この記事ではベルクマンの法則について学習しよう。

ベルクマンの法則は、アレンの法則やフォスターの法則などとともに生態学の分野で学ぶはずです。法則の内容だけでなく、どんな生物が例として挙げられるのか、なぜこの法則がみられるのか、というところまでしっかりと理解しよう。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

ベルクマンの法則とは

ベルクマンの法則は、「恒温動物では、近縁種では大型の種ほど寒い地域に生息する。同種内では、寒い地域に住む個体ほど体重が重い傾向にある。」という内容のものです。

1847年にクリスティアン・ベルクマンによって提唱されました。

ベルクマンの法則の例

では、ベルクマンの法則が当てはまるような例をいくつかご紹介しましょう。

クマのなかま

ベルクマンの法則を説明するのには、クマのなかまの例がよく挙げられます。北極圏に生息しているホッキョクグマ、日本にも生息するツキノワグマ、マレーシアやインドなどの熱帯域に生息するマレーグマの3種を比べてみましょう。

それぞれの平均的な体長は以下の通りです。

ホッキョクグマ…200~300wp_
ツキノワグマ…130~200㎝
マレーグマ…100~150wp_

このように、寒い土地に住むホッキョクグマがもっとも大きく、暑いところに住むマレーグマが小型であることがわかります。近縁(いずれもクマ科)な種の中であれば、寒冷な地域に住むものが大型である、という非常に良い例です。

\次のページで「シカのなかま」を解説!/

image by iStockphoto

シカのなかま

シカのなかまでも例を考えてみましょう。カナダや北極圏に近いところに住むヘラジカと、中国の中部~北部に住むクチジロジカ、日本に住むニホンジカのサイズの違いをご覧ください。

ヘラジカ…体長200~310wp_、肩高140~230wp_
クチジロジカ…体長190~230wp_、肩高120~130wp_
ニホンジカ(オス)…体長90~190wp_、肩高70~130wp_

クチジロジカの生息が確認されている中国の四川省などは、緯度を見ると日本の九州と同じくらいです。

それでもクチジロジカがニホンジカよりも大きめなのは、クチジロジカが高原に住むシカだからでしょう。富士山よりも高いような場所で暮らしているため、気温が低いと考えられます。

ヒト(日本人)

image by iStockphoto

それでは、同種内でみられるベルクマンの法則についても考えてみましょう。ここでは、日本人の平均体重を例に取り上げたいと思います。

以下のデータは、平成26年に統計がとられた都道府県別の17歳男子の平均体重です。政府の統計データ(学校保健統計調査)をもとにしています。

全国平均…62.6kg
北海道…63.3kg
青森県…63.8kg
東京都…62.2kg
福岡県…61.3kg
沖縄県…61.1kg

\次のページで「なぜ“ベルクマンの法則”がみられるのか?」を解説!/

都道府県によってはやや傾向から外れるような数値もあったりしますが、全体的に見て寒い地域の男子の方が体重が重くなりがちな様子がみられます。

食生活や生活環境の影響も考えられますが、おおむねベルクマンの法則がみられる、といってもよさそうです。

なぜ“ベルクマンの法則”がみられるのか?

ベルクマンの法則が成り立つ理由として挙げられるのが、体の大きさと体温調節の関係です。

一般的に、恒温動物は体が大きくなるほど体温を保持しやすくなるといわれています。

問題は、一度体温をあげた後なのです。

小さな体は体温が上がりやすい反面、冷めやすい傾向があります。一方、大きな体は一度温まった体がなかなか冷めません。なぜならば、体が大きくなるほど、体積に対する表面積(体表面積)の割合が小さくなるからです。

簡単なモデルを使って、表面積と体積の関係を考えてみましょう。3種類の立方体をイメージしてください。3つの立方体は、一辺の長さがそれぞれ1メートル、2メートル、3メートルです。

各々の立方体の表面積は、6平方メートル、24平方メートル、54平方メートルですね。

さらに体積を計算すると、それぞれの立方体で1立方メートル、8立方メートル、27立方メートルとなります。

image by Study-Z編集部

それでは、表面積の値を体積で割り算してみましょう。最も小さな立方体(1辺1メートル)では6、最も大きな立方体(1辺3メートル)では2という数字になります。これは、1立方メートルの体積に対する表面積です。1辺の長さが大きくなるほど、体積に対する表面積が小さくなります。

