護しますよね。傷口では血液が凝固してかさぶたができますが、これも病原体の侵入を防ぐ機能を果たします。

口の中やのどなどはぬるぬるとした粘膜でおおわれていますが、これも病原体の侵入を防ぐ物理的防御の一種です。

\次のページで「化学的防御」を解説!/

さらに、気管支にみられる繊毛(または線毛)も忘れてはいけません。繊毛が粘膜に絡んだ異物を体外へ出すように動きます。

化学的防御

化学的防御では、酵素や酸などを病原体に反応させ、病原体を弱らせることで侵入を防ぎます。

代表的な酵素として、リゾチームを覚えておきましょう。涙や鼻水に含まれるリゾチームは加水分解酵素の一種。細菌の細胞壁に作用することでそれを破壊します。そのはたらきから「溶菌酵素」という別名もあるほどです。

image by iStockphoto

また、酸性の環境は多くの細菌にとって増殖が難しくなります。皮脂などの分泌物は肌の表面を弱酸性に保ち、細菌の繁殖を抑えているのです。

さらに強い酸性の液体があるのが胃の中。そう、胃液です。食べ物についてきてしまった病原体は、胃液に含まれる胃酸によって多くが死滅してしまいます。

第2の生体防御機構

第1の生体防御機構をかいくぐり、体内に病原体の侵入を許してしまったとき、真っ先にはたらくのが次の”第2の生体防御機構”です。

食作用

第2の生体防御機構の代表が、白血球の一種である好中球マクロファージが病原体を食べて除去する作用です。傷口など、病原体が多く現れたところにしてきたところに集まり、侵入してきた異物を端から食べてしまいます。

Macrophage.jpg
オリジナルのアップロード者は英語版ウィキペディアObliさん - en.wikipedia からコモンズに移動されました。, CC 表示-継承 2.0, リンクによる

「食べる」というよりは、「取り込む」といった方が、イメージに合うかもしれません。好中球やマクロファージは、病原体などの異物を細胞内に取り込みます。細胞内ではリソソームという細胞小器官にある加水分解酵素がはたらくことで、異物を分解してしまうのです。

このような、白血球が病原体を食べてしまうことを食作用(しょくさよう)や貪食作用(どんしょくさよう)といい、これを行う細胞は食細胞とよばれます。

炎症

病原体の侵入を防ぐはたらきをするさなか、マクロファージは化学物質を放出し、血管を拡張します。広がった血管からは、血液中にいた好中球やマクロファージに分化する白血球(単球)が出てきて、病原体のたくさんいる場所へ加勢に来てくれるのです。

マクロファージの分泌する化学物質のような、細胞から分泌されて何らかの作用を引き起こす、小さなタンパク質をまとめてサイトカインといいます。

\次のページで「発熱」を解説!/

発熱

白血球の分泌するサイトカインには、発熱を促すものがあります。サイトカインなどの分泌の情報が脳にまで伝わると、脳の視床下部が体温を上げるようにはたらき、発熱という症状となってあらわれるのです。

image by iStockphoto

それでは、なぜ体温を上げなくてはいけないのでしょうか?その理由は、温度が高いと白血球のはたらきが促進されたり、病原体の増殖が抑制されるためなんです。熱が出ていると苦しいですが、それは体内で白血球が懸命に戦ってくれている証拠といえます。

化膿

好中球は食作用によって病原体を除去しますが、その寿命は短く、病原体を食べた後は死んでしまいます。死んだ好中球はマクロファージが食作用によって除去しますが、それも間に合わないくらいになると、傷口などに好中球の死がいが溜まってしまうのです。これがいわゆる(うみ)であり、膿が溜まっている損傷は「化膿(かのう)している」といいます。

NK細胞

第2の生体防御機構のメインは食細胞による食作用ですが、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)既に病原体に感染したり、がん化してしまった細胞を攻撃、除去します

「病原体そのもの」と「病原体に感染した細胞・がん化した細胞」の最大の違いは、”もともと自身の細胞であったか否か”です。NK細胞は自己の細胞のうち、正常な細胞と異常な細胞を見分け、異常な細胞のみを攻撃する仕組みをもっています。

樹状細胞

最後にご紹介するのが樹状細胞です。こちらも白血球の一種であり、食作用を行う食細胞でもありますが、好中球やマクロファージのようにどんどん病原体を食べて除去するわけではありません。

樹状細胞は、食作用によって病原体を取り込むと、リンパ節へ移動し、リンパ球を活性化させます。これが発端となり、次の”第3の生体防御機構”がはじまるのです。

第3の生体防御機構

第1、第2の生体防御機構を突破し、いよいよ本格的に病原体が体内に侵入してくると機能するのが”第3の生体防御機構”。この段階では、白血球の中でもリンパ球というグループに分類されるT細胞やB細胞がはたらきます。細胞性免疫体液性免疫に分けてみていきましょう。

