連載
余録
毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。
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偶然で1度うまくいっても…
2024/10/1 02:07 615文字偶然で1度うまくいっても、同じ方法では成功しないことを戒めることわざに「柳の下にいつもドジョウはおらず」がある。古くからの表現らしい。明治中期の「国民の品位」(天野御民著)ということわざの本で、同じ土地からいつも優れた人物は出ないという意味で紹介されている▲ただし実際は、同じやり方を繰り返し「2匹
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人間のように文章や画像をつくる…
2024/9/30 02:13 614文字人間のように文章や画像をつくる生成人工知能(AI)。「社会に革命をもたらす」と、もてはやされてきたが、足元ではブームに陰りが見える▲企業などへの普及が思うように進まないため、投資家の間で過剰な期待感が修正され、夏場にはAI関連銘柄の株価が急落した▲実際、米政府機関によると、商品・サービスの創出に活
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人口や世帯の全数を把握するための国勢調査が…
2024/9/29 02:08 616文字人口や世帯の全数を把握するための国勢調査が日本で初めて実施されたのは1920(大正9)年だった。対象の年齢や貧富などを問わない調査は、社会の高い関心を呼んだ▲国民の啓発のために作られた当時の数え歌に「一等国の名を挙げて 国のほまれをかがやかせ」とのくだりがある(「国勢調査 日本社会の百年」佐藤正広
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石破茂・自民党元幹事長が政界入りしたのは…
2024/9/28 02:02 609文字石破茂・自民党元幹事長が政界入りしたのは、自治相などを歴任した父親を通じての田中角栄元首相(故人)との縁からだった。今も「角栄先生」と呼ぶ。田中派事務局で修業し、東京・目白邸で田中の「闇将軍」ぶりと、その落日にふれた。田中は師であり、カネの力で権力を行使した反面教師でもあった▲その石破氏が「最後の
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「実に半世紀の久しきにわたり…
2024/9/27 02:07 633文字「実に半世紀の久しきにわたり、よくあらゆる迫害に堪え、自己の無実を叫び続けてきた」「我々の先輩が冒した過誤をひたすら陳謝する」。裁判長が謝罪した相手は「昭和の巌窟(がんくつ)王」と呼ばれた吉田石松翁だ▲大正時代の冤罪(えんざい)事件。殺人罪で22年間投獄された吉田翁に戦後、再審の門が開かれ、事件か
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「五七の雨に四つ旱六つ八つ風に九は病…
2024/9/26 02:07 637文字「五七(ごしち)の雨に四(よ)つ旱(ひでり)六(む)つ八(や)つ風に九(く)は病(やまい)」。昔から伝わることわざは地震の発生時刻で天気を占っている。朝夜の8時に当たる五つ時なら雨というわけだ。「病」を含むから、次の災害に備える意味があったのかもしれない▲1948年6月の福井地震では損傷を受けた九
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初期の帝国議会は藩閥政府寄りの「吏党」と…
2024/9/25 02:08 610文字初期の帝国議会は藩閥政府寄りの「吏党」と自由民権運動の流れをくんだ「民党」が対立した。「与党」「野党」の呼称が定着したのは藩閥の力が衰え、「民党」から発展した政党が主要な政治勢力となった大正デモクラシー以降という▲「世に吏党なく、民党なく、単に政党として存在し、時として政局に当たり、時としてこれを
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終戦からまだ1年もたたない1946年7月…
2024/9/24 02:05 625文字終戦からまだ1年もたたない1946年7月、焼け野原が残る東京・西池袋に姿を現した山小屋風のしゃれたスタジオは、さぞ目立つ存在だっただろう。復員してきた俳優の野尻徹が設立し、演劇活動の拠点としたスタジオ・デ・ザールである▲当時はまだ連合国軍総司令部(GHQ)の占領下で、建築許可を得るのも一苦労だった
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1874年、東京・築地の海軍兵学寮で開催された…
2024/9/23 02:03 612文字1874年、東京・築地の海軍兵学寮で開催された「競闘遊戯会」が運動会の始まりといわれている。外国人教師の指導を受け、150ヤード競走や球投げ、豚追い競走など18種目が行われた▲明治時代半ばからは全国の小中学校に広まり、兵式体操など軍事的な種目も加わる。国民の体力増強や集団の規律が重んじられた富国強
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広島への原爆投下の惨禍を実体験に基づき…
2024/9/22 02:02 619文字広島への原爆投下の惨禍を実体験に基づき、少年を通じて描いた中沢啓治さん(故人)の漫画「はだしのゲン」。英訳が初めて出版されたのは1978年だった▲76年に米国に滞在していた編集者、大嶋賢洋さん(75)は、被爆の実相が米国内で知られていない現実にショックを受けた。「ゲン」を通じて伝えたいと帰国して中
