連載
女の気持ち
女性読者からの投稿欄「女の気持ち」。「男の気持ち」とともに出来事や悩みなど「時代の心」を映しています。
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足の知らせ 福岡県大牟田市・中村裕子(塾講師・61歳)
2024/9/25 05:07 577文字昭和58(1983)年だったろうか。大学に通う私の元に、母から電話がきた。サイパンの遺骨収集団によって、母の叔父であるマサルさんの遺骨が発見されたと、厚生省(当時)から連絡が入ったのだという。 その前年は、なぜか家族の足のケガが相次いだ。父は自転車で転倒し、足首を骨折。母は段差につまずき、膝を縫う
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父の遺影 兵庫県宝塚市・川西佳代(主婦・65歳)
2024/9/25 05:06 536文字そろそろ子どもたちも巣立つ年齢になった頃、良い機会だと思い、家族写真を撮ることにしました。お宮参りや七五三でお世話になった写真館に予約を入れ、当日は父もお気に入りの帽子とジャケットを着て、笑顔で臨みました。父を中心に6人の家族写真。和やかな雰囲気の中、撮影は無事終了です。 すると、写真館の奥さんが
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ちゃめ 千葉県松戸市・花嶋八重子(英語講師・63歳)
2024/9/25 02:01 532文字9月の雨は寂しい。ひと雨ごとに秋になり、やがて冬が来る。 まだ暖かい、霧のように細かい雨が降る朝、猫のちゃめはいつものように玄関の前で「ニャー」と私を呼んだ。 「今日は雨だからやめたら」と声をかけた私を振り返りもせず、ちゃめは出かけていった。夕方ずぶぬれで帰って来るなあ、と思いつつ彼の後ろ姿を見送
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里芋の花 山口県下松市・岩本ひろみ(主婦・75歳)
2024/9/24 05:24 551文字8月末、裏の畑で里芋の花が咲いた。同じサトイモ科のミズバショウに似た黄色い花だ。私は初めて目にする美しい花に、暑さも忘れてしばし見とれていた。 昨年9月、美祢市で里芋の花が咲いたというテレビのニュースで、私は里芋が開花することを初めて知った。熱帯の東南アジアが原産地なので本州で開花するのは珍しく、
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家庭菜園 和歌山県すさみ町・林美智子(主婦・70歳)
2024/9/24 05:23 550文字少しだけ涼しくなった朝、いつものように犬の散歩をして、朝食を済ませたら、家の周囲の畑や庭を一回りする。 ああ、また雑草が成長している。玄関周りを抜いて、次は家の裏、そして畑へ。抜いても抜いても追いつかない。都会のように玄関を出たらすぐに道路というのは私には無理だが、田舎暮らしも、年を重ねるとともに
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いつか見たい絵 埼玉県川口市・田中雅子(主婦・79歳)
2024/9/24 02:01 530文字北九州市に住む同い年のいとこから、1冊の本が送られてきた。中学の同級生の夫で画家だった原田脩さんについて書かれた本だ。 原田さんが18年前に亡くなったことは風の便りで聞いていたが、その本を読み夫妻の波乱に富んだ人生を知った。 彼は大学受験に失敗した後、誰にも師事せず各地を放浪しながら絵を描いていた
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夫を失って 大阪府池田市・松下玲子(無職・81歳)
2024/9/23 05:11 549文字57年間共に過ごした夫が亡くなって7カ月が過ぎました。別れは、夫の病気に気づいてから1年4カ月後でした。 会社を退職した後の夫は得意の語学でボランティアをやり、コーラスや卓球を楽しみ、料理にも挑戦して、充実した老後生活はずっと続くように思っていました。政治や地球温暖化などの話題から身の回りの出来事
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暮らしを思う 川崎市麻生区・市塚照子(パート・67歳)
2024/9/23 02:01 526文字以前有料老人ホームで、掃除の仕事をしたことがある。個室にはお一人お一人のこれまでとこれからの暮らしが詰まっていた。 楽器でいえば若いころ弾いたであろうギター、教室に通っていたころの大正琴、今でも時折奏でているハープ。ほかにはランニングマシンや司馬遼太郎全集、リモートワークに使うパソコンなどなど。部
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切ない別れ 福岡市早良区・田中万紀子(主婦・77歳)
2024/9/22 02:01 560文字私が木彫りや古布を使ったちりめん細工にはまったのは、50代半ばからである。性に合っていたのか、徹夜もいとわずノミを振るった。旅には糸と針を持参する凝りようで、物が増える悩みはあるがやめられない。 庭には、私と同い年の夫のいとこからもらったスイレン鉢が数個鎮座し、増えるメダカに癒やされている。もぎた
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夏の終わり 鹿児島市・岡村梨枝子(主婦・72歳)
2024/9/21 07:33 571文字夏は苦手だ。それなのに夏の終わりに近づくと、ちょっと待ってと引き留めたくなるのはなぜだろう。明るい晩夏の夕刻。残照の庭にたたずむと、かすかな涼風が細い草を揺らして通り過ぎていく。毎年この時期になると懐かしく慕わしい幻のように浮かんでくる絵の情景がある。 大きな実がいっぱいなっている夕顔棚の下にむし
