連載
今日も惑いて日が暮れる
上からではなく下から目線で、不安と惑いをつづった紙つぶてを投げてみたい――。吉井理記記者のコラムです。
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「机上の空論」とは=吉井理記
2025/2/12 13:03 887文字かつて国会では、軍人が軍服姿で闊歩(かっぽ)していた。 陸軍省軍務局軍務課内政班の将校らである。もちろん戦前・戦中のことだ。 作家・保阪正康さんの「国会が死んだ日」によると、世論や国会対策を担う彼らは、本会議場の傍聴席の一角に陣取り、だれが陸軍大臣の演説に拍手をしたか、あるいはヤジを飛ばしたか、な
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礼儀正しい日本人?=吉井理記
2025/2/5 13:03 876文字春節の連休が終わった。中国や台湾の旧正月かつ旅行の季節だ。 円安がもたらした「安い日本」である。すでにして多くの観光客が来日している。人気スポットでは、地域住民の暮らしに支障をきたすオーバーツーリズムの状態だ。そこに中台の観光客がどっとやってきた。 僕は会社近くの天ぷら屋さんのランチ天丼(並)をた
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人民は天子を知らず=吉井理記
2025/1/29 13:01 880文字働き方改革の時代である。ムリして働くことはよろしくない。 毎週水曜夕刊(一部地域は木曜朝刊)掲載の本欄も時々、書くネタが思いつかない「空白週」がある。それが今週だ。 そこで働き方改革だ。ムリはよくない。今週はネタがないので休みます……としたいが、諸事情と会社が許さない。仕方ないので一足早く2月11
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「再生の道」はどこの道=吉井理記
2025/1/22 13:14 882文字新聞記者は、時に「ブン屋」という俗語で呼ばれる。 「新聞屋」が隠語っぽく転じた言葉らしい。僕も「ブン屋のくせに」「なんでブン屋がここにいるんだ」など、数回だが取材先でこの言葉を投げられた。文脈から察せられる通り、ネガティブな言い方だ。そもそも記者は人に好かれる仕事ではないが、良い気持ちはしなかった
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「大正100年」どこいった=吉井理記
2025/1/15 13:10 875文字先週の本欄でも触れたが、今年は昭和という元号で言えば、「昭和100年」である。毎日新聞などのメディアも、「昭和回顧もの」を報じつつある。 思えば「昭和100年」の前には「明治100年」があった。明治元(1868)年から丸100年後の1968年元日の本紙朝刊は、1面に社説「日本はどこへゆくべきか 明
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自衛隊に入ろう=吉井理記
2025/1/8 13:12 899文字メディアはゴロ、というか切りの良い数字が好きである。 ○○から50年、××没後30年、などなど。3年前の2022年は沖縄の「本土復帰」50年の報道が相次いだし、関東大震災から100年の23年もそうだった。 今年はといえば、まずは戦後80年だろう。昭和100年、作家・三島由紀夫の生誕100年あたりも
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「東京事件」は起きないか=吉井理記
2024/12/18 13:09 858文字あれは地方紙の記者をしていた2001年春だった。 サッカーの日韓ワールドカップ(W杯)を翌年に控え、韓国政府の招きで韓国国内のW杯開催地を取材したことがある。 取材といっても、韓国語は「こんにちは」「さようなら」「ビールをください」しか知らず、当局者の日本語での説明にうなずくだけだったが、光州市で
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疑惑のランチ=吉井理記
2024/12/11 13:07 900文字外食が怖い。正しくは「外食での注文が怖い」だ。 デジタル化が進む昨今である。僕が行くチェーン系飲食店は、今や多くが店頭のタッチパネル式券売機やテーブル上のタブレット端末を操作して料理を注文するようになっている。 以前は店員さんに一声、「牛丼の並お願いします」と10文字で済んだ話が、今では券売機のタ
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なぜ信じるのか=吉井理記
2024/12/4 13:16 891文字陰謀論があふれているなあ、と実感することが最近多い。 あれは2019年参院選の最終日の東京・秋葉原、安倍晋三首相(当時)の演説会でのこと。聴衆の一人に真顔で「毎日新聞などのメディアは在日(コリアン)が支配しているんですね。ネットで知りました」と言われたのだ。 「在日」が政財界やメディアを支配してい
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物価と「風立ちぬ」=吉井理記
2024/11/27 13:07 887文字新聞記者になったばかりのころ、先輩に繰り返し言われた。 「記者に大切なのは生活感覚だ。スーパーの野菜が今、どんな値段か、知っているようでなければダメだ」 新聞は人々の日常の喜怒哀楽をすくい取る仕事だ。人々の暮らしぶりに常にアンテナを張っていろ、ということらしかった。 それ以来、僕は近所のスーパーで