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為政の乱れや不行跡が目立つ大名を…
2024/9/21 02:03 617文字為政の乱れや不行跡が目立つ大名を重臣たちが合議して監禁状態に置く、「主君押込(しゅくんおしこめ)」という慣行が江戸期にあった。日本史家、笠谷和比古さんの著作「主君『押込』の構造」が知られる。監禁された大名は改心を迫られたり、隠居を強制されたりした。大名の権力を封じる一種のクーデターだが、謹慎から復
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「群疑に因りて独見を阻むことなかれ」…
2024/9/20 02:07 646文字「群疑(ぐんぎ)に因(よ)りて独見(どくけん)を阻(はば)むことなかれ」。明代の書物「菜根譚(さいこんたん)」の一文を自著の冒頭に掲げた。多数が疑っても正しい意見は曲げないという人生訓。「不協和音のすすめ」と題したエッセーも書いた▲95歳で亡くなった園部逸夫(そのべ・いつお)さん。行政法の権威で京
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「あらゆる文物、技芸学術も…
2024/9/19 02:04 626文字「あらゆる文物、技芸学術も、国運の盛衰にともなふことは、歴史に明らか過ぎる」。川端康成が書いている。親しかった中国出身の天才棋士、呉清源から清朝では国力が弱まるにつれ碁も衰えたと聞いてうなずいた▲日本棋院創設から100年。戦後もアジアの囲碁界をリードしてきた日本が中韓の後じんを拝するようになったの
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「1億2000万の米国人がかつてないほど日本文化を学んだ」…
2024/9/18 02:02 608文字「1億2000万の米国人がかつてないほど日本文化を学んだ」。1980年9月に5夜連続で放送され人気を集めた米テレビドラマ「将軍」。当時ハーバード大教授だったライシャワー元駐日大使の言葉だ▲ハリウッドの脚本家でもあったジェームズ・クラベルの同名ベストセラー小説が原作。「関ケ原」の前に日本に漂着し、徳
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全米で女性が選挙権を得たのは…
2024/9/17 02:02 613文字全米で女性が選挙権を得たのは憲法修正第19条が成立した1920年8月である。3カ月後の大統領選挙では800万を超える女性が票を投じた。ただ、それ以前から、大統領を目指す女性はいた。被選挙権について憲法は「米国生まれの35歳以上」などと規定し、性による排除はしていない▲女性は投票できないのだから勝つ
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歴史に「もし」はないというが…
2024/9/16 02:05 614文字歴史に「もし」はないというが、偉業を振り返る時には話題となる。現在、オゾンを壊すフロン類を使用しない冷蔵庫が店舗に並ぶ。「この人がいなければ、この光景を目にできただろうか」と衆目の一致する人物が松本泰子さんだ▲1985年、南極上空のオゾンが極端に減少するオゾンホールが報告された。太陽からの有害な紫
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通常は紙製で四角い郵便切手は…
2024/9/15 02:06 617文字通常は紙製で四角い郵便切手は海外などでしばしば、奇抜な材質やデザインのものが発行される。最近出版された「変わり種切手大図鑑」(荒牧裕一著)を読むと、実に多種多様だ▲音の出るアナログレコードを切手にしたブータンの「レコード型切手」(1970年代)のように著名なものから宝石のダイヤモンドがついた切手、
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ドジョウは漢字で「泥鰌」と書く…
2024/9/14 02:07 635文字ドジョウは漢字で「泥鰌」と書く。「鰌」のつくりの「酋」は酒樽(さかだる)から酒気を発するさまを示すという。魚類研究の泰斗で昭和天皇にも進講した末広恭雄(すえひろ・やすお)博士はエッセーで「飲んべえの魚」と思われていたという説を紹介している▲腸で呼吸できるドジョウは水中の酸素が少なくなると、水面に上
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「私の国では政治は先進国のように技術的問題ではなく厳しい選択なのです」…
2024/9/13 02:03 610文字「私の国では政治は先進国のように技術的問題ではなく厳しい選択なのです」。ペルーのノーベル文学賞作家、バルガス・リョサ氏の言葉だ。最有力とされた1990年大統領選で「ツナミ」に敗れた▲日系2世の農業専門家、アルベルト・フジモリ氏が生んだ大波。ゲリラとの内戦、ハイパーインフレ。日々の生活に苦しむ中間層
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政党の樹立は国家の利か害か…
2024/9/12 02:07 609文字政党の樹立は国家の利か害か。男女同権、死刑廃止は是か非か。女帝を立てる可否は。自由民権運動が盛んだった明治初期の冊子「政談討論百題」が推奨する討論会のお題だ▲社会の変革を求め議論百出した時代の空気が伝わる。福沢諭吉が米国の書物を元にディベートを討論と訳して間もない時期。集会規制が強まるまで討論会が
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