つまり、体が大きくなるほど体積に対する表面積が相対的に小さくなり、熱を逃がしにくくなる(効率よく熱を保持できる)のです。

恒温動物は生存のために体温を維持し続けなければなりません。厳しい環境に適応する中で体のサイズが大きくなっていったのでしょう。

ベルクマンの法則に当てはまらないもの

残念ながら、ベルクマンの法則は決してすべての生物に当てはまる法則ではありません。

前述の通り、ベルクマンの法則は「身体が大きくなると保温に有利だから」という理屈で説明されます。言い換えれば、外気温によって体温を調節する変温動物には、このルールに当てはまらないものが数多くいるんです。

\次のページで「提唱者ベルクマン」を解説!/

image by iStockphoto

とくに昆虫類にいたっては、ベルクマンの法則の”逆”をいくようにも見えます。温かいところ(熱帯域など)には巨大なカブトムシや蛾などが生息しますが、寒い地方ではそのような昆虫はそれほど見られません。

これは、熱帯域に暮らす昆虫は年中餌が食べられるからだとか、越冬の必要がないので何年も生きて巨大化するからだとか、気温が低く太陽光も弱い地域ではサイズが小さい方が早く体を温められるからだとか説明されます。

また、植物においてもベルクマンの法則に従わないものが数多くいます。

ベルクマンの法則はあくまで恒温動物、つまり哺乳類や鳥類で考えられるルールだ、と覚えておきましょう。

提唱者ベルクマン

ベルクマンの法則を提唱したクリスティアン・ベルクマンは、19世紀に活躍したドイツの医師・生物学者です。

1814年にゲッティンゲンという街に生まれ、ゲッティンゲン大学に進学。1838年に医学の博士号を取得し、解剖学や生理学を教える立場につきましたが、1865年に50歳という若さで急逝しました。

Bergmann, Karl Georg Lucas Christian.jpg
Von Autor unbekannt - University Archives Rostock from the tab “Dokumente/Anhang” (Documents/Appendix), Gemeinfrei, Link

彼は1840年に、解剖学者ルドルフ・ワグナーの比較解剖学用の標本を管理するアシスタントをしています。比較解剖学というのは名前の通り、生物の体を比較してそれぞれのメカニズムなどを研究する学問。きっと様々な生物の標本があったのでしょう。似た生物の標本を見比べる中で、ベルクマンの法則に気づいたのかもしれません。

生物の身体のサイズを考える

ベルクマンの法則は気温と身体のサイズの関係を明快に示した法則です。しかしながら実際のところ、自然界に生息する動物たちはベルクマンの法則だけで体の大きさが決まってくるわけではありません。生息する環境や、餌の豊富さ・種類、外敵の数など、体の大きさに影響を与える要因はいくつもあります。

それでもベルクマンの法則がいくつもの生物で見られるというのは、「恒温動物にとって体温を維持することがどれだけ大切なことか」を表しているといってよいでしょう。

" /> 寒いところには大きな生き物?「ベルクマンの法則」を現役講師がサクッとわかりやすく解説! – Study-Z
理科生物生物の分類・進化

寒いところには大きな生き物?「ベルクマンの法則」を現役講師がサクッとわかりやすく解説!

この記事ではベルクマンの法則について学習しよう。

ベルクマンの法則は、アレンの法則やフォスターの法則などとともに生態学の分野で学ぶはずです。法則の内容だけでなく、どんな生物が例として挙げられるのか、なぜこの法則がみられるのか、というところまでしっかりと理解しよう。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

ベルクマンの法則とは

ベルクマンの法則は、「恒温動物では、近縁種では大型の種ほど寒い地域に生息する。同種内では、寒い地域に住む個体ほど体重が重い傾向にある。」という内容のものです。

1847年にクリスティアン・ベルクマンによって提唱されました。

ベルクマンの法則の例

では、ベルクマンの法則が当てはまるような例をいくつかご紹介しましょう。

クマのなかま

ベルクマンの法則を説明するのには、クマのなかまの例がよく挙げられます。北極圏に生息しているホッキョクグマ、日本にも生息するツキノワグマ、マレーシアやインドなどの熱帯域に生息するマレーグマの3種を比べてみましょう。

それぞれの平均的な体長は以下の通りです。

ホッキョクグマ…200~300wp_
ツキノワグマ…130~200㎝
マレーグマ…100~150wp_

このように、寒い土地に住むホッキョクグマがもっとも大きく、暑いところに住むマレーグマが小型であることがわかります。近縁(いずれもクマ科)な種の中であれば、寒冷な地域に住むものが大型である、という非常に良い例です。

\次のページで「シカのなかま」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: