連載
土記
平成の日本政・官界を取材してきた伊藤智永専門編集委員が担当するコラム。
-
初めに石破氏を担いだ人=伊藤智永
2024/10/5 02:01 1018文字<do-ki> 4月に三つの衆院補欠選挙で自民党は全敗した(二つは不戦敗)。「全敗したら岸田文雄総裁の再選もないな」。3月に小泉純一郎元首相との酒談議で、そんな見通しを語り合った山崎拓元副総裁は、石破茂氏が次の総裁にふさわしいと考え、行動を起こす。 「石破総裁を実現する会」創設メンバーがひそかに集
-
総裁選ガチャ=伊藤智永
2024/9/28 02:01 1014文字<do-ki> 100円玉を入れてレバーを回すと、卵形の半透明カプセルに入ったおもちゃが出てくるガチャ。正式名称はあっても、大げさな音とともに、何が出るか開けるまで分からないドキドキ感、それなりに精巧な中身の意外感から、もっぱらガチャの呼び名で人気だ。 9人が実質1カ月近く競った自民党総裁選は、ま
-
袴田さんを神にしたもの=伊藤智永
2024/9/21 02:03 1035文字<do-ki> 確定死刑囚の袴田巌さん(88)が自らを「神」と称しているとは聞いていたが、どんな「神」なのかは知らなかった。 「拘置をこれ以上継続することは、耐え難いほど正義に反する」(静岡地裁)として、47年7カ月監禁された獄中から突如釈放されて10年。死刑囚のまま姉の秀子さん(91)と暮らす袴
-
なぜあなたも総裁選に=伊藤智永
2024/9/14 02:00 994文字<do-ki> 多すぎるし、長すぎる。自民党総裁選は結局9人が立候補した。岸田文雄首相の不出馬表明から約1カ月。あと2週間もある。 閣僚や与党幹部が日ごろ黙っていた本音(ちゃぶ台返し?)や大口(言いっぱなし?)をたたく様は見ものだが、だったら言論の府で発言してほしかった。 せっかくの議論も論点が散
-
敗戦1年前の暗黒日記=伊藤智永
2024/9/7 02:01 1022文字<do-ki> 敗戦の1年前、日本人は何を考え、何をしていたか。それを知ることは、戦争体験の証言を集めるより大切だろう。サイパン陥落で本土爆撃は焦眉(しょうび)の急。東条英機内閣は倒れ、敗戦必至だった。 なのに「先の大戦」の戦死者310万人の9割は、最後の1年間に死んだ。多くが餓死、特攻、船が撃沈
-
-
8月ジャーナリズム=伊藤智永
2024/8/31 02:00 1014文字<do-ki> 小津安二郎の映画は退屈だ、どこが面白いのかと漏らす人は意外に多い。人物はあまり動かず、せりふも抑えられ、一見無意味な物や風景や無人の室内を写した「空ショット」がやたら挟まれる。 戦後の名作の多くが、娘(代表は原節子演じる「紀子」)の結婚をめぐり家族内に生じた小さな波紋を描くどれも同
-
進次郎政権になったら=伊藤智永
2024/8/24 02:00 1009文字<do-ki> 近未来政治「夢」日記。 <9月12日>自民党総裁選告示。かつてない候補者乱立になったが、現情勢は世論調査の人気ランキング通り事実上、石破茂元幹事長、小泉進次郎元環境相、高市早苗経済安全保障担当相が争う構図になるようだ。特に一番若い小泉人気は伸びている。 <9月×日>都市部の中学受験
-
金メダルの後の走り方=伊藤智永
2024/8/10 02:01 1033文字<do-ki> 「ヒトラーのオリンピック」と呼ばれ、第二次大戦前最後の開催となった1936年ベルリン五輪は、民族や人種差別、国威宣伝をめぐる駆け引きが渦巻いた。 その大舞台で、マラソン日本代表の孫基禎(ソンキジョン)は、オリンピック新記録で金メダルを取った。 当時、日本統治下の朝鮮人にして日本国民
-
戦後80年は始まっている=伊藤智永
2024/8/3 02:01 1017文字<do-ki> 80年前の8月、海軍通信兵、鎌田春一さんは日本の委任統治領・トラック諸島(現ミクロネシア連邦チューク諸島)で最大の水曜島(現トル島)にいた。25歳。 同年2月、2日間の米軍の空襲で絶対国防圏の同島拠点は壊滅。米軍は同諸島を放って進軍し、島に約1万5000人の日本兵が食料の補給なく捨
-
論破では説得できない=伊藤智永
2024/7/27 02:00 1012文字<do-ki> 「考える葦(あし)」や「クレオパトラの鼻」の警句で知られる17世紀フランスの思想家パスカルは、昨年が生誕400年。記念すべき年に合わせ、塩川徹也、望月ゆか両氏の訳による「小品と手紙」が1年前、岩波文庫から出た。 控えめなタイトル通り、39歳で早世した万能の天才の生涯を、残されたわず
