連載
余録
毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。
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「マニフェストデスティニー…
2024/12/17 02:02 610文字「マニフェストデスティニー(明白な天命)」は米国の領土拡張を神の意思とする思想。19世紀半ばに唱えられ、テキサスやオレゴン、カリフォルニアなどの併合に結びついた▲「併合論」で初めて用いたジャーナリスト、ジョン・オサリバンはカナダや中南米も例外にせず、星条旗の下に3億人が集う将来像を描いた。そんな歴
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京都・三条大橋のたもとに…
2024/12/16 02:03 644文字京都・三条大橋のたもとに「駅伝の歴史ここに始まる」と記された碑がある。1917年、日本で最初の「東海道駅伝徒歩競走」のスタート地点となった場所だ▲首都が東京に定められて半世紀となる「奠都(てんと)50周年記念大博覧会」の行事として行われた。旧東海道五十三次を舞台とする23区間、総距離516キロに及
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はがきに肉筆で書かれた文面は筆者の人柄や…
2024/12/15 02:03 616文字はがきに肉筆で書かれた文面は筆者の人柄や、置かれた状況をしのばせることも多い。森鷗外記念館(東京都文京区)で開催中の「111枚のはがきの世界」は、そんな関心をそそる企画展だ。明治から昭和まで、89人の文化人が差し出したはがきを展示している▲作家、夏目漱石が自作の絵について年下の画家に「明日(中略)
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新聞には特定の業界の報道を主な領域とする…
2024/12/14 02:12 612文字新聞には特定の業界の報道を主な領域とする、多くの専門紙がある。仏教や神道など宗教界の情報を中心に扱う「中外日報」(本社・京都市)は、1897(明治30)年創刊。宗派に偏らない方針の下、週2回発行している▲同紙12月6日付社説は、能登半島地震の被災地状況がテーマだった。「目立つ復興復旧の遅れ」と題し
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能の演目にもなった源頼政のヌエ退治…
2024/12/13 02:06 616文字能の演目にもなった源頼政のヌエ退治。頭はサル、胴はタヌキ、尾はヘビ、脚はトラというキメラのような妖怪を射止めた。出典の平家物語にはその後、やはりヌエの名の怪鳥を退治した話も出てくる▲「目ざすとも知らぬやみ」に包まれた夜、見事に仕留めた。目を刺されてもわからない闇夜とも、目当ても見つからない暗闇とも
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「正直な人間なら十本の手の指よりたくさんのものを数える必要はめったにない」…
2024/12/12 02:05 609文字「正直な人間なら十本の手の指よりたくさんのものを数える必要はめったにない」。19世紀半ばに米マサチューセッツ州の湖畔の丸太小屋に住み、自給自足の生活実験を行った米作家、ソローの言葉だ▲2年余の暮らしを記録した名著「森の生活」で初めて使われたという言葉が「ブレーンロット(脳の腐敗)」。狭い常識にとら
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死んだ兄と自分を取り違えた新聞の訃報に…
2024/12/11 02:03 613文字死んだ兄と自分を取り違えた新聞の訃報に「死の商人」の見出しがあった――。ダイナマイトを発明したノーベルが平和賞を作ったきっかけとされる逸話だが、確たる証拠はないという。より確かなのは元秘書のオーストリア人女性の影響だ▲反戦小説「武器を捨てよ!」(1889年)で名声を得て平和運動にまい進したベルタ・
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「北朝鮮パイロットがイスラエルと交戦…
2024/12/10 02:06 651文字「北朝鮮パイロットがイスラエルと交戦」。米国防総省が発表したのは1973年の第4次中東戦争時だ。通信傍受でエジプト軍のミグ戦闘機に朝鮮語を話すパイロットが搭乗していることがわかったという▲極東からの空軍部隊はシリアも支援した。翌年に訪朝した初代のアサド大統領は再び朝鮮戦争が起きれば「シリア軍を送る
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NHKの連続テレビ小説「虎に翼」で…
2024/12/8 02:02 627文字NHKの連続テレビ小説「虎に翼」で取り上げられた戦前の首相直属機関「総力戦研究所」が、米国と戦争した場合の分析を内閣に報告したのは1941年8月末だった▲当時の軍部や官僚らの中堅・若手精鋭がデータを基に進めたシミュレーション結果は「日本必敗」。戦争が長期化し、最後はソ連参戦で行き詰まることまで予測
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「軍国重大なる時機において汽車不通を生じ…
2024/12/7 02:06 629文字「軍国重大なる時機において汽車不通を生じ、輸送力に対する影響甚大なる」「各種軍需工場の破壊を伴い生産力上の障害大」。戦時中の中央気象台報告書が記すのは1944年12月7日に静岡や愛知、三重などを襲った昭和東南海地震だ▲関東大震災と同規模。建物の倒壊や津波で1200人以上が犠牲になったが、報道は厳し