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祭りの熱気に 大阪市福島区・福西依里子(主婦・47歳)
2024/9/21 07:32 571文字8月下旬。燃えるような熱気の中、でき上がった焼きそばを大きな容器に受け取り、販売用に小分けする。紅ショウガを乗せ、青のりを振って輪ゴムをかけたら「お待たせしましたー!」と叫ぶ。だが、私は焼きそば屋ではない。 ここは築45年のマンション。年1回、自治会が催す納涼大会で私は焼きそばを売っている。住民と
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豪雨への備え 愛知県清須市・三宅節子(無職・83歳)
2024/9/21 02:01 538文字24年前、当地は豪雨に襲われた。我が家は道路から階段を1段上がって門扉を開け、再び3段上がって傾斜気味の通路を3メートルほど歩くと玄関に着く。降り続いた雨水はそこまで侵入してきたのだ。 窓から外を見ていると、避難所へ急ぐ人が私に忠告した。「早くしなさい。遅れるとヘリコプターでつり上げられるかもよ」
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1枚のはがき 滋賀県長浜市・吉井久代(添乗員・76歳)
2024/9/20 05:24 545文字私は旅行社の添乗員をしています。長野県へバス旅行をした時、お客様の1人が「トイレに行きたい」と言われ、一般道を走っていたので、通り道にあった宮田村役場にお願いしました。 玄関で声を掛けた男性の職員さんは「どうぞ」と優しく言ってくださいました。少し長引いていると、女性の職員さんが「大丈夫ですか」と声
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代用食 大阪市此花区・三谷裕子(無職・75歳)
2024/9/19 05:08 560文字久しぶりに「代用食」という言葉が頭に浮かんだ。宮崎県沖の日向灘で地震が起きて、南海トラフ地震臨時情報が出た日の夕方、建物の影ができる頃に買い物に行くため、重い腰を上げた。米びつの中身が残り少なくなっていたが、「明日、買えばいいか」と1週間ほどためらっていた。しかし、そういうわけにもいかなくなったの
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私の人生 福岡県香春町・山口和代(73歳)
2024/9/19 05:07 547文字極貧だった幼少時代。働き出して前向きだった青春時代。夫と巡り合い結ばれて幸せな時代。そして子供も長女、長男と恵まれ、大病もせずスクスクと育ってくれた時代。夫34歳、私29歳の時、自宅を建てた。小さな家だが、庭は私の夢だった芝生で洋風の家。夫は全て私の要望に応じてくれた。その芝生ではテントを張り、バ
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戦争を知る花 さいたま市緑区・長谷川美智子(無職・79歳)
2024/9/19 02:01 526文字7日本欄で紹介された「カンナの花の歌」、知っています。松島トモ子さんのきれいな歌声も。映画も「映画教室」という学校行事で見ました。 鹿児島市の実家の庭には、赤いカンナの花がいっぱい咲いていました。放っておいてもたくましく、所狭しと咲いていました。 今ではあまり、見かけることがないような気がします。
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物静かな人たち 兵庫県西宮市・田中照代(主婦・65歳)
2024/9/18 05:19 527文字今夏、長女一家が1週間滞在した後、次女一家もやってきて、わが家は民宿並みのにぎやかさに包まれた。普段は夫婦2人なので、余計に声にあふれた夏になった。 そんな中、並行して物静かな客人6人が15日間、わが家に滞在した。彼らは毎年夏にひっそりとやってきて、またひっそりと帰っていく。 124歳を筆頭に、9
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死ぬまで仕事? 栃木県那須塩原市・柴田道子(パート・69歳)
2024/9/18 02:01 556文字35年前、義父を介護するために息子3人を連れてこの地に引っ越してきました。夫は東京から週末に帰ってくるという生活が始まりました。 ところが家を増築して間もなく、義父は亡くなってしまいました。一人っ子の夫は実家への思いが強く、東京に家族を戻すことなどみじんも考えませんでした。 やがて息子たちは巣立ち
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じーちゃん似 大阪府枚方市・河口智子(薬剤師・40歳)
2024/9/17 05:13 552文字2歳の息子は生まれた時からおじいちゃんによく似ている。息子にとってのおじいちゃん、私の父は5年前に亡くなった。「令和」の元号が発表された日には入院していたことを、ついこの間のことのように覚えている。 葬儀では、父の仕事仲間が父の写真を飾ってくれた。そのうちの1枚が、ビールを片手に満面の笑みを浮かべ
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目指せ人気者 東京都目黒区・橋本千枝子(会社員・77歳)
2024/9/17 02:00 502文字数年前、親しい友人から言われた。 「将来、介護付き老人ホームに入所するときには、何か『一芸』を持っていると人気者になれるわよ。歌やダンス、楽器、手芸なんかいいけど、あなた何かできる?」 そう言われて「ない。何もできない」と答えると「今から準備したほうがいいわよ」と、あわれみの混じったアドバイスが返
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