連載
憂楽帳
50年以上続く毎日新聞夕刊社会面掲載のコラム。編集局の副部長クラスが交代で執筆。記者個人の身近なテーマを取り上げます。
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火水木に込めた思い
2024/9/25 13:02 451文字「火水木」と書いて「ひみずき」と読む。曜日ではなく、大阪府吹田市で親しまれているご当地遊びの呼び名だ。火、水、木の3チームに分かれ、火は木を、水は火を、木は水を追いかける。要は三つどもえの鬼ごっこだ。 相手にタッチされると相手陣地に捕らわれるが、味方にタッチしてもらえれば復活できる。捕まえた人数が
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道具に宿る魂
2024/9/24 13:09 471文字道具に対する書家の熱い思い入れ。それを、取材で強く感じたことが何度もあった。 まず筆の話。多くの書家や画家は長年愛用した筆を寺や神社でたきあげてもらい、供養する。群馬県富岡市で松雲書道研究会を主宰する毎日書道展審査会員の横尾隆雲さん(77)は高さ約2メートルの石を書道発祥の地・中国から取り寄せて「
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観光と天守復元
2024/9/21 13:02 448文字熊本県出身の私が小学校に入る前、生まれて初めて見た天守は熊本城ではなく、佐賀県の唐津城だった。白壁の美しさが印象に残り、何度も夢に見た。大人になって、その天守が実は存在したことがなく、戦後に建てられたと知り、何だかだまされた気がしたものだ。 観光誘致などを理由に、天守を復元する動きが全国的に広がっ
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「青い海」の輝き
2024/9/20 13:15 447文字「復帰前は土着のものに眼(め)を向け、守ろうという動きがあった。ところが復帰したとたんにそれを投げ出してしまって、本土ナイズするのが正しいという錯覚が横行している」 1973年9月発行の月刊誌「青い海」第26号に掲載された「沖縄の新聞はなぜ面白くなくなったのか」がテーマの覆面座談会。ある詩人は答え
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談志の田んぼ
2024/9/19 13:09 461文字五代目柳家小さん師匠が「うまいねえ、これでインスタントかい?」とつぶやいた永谷園「あさげ」のCMは、50年前の1974年だから、知らない人の方が多いだろう。師匠の「うまいねえ」の一言は、誰よりも説得力があった。 食に関して落語家の師匠方はこだわりがある人が多い。といっても、高いお店はひいき、つまり
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子供神楽を大阪万博で
2024/9/18 13:03 457文字「もっと練習して、僕も万博で踊りたいな」。島根県浜田市の神社でけいこをする大尾谷(おおだに)子供神楽団の岩本佑太さん(10)は、来年の大阪・関西万博での石見神楽公演に期待する。日本神話を題材に、華麗な衣装と表情豊かな面を付けて舞う。1970年の大阪万博でも上演され、当時1~2頭の大蛇が普通だったヤ
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脱「しょっぱい県」へ
2024/9/17 13:10 460文字「あ、しょっぱい」。秋田の飲食店で、そう感じることがある。県外出身の人から「店に入るたびに身構える」と聞いたこともある。雪の多い冬を乗り切るため野菜を塩蔵した名残、また農林業や鉱業が盛んで作業中に汗をかくため濃い味が好まれた、といった背景があるという。多くの客がそうした味を求めるため、店側もつい濃
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ウイグルの鎖
2024/9/14 13:12 439文字中国・新疆ウイグル自治区・カシュガルを訪れた際、屋台や食堂で調理するウイグル族の人々の持つ刃物が鎖でつながれているのに気づいた。「数年前から始まった」とのことだが、理由を聞くと、皆表情をこわ張らせて沈黙した。 自治区では2009年7月にウイグル族による当局への抗議デモが大規模騒乱に発展。当局はそれ
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墨字の手応え
2024/9/13 13:11 441文字「毎日の毎。日曜日の日。新聞の新、新しい。新聞の聞、聞く」。点字の週刊新聞「点字毎日」の記者で全盲の私が、パソコンで「毎日新聞」と書いた時にスピーカーから聞こえてくる漢字を説明する音声だ。数字やアルファベット、句読点、カッコも読み上げる。キーボードの文字は見えないので、まさにブラインドタッチになる
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年齢表記とエージズム
2024/9/12 13:13 451文字記者になって21年。今さらながら悩んでいる。取材相手の年齢を書くか、書かないか、だ。 新人時代、取材相手の生年月日を聞き、年齢を書くのは基本だと教えられた。その人が生きてきた時代が分かれば、記事はより多面的になる。でも3年半前から文化面と芸能面を担当するようになり、迷いが生まれた。文化人や芸能人の