-
-
「石丸現象」の失敗=伊藤智永
2024/7/20 02:01 1017文字<do-ki> 今や国家目標と化している出生率向上、その対策として、一夫多妻制導入や遺伝子操作を提案する自称「政治家」を初めて見た。東京都知事選で約165万票を獲得した石丸伸二氏である。 今すぐにではなく、100年先をめざし社会を変えると言い訳したが、どんな思考と理念の持ち主かは、これで十分。皮肉
-
「石丸現象」の冒険=伊藤智永
2024/7/13 02:01 1017文字<do-ki> 東京都知事選で約165万票を獲得した石丸伸二氏とは何者か。告示後、これは2位に入るかもしれないと調べ始めたが、むなしくなったのでもうやめた。 公約はあいまいなのに、ネット交流サービス(SNS)や動画サイトで若年層や無党派層の支持を集めるポピュリスト(大衆迎合主義者)。言うなら「民主
-
アベスガ政治の後始末=伊藤智永
2024/7/6 02:02 1010文字<do-ki> もし安倍晋三氏が存命だったら、岸田文雄首相に代わる最有力の首相候補だったのではないか。本人も取り巻きも3度目の政権に未練たっぷりだった。 歴史にif(もし)は禁物というが、そんなことはない。 確かに「ポスト岸田」政局のぐずぐずぶりに、「安倍さんがいたらなあ」と酒場で愚痴るのは無意味
-
東京のバカヤロー=伊藤智永
2024/6/29 02:00 1015文字<do-ki> 東京に生まれ育ち、仕事も大半が東京だった。我ながら偏りにじくじたる思いがある。一番残念なのは、東京愛が薄れたことだ。 昔は好きだった。今も文庫サイズの地図を持ち歩く。発行は30年前。古びても地名や道路は変わらないから用は足りる。 でも考えたら実用性より、細かな書き込みがたくさんあっ
-
湛山と角栄=伊藤智永
2024/6/22 02:00 1011文字<do-ki> 国会が終わった。言うべきことはあっても、言う気がしない。 政治資金パーティー裏金問題で明け暮れた半年間、派閥解消、国会での弁明、自民党議員の大量処分と続き、あげくが抜け穴法改正で閉幕。出来の悪い連続ドラマを見通してしまった気分だ。 大事な法案や条約はあった。子育て支援金制度や経済安
-
-
生きづらさの正体=伊藤智永
2024/6/15 02:00 1007文字<do-ki> 「生きづらさ」という言い方が広まったのは2000年代以降らしい。メディアの用例をたどると、当初は性的少数者や虐待などの見えにくさを平易に伝える工夫だったのが、ニートなどの就労問題で用いられ、やがて親子関係や女性・若者の悩み全般を語るのに広く使われだしたという。 だからだろうか。最近
-
親はあっても子は育つ=伊藤智永
2024/6/8 02:00 1002文字<do-ki> 私ごとで恐縮だが、亡き母はがむしゃらな人だった。60年前の東京の、まだ少なかった職業婦人。晩婚で立て続けに4人の子を産む。いずれも産後2カ月で職場に復帰。乳児保育の受け入れ時まで、何と出勤途中の見知らぬ家々を訪ね「この子を預かって」と毎朝搾りたての母乳と一緒に置いていった。今なら大
-
大軍拡の世に軍縮を探る=伊藤智永
2024/6/1 02:01 1022文字<do-ki> 戦車や空爆やミサイル発射の映像を見るのが日常になった。今じゃ「核兵器を使った世界紛争が起きるぞ」という大国指導者の威嚇に、またかと驚きもしない。「有事対応だ」と演説されれば、防衛費増も仕方ないなと承服し、この際憲法も変えなきゃと言われると、そんなものかと同意する。 この大軍拡時代に
-
出版を断られた名作=伊藤智永
2024/5/25 02:00 1007文字<do-ki> 石牟礼道子の「苦海浄土 わが水俣病」(1969年)は、初め岩波書店に断られた。理解する編集者がほぼ皆無だったらしい。 熊本県水俣市の一人の主婦が、知人の個人雑誌「熊本風土記」に書き継いだ初稿を、福岡市在住の記録作家が目に留め、これは広く読んでもらうべきだと考えて上京したのに、むなし
-
マイクを切ったのは=伊藤智永
2024/5/18 02:00 1008文字<do-ki> 水俣病患者・被害者らの発言中、環境省職員によってマイクの音が切られた出来事から2週間。ずっと考えている。自分は何に苦いものを感じたのだろう。 5月1日は、68年前に水俣病が公式確認された日。熊本県水俣市で営まれた犠牲者慰霊式に伊藤信太郎環境相も出席し、患者・被害者との懇談に臨んだ。
-