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「美談」の出典を探せ=吉井理記
2024/11/20 13:11 914文字産経新聞のウェブ版にこんな話があった。要約する。 <日本の傷痍(しょうい)軍人会が1991年にオランダ・アムステルダムを訪れた際、エドアルド・ヴァン・ティン市長(記者注・34~2021年)が次のようなあいさつをした。「日本は『アジア各地で侵略戦争を起こして申し訳ない』と謝罪しているが間違いだ。あな
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がっかり米大統領選=吉井理記
2024/11/13 13:10 908文字失望している。 米大統領選に、である。 ハリス氏が負けてクヤシイとか、そんな話ではない。 トランプ氏が敗北した前回2020年の大統領選を思い出してほしい。選挙を巡るデマ・陰謀論が百花繚乱(りょうらん)、乱れ飛んだ。 いわく「小児の人身売買をしている『影の政府』(ディープステート)が大規模な選挙不正
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参政党と「秋刀魚の味」=吉井理記
2024/11/6 13:05 866文字おでんと燗酒(かんざけ)がこたえられない季節になった。 昔はハンバーグやら唐揚げやらがごちそうだったが、尿酸値も気になる中年の今、おでんは冬の友である。透きとおるほどに煮込まれた大根の味は、時を経てこそ、やっと分かる美味だろう。中年になってよかった、と思える数少ない瞬間だ。 思えば昔は小津安二郎の
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石破さんの宗教観=吉井理記
2024/10/30 13:05 890文字一議員時代の石破茂首相に、その宗教観を問うインタビューをしたことがある(ウェブ版は2022年10月13、19日配信)。 自民党総裁選への出馬を表明したのは、地元の和多理神社(鳥取県八頭町)だった。 県知事や自治相を務めた父・二朗氏の生家にほど近い。政治生命をかけた一大決意を述べる地に選んだのがこの
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神さまもつらいよ=吉井理記
2024/10/23 13:04 868文字石破茂政権の一員に、三原じゅん子こども政策担当相がいる。 国会などで、たびたび戦前のような皇国史観を披露してきた。2016年参院選の投開票日には、選挙特番で初代天皇・神武が実在したという趣旨の発言をした。 その神武天皇の「墓」や宮殿跡があったとされる奈良県橿原市には、昨年から今年にかけて何度か訪れ
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マイホーム哀歌=吉井理記
2024/10/16 13:01 857文字総選挙が始まった。 そのさなか、新聞紙上で高らかにお伝えする話ではないが、我が家は借家である。 いやー、マイホームなんてムリっすよ。こんなデータがある。 不動産経済研究所によると、東京首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)の新築マンション1戸あたりの平均価格は2013年の4929万円から、10年後の昨
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最強の「敵」 =吉井理記
2024/10/9 13:01 846文字石破茂首相には、10年あまり前から何度も取材した。 自民党総裁選で敗れた直後には「もっとほかに楽しい人生があるんじゃないか、とも考えるんだよね」などとボヤいていた。 その石破氏は、もう哀れな敗者ではない。最高権力者だ。彼が首相を目指したのはなぜか? ズバリ「憲法9条改正」のためだ。「私は9条改正を
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穂積五一と深圳事件=吉井理記
2024/10/2 13:03 886文字元首相、村山富市さんは戦中の大学時代、東京・本郷の学生寮「至軒寮」に出入りした。寮長は穂積五一(1902~1981年)という人だった。 穂積は東京帝大で国粋主義の憲法学者、上杉慎吉(1878~1929年)の弟子になった。国家主義団体「七生社」で活動し、同会が運営した至軒寮を率いた。 ……と書くと、
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安倍さんの後継者=吉井理記
2024/9/25 13:01 854文字本欄とは別のところで一度、書いたので、再び記すのは気が引けるが、元首相の安倍晋三氏は新興宗教・崇教真光の信者だった。 安倍氏が告白している。 2009年11月5日にあった教団の「立教50年」の式典で、「私は今から10年ほど前に『神組み手』(信者)の一員になった」との祝辞を寄せた。 安倍氏を崇教真光
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「台湾有事」と靖国神社=吉井理記
2024/9/18 13:02 876文字「神道政治連盟」という組織がある。 その名の通り、神社関係者らがつくる政治団体である。憲法改正を目標にすえ、その地ならしのための運動を展開している。 一般にはなじみのない組織だと思う。会員向けの会報「意」は、さらになじみがないだろう。 その最新の第223号(6月発行)に、「台湾有事と神社神道の役割
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