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輪島塗にかける思い
2024/9/11 13:07 456文字工房を兼ねた住まいは壁にひびが入り、窓枠は応急のベニヤ板が打ち付けられたままだ。石川県輪島市の蒔絵師(まきえし)、篠原今日子さん(41)は能登半島地震の後も輪島塗を作り続ける。 出身は大分県中津市。実家の寺に漆塗りの仏具があり、漆器は身近だった。転機は大学時代、デザインを学ぶために留学したイタリア
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「オプアリ」の次に
2024/9/10 13:03 462文字サッカーJリーグと並んでプロ化で地域活性化を目指すバスケットボールBリーグ。群馬県太田市を本拠地にする群馬クレインサンダーズはリーグ1部B1で4季目を迎える。 2023~24年シーズンは新しい舞台ができた効果で入場者数が増えた。23年春、市が総工費80億円超をかけ新設したオープンハウスアリーナ太田
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家にGが出たら…
2024/9/9 13:26 459文字この夏、東京・上野の国立科学博物館で「マニアック」を標榜(ひょうぼう)する昆虫の特別展を見学した時のこと。展示を監修した科博の昆虫研究者5人を紹介するパネルに、こんなアンケートがあった。家にGが出たらどうしますか?――。 Gとは言わずと知れたゴキブリの隠語。「殺処分。貴重な種が家に入って来るとは思
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少年の心
2024/9/7 13:14 448文字怪獣のように見えるほど接写したオオカマキリ、羽を広げた瞬間のナナホシテントウ。長崎県平戸市在住の昆虫写真家、栗林慧(さとし)さんは「アリの目を持つ写真家」と呼ばれる。 内視鏡を改造した超ワイドな「虫の目カメラ」や、地上数ミリから撮影できる「アリの目カメラ」などを自ら開発。2006年に科学写真のノー
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文士劇
2024/9/6 13:11 442文字関西と九州の作家を中心とした文士劇の旗揚げ公演が11月16日、大阪市内で開かれると知り、福岡に住む私もチケットを手に入れた。 朝井まかてさん、東山彰良さん、澤田瞳子さんら、福岡で書き続けた直木賞作家、葉室麟さん(2017年死去)と親しかった作家たちが舞台に立つ。私も取材で知り合った葉室さんの誠実で
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現代人に通じるエンタメ
2024/9/5 13:06 460文字「落語はおじいちゃんが演じておじいちゃんが見るもの」というのは遠い昔の話。最近、東京や横浜、大阪、神戸の寄席をのぞくと、演者も客も若手、中堅世代が目立つ。若手を育てなければ将来の発展はない。歌舞伎や新劇が世代交代や集客に苦労する一方、演芸界は新型コロナウイルス禍の波を乗り越えたようだ。 なぜ寄席が
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トキ放鳥に懸けた20年
2024/9/4 13:05 464文字「やっと、ここまできた」。国内で一旦絶滅した国の特別天然記念物トキ。島根県出雲市ではばたく姿を見たいと約20年前から活動を続けるNPO「いずも朱鷺(とき)21」の原田孟(つとむ)理事長(86)は感慨深げだ。地元で放鳥する目標の2027年度が近づいている。 野生のトキは新潟県佐渡島で500羽以上に増
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ジャンボウサギ
2024/9/3 13:06 460文字秋田県の内陸で体重10キロ、体長50センチ近くに成長する真っ白な「ジャンボウサギ」が飼育されている。「秋田犬」「比内地鶏」と並ぶ県固有種で、正式には「日本白色種の秋田改良種」。終戦前は軍隊の需要もあり、食用や毛皮目的で盛んに飼育された。しかし高齢化などで飼育農家は減り、近年は地元でわずか10世帯ほ
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大震災と二つの墓
2024/9/2 13:10 464文字文豪・森鷗外は「石見(現在の島根県)人森林太郎トシテ死セント欲ス」と遺言した。葬られた向島・弘福寺(東京都墨田区)には当時、旧津和野藩主・亀井家の墓があった。森家は代々亀井家に仕えた医師で、鷗外の次女は「父は藩主の御墓所近く眠りたかった」と回想する。 ところが、死去翌年の1923年9月1日、関東大
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キリギリス
2024/8/31 13:06 442文字北京市内の中心部に点在する古い町並み「胡同」を歩くと、突然「ジィー、ジィー」という音が聞こえてきた。民家の軒先に竹籠がぶらさげられており、中に大きな虫がいる。「螽斯(キリギリス)」の鳴き声だった。 中国で虫をめでる風習は古く、北宋の詩人、王安石の漢詩にも虫を題材としたものが登場する。北京でも暑い時
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