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第165回 Mr.Children「Again」
 ある時期の僕はその月に書く原稿の半分以上がミスチルだった、なんてこともあるくらい縁があったのだが(まぁそれは、単行本だったりのタイミングだが…)、今回は実に久しぶりである。

でも、その有り余った情熱(?)を、「Again」という一曲に注ぎ込んでみることにしよう。ただその前に、このことを書かせてください。

昨秋、武道館で桑田佳祐主催のイベントが行われた際、ゲストとして登場した桜井和寿は、バズの往年の名曲「ケンとメリー ~愛と風のように~」を歌った。で、その声の強さと伸びやかさに、僕は“桜井2.0”を感じたのだった。

お餅を想像してほしい。あれは伸びる。でも、伸ばすと細くなっていく。でも伸びるけど、細くはならなかったのがあの日の桜井の歌声だったのだ。そうした期待のなかで新曲「Again」を聴いた。
歌詞に響く“逆張り”の希望感
 「Again」はドラマ『リブート』主題歌として大評判だが、そのあたりの情報はどこでも受け取れるので、いつもどおり歌詞に特化して書く。

で、この歌は冒頭から、[期待しない][明るくない未来][傷つくだけ]など、ネガのオンパレードだったりする。

さらに聴き進み、いよいよ[少しずつ]というフレーズに遭遇。やっとやっと、ここでポジの薄日が差すかと思いきや、その先には[すり減らす]という追い打ちのような言葉が待っていた。

曲調は疾走感あるものなので、どーっと落ち込んだ気分になるわけじゃないものの、“ちょっとちょっと、この曲の救いはどこなの?”、みたいな気分になる。
ジャケット画像1
「Again」
2026年1月19日配信
歌詞を見る。

Mr.Children
1989年に結成された、桜井和寿(Vo, G)、田原健一(G)、中川敬輔(B)、鈴木英哉(Dr)の4人によるロックバンド。1992年5月にミニアルバム『EVERYTHING』でメジャーデビューを果たし、人気を高めていく。1993年11月発売の4thシングル「CROSS ROAD」がドラマ主題歌に起用されバンドにとって初のミリオンヒットとなる。その後も「innocent world」「Tomorrow never knows」「名もなき詩」「終わりなき旅」といったシングルや、『Atomic Heart』『深海』『BOLERO』『IT'S A WONDERFUL WORLD』『HOME』などのアルバムがミリオンセールスを記録。
“ダケダケ攻撃”の面白い歌詞の書き方
 ところでこの「Again」だけど、やたら[だけ]という助詞が出てくる。[だけ]だけしか出てこないんじゃないかってくらい頻出する。ここが本作の詞の書き方の面白さだし、新鮮だし、さすが桜井和寿なのだった。

でも「限定」や「限界」を意味するこのワードの連発の先に、思わぬ効果が滲み出るのだ。それは、しっかり足元を見つめれば、おのずと自分にとっての「相応」も見えてくる、という教えなのだ。

それが後半の展開である。[毎日を 繰り返すだけ]における[だけ]になってくると、もはや「限定」や「限界」には縛られず、いよいよ三つ目の「相応」というのが顔を出し始める。そのあと、ついに登場する[お宝][優しく光った]への導線なのだった。

そうそう。この歌、あえて[お宝]っていう、ちょっとよそよそしい言葉を使っている。なんでも鑑定団じゃないんだし、なぜなのか。でもきっと、もしかしたら自分も価値に気づいてない何か(=お宝)なので、この表現かもしれない。

サーフボードはなんのメタファー?

 この歌に出てくる道具としては、サーフボードが挙げられる。でもそれは、残念ながら[ベランダに][眠ってる]状態である。このあたり、何を伝えようとしているのだろうか。そもそも“サーフボード”は、何の比喩だろう?

でも今回はなんの比喩でもなく、これはただストレートに作者が自らの身辺を描写しただけかもしれない。ここのところ[ビーチは未踏の地]といったあたりも、ただそのまま作者の実際のことである可能性もゼロというわけではない。

ちなみにサーフィン関連では、ファンの方々はご存じの通り「PADDLE」という作品がある。今後のライブで「Again」とコレが続けて演奏されたりする(この順番で)なら、また歌の響き方も変わりそうだが…。

さてここからは、あくまで僕の解釈。

 この場合、一番重要なのは、あんなにかさばるサーフボードなんてものを、処分せず、とりあえず[ベランダに]保管はしているという事実ではなかろうか。

もちろん捨てられずにいる、のかもしれない。いつかは再びテイクオフし、ビッグウェイヴをチャージするぞ、かもしれない。かもしれない。ただそれより、まずは“処分していない”ことが重要だと僕には思えるのだ。

歌が時代を映すなら、まあこの歌に関しても様々なことが書けるだろう。これを執筆中も、世の中は激しく揺れ動いている。しかし敢えて、結びつけは一切せずに書いてみた。繰り返すが、僕が一番この歌から強く感じ取ったのは、この歌の主人公は、“サーフボードを処分したわけではない”という事実だ。

もう少ししたら、彼らの新しいアルバムがリリースされる。楽しみに待つことにしたい。
INFORMATION
New Album『産声』

2026年3月25日発売
TFCC-81201 ¥3,300 (税込)

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