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石破茂首相の地盤である鳥取県は明治期…
2024/12/6 02:02 617文字石破茂首相の地盤である鳥取県は明治期、政府の方針に翻弄(ほんろう)されたことがある。1876(明治9)年に府県統合が行われた際に島根県に編入され、いったん消滅してしまった。士族らから再設置を求める運動が起こり、やっと復活したのは5年後の81(明治14)年だった▲時が移っても、中央が地方を左右するパ
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「小説に登場する主人公のモデルとなった少年たちを…
2024/12/5 02:02 632文字「小説に登場する主人公のモデルとなった少年たちを含む無辜(むこ)の人々のおびただしい死が、今日の韓国の民主的な社会の尊い礎になった」。韓国の作家、ハン・ガン(韓江)さんの「少年が来る」を訳した井手俊作さんがあとがきに書いている▲1980年5月、戒厳令下の韓国で軍が民主化運動を弾圧した「光州事件」が
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古来、恩赦は君主の慈悲の表れとされた…
2024/12/4 02:04 614文字古来、恩赦は君主の慈悲の表れとされた。「主権の最も美しい属性」と呼んだのはモンテスキューだ。三権分立を唱えた18世紀の仏啓蒙(けいもう)思想家は「判決を下しておいてそれを取り消すのはおかしなことだ」と国王と裁判権の分離論に結びつけた▲名著「法の精神」では君主制を特徴づけるもので共和制との親和性は高
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「クマのプーさん」の誕生は…
2024/12/3 02:04 619文字「クマのプーさん」の誕生は約1世紀前。ロンドン動物園のクロクマ、ウィニーを気に入った幼いクリストファー・ロビンがテディベアにその名をつけた。そこから着想を得て父親が書いた物語が「ウィニー・ザ・プー」(1926年)だ▲今では考えられないが来園者はウィニーの背中に乗ることもできたそうだ。元々カナダの獣
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近代になっても欧州の指導者は…
2024/12/2 02:03 631文字近代になっても欧州の指導者は自身を権威づけるのに教会を利用した。仏皇帝ナポレオンは戴冠の際、ローマ教皇から王冠を奪い、自分の頭にのせたとされる。1804年12月2日、220年前の今日である▲戴冠式は約2万人の招待客が見守る中、パリ・シテ島のノートルダム大聖堂で開かれた。このゴシック建築の至高は12
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2匹の野ねずみが…
2024/12/1 02:07 613文字2匹の野ねずみが、大きな卵からカステラを作る人気絵本「ぐりとぐら」。その元になる作品は雑誌「母の友」(福音館書店)の1963年6月号に「たまご」という絵入り短編童話として登場した▲作者は中川李枝子さんで、妹の山脇(旧姓・大村)百合子さんが絵を描いた。中川さんが保育士だった時、保育園でホットケーキが
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戦前の代表的なリベラル派言論人で…
2024/11/30 02:04 621文字戦前の代表的なリベラル派言論人で、後に首相に就いた石橋湛山(いしばし・たんざん)(1884~1973年)は、戦後の占領期に「心臓大臣」と評された。蔵相として連合国軍総司令部(GHQ)と諸課題で対立し、引かない強心臓ぶりをみせたためだ。その後、公職追放される原因になったとされる▲その石橋内閣の195
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ショーケンこと萩原健一さんが…
2024/11/29 02:02 609文字ショーケンこと萩原健一さんが主演した半世紀前のテレビドラマ「傷だらけの天使」。軽快なサックスのメロディーに乗せた冒頭の朝食シーンが格好良かった。トマトやコンビーフを丸かじりした後、魚肉ソーセージの留め金をかみちぎる▲まねをして金具を歯でガリっとやり、いやな感触が残った記憶がある。スナックがわりにマ
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江戸幕府の八代将軍、徳川吉宗は「米将軍」とも呼ばれる…
2024/11/28 02:02 612文字江戸幕府の八代将軍、徳川吉宗は「米将軍」とも呼ばれる。新田開発や年貢の徴収方法見直しなどコメにまつわる施策が多かったためだが、最も苦慮したのは米価対策だったとされる。といっても、引き下げようとしたのではない。武士の収入源のコメが増産で値崩れすることを防ごうと、価格維持にやっきになった▲これは、どの
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「一句ごとに拍手をもって迎えられ相当の感動を与えたる模様」…
2024/11/27 02:08 626文字「一句ごとに拍手をもって迎えられ相当の感動を与えたる模様」。兵庫県が外務省に報告している。晩年の孫文が病をおして来日し、神戸で「王道か覇道か」と日本に連携を求めた「大アジア主義演説」(1924年11月28日)である▲米国で成立した排日移民法への反発から日本にもアジア主義が台頭していた。武力を背景と
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