細胞性免疫

リンパ節にたどり着いた樹状細胞は、リンパ球のT細胞に、自身が取り込んできた病原体の断片を提示します。これを抗原提示といい、抗原提示を受けたT細胞は活性化。ヘルパーT細胞キラーT細胞に分化します。

SEM Lymphocyte.jpg
Unknown photographer/artist (False color modifications made by myself--DO11.10) - Dr. Triche National Cancer Institute, パブリック・ドメイン, リンクによる

ヘルパーT細胞は病原体が多くいるところまで移動し、好中球やマクロファージ、NK細胞をさらに活性化させ、病原体の排除を促進します。

一方、キラーT細胞はというと、すでに病原体に感染してしまった細胞を攻撃し、破壊する役割です。NK細胞と少し似ていますね。

\次のページで「体液性免疫」を解説!/

体液性免疫

前述のヘルパーT細胞が活性化させるのは、好中球やマクロファージだけではありません。リンパ節ではB細胞も活性化させます。活性化したB細胞は抗体(または免疫グロブリン)というタンパク質をつくる抗体産生細胞(または形質細胞)に分化。抗体をつくって、それを血液に乗せて送り届けます。

抗体は病原体に特異的に結合し、病原体の毒性を弱めたり、それが目印となって食細胞が食作用をしやすくなったりするのです。

記憶細胞

細胞性免疫や体液性免疫で活躍したリンパ節たちは、対象となった病原体が体内から消えると、その役割を終えてほとんどが死滅します。ところが、ごく一部は「記憶細胞」となって体内に残り、同じ病原体の再度の侵入に備えているのです。

自然免疫と適応免疫

以上の3段階の生体防御機構のうち、第2の生体防御機構は「自然免疫」とよばれます。以前にその病原体が侵入してきたかどうかは無関係にはたらく、基本的な免疫機構です。

なお、”免疫”は「侵入してきた病原体に対する生体防御機構」と説明されますが、高校の教科書などでは第1の生体防御機構も自然免疫に含めていることがあるので、覚えておきましょう。

image by Study-Z編集部

第3の生体防御機構は「適応免疫(もしくは獲得免疫)」とよばれます。その病原体の一度目の侵入だけでなく、2度目、3度目の侵入にも機能し、しかも1度目よりもより強力な免疫機能を発揮することができるしくみです。

自然免疫の方はすべての生物に備わっていますが、適応免疫をもっているのは大部分の脊椎動物に限られます。

私たちの体は意外とすごい。

私たちが普段の生活で感じる体調不良や、傷などのけが。ほとんどは気づかないうちに治ってしまいますが、生体防御という観点から考えると、それが体にとってどれだけ重要かがわかります。

これだけの備えをしてなお、私たちの体は病気にまけてしまうことがあるのですから、生命を維持していることというのは、すごいことなのです。

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理科環境と生物の反応生物細胞・生殖・遺伝

3分で簡単「生体防御」!生体防御は3種類ある?現役講師がわかりやすくさくっとまとめます!

この記事では「生体防御」をテーマにみていこう。

我々の体を守る生体防御のメカニズムは複雑です。高校の生物学では”恒常性”の単元に関連する内容ですが、たくさんの仕組みだ一度に出てくるため、混乱しやすい。ここでしっかり確認しよう。生体防御について理解しておくことは、普段の生活にも役立つことが多いぞ。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

生体防御とは

私たち人間も含め、あらゆる生物は自身の体を病原体(細菌、ウイルス、寄生虫など)から守るための仕組みをもっています。基本的には病原体を侵入させないようにし、体内への侵入を許してしまった場合には、それを除去しようとする…そのようなしくみをまとめて生体防御(せいたいぼうぎょ)というのです。

高校の生物学では、「生体防御は大きく3つの段階に分けて考えられる」と習います。ヒトの生体防御機構の仕組みを中心にご紹介していきましょう。

第1の生体防御機構

”第1の生体防御機構”には、「そもそも病原体を体内に侵入させない」ための仕組みが含まれます。ぜひ、ご自身の体をイメージしながら読んでみてください。

この第1の生体防御機構は、さらに物理的防御化学的防御に分けられます。

物理的防御

普段はほとんど意識されませんが、私たちの肌(皮膚)は病原体や毒物を体内に入れないための重要なバリアです。切り傷や擦り傷ができてしまったときには患部を消毒し、絆創膏や包帯で保護しますよね。傷口では血液が凝固してかさぶたができますが、これも病原体の侵入を防ぐ機能を果たします。

口の中やのどなどはぬるぬるとした粘膜でおおわれていますが、これも病原体の侵入を防ぐ物理的防御の一種です。

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