なうまん。 なうまん。
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「今から、歯を割りますね。」

皆さんは、

歯を割られたことってありますか?(遠い目)

親知らずの抜歯って、一つの人生イベント。
「あっさり抜けました〜」で終わる人もいれば、とんでもない苦い記憶を抱えている人もいる。

私の場合、あの日は、忘れられない一日になった。

10年以上前の話になります。
思い出すことで、黒い記憶を祓いたい。


その日、私は親知らずを抜くため、長年通っている歯医者さんにいた。

ずっとお世話になっている歯科医師。
初めて会った日から思っていた。

「めちゃ徳井。」


チュートリアル徳井に、びっくりするほど似ている。

常に無表情で、淡々としている。

「近代バーベキューの父」とか「チリンチリン」とか絶対に言わない。

必要最低限の言葉だけを発し、笑顔は一切ない。
夫婦仲も冷え切っているのだ(※想像)

ただ、感じが悪いわけではない。
腕は確かだと思うし、信頼できる。

徳井は、歯の治療技術のみに能力を全振りしている人間なのだ。(失礼)

「親知らずを抜く必要がありますね」
検診のたびに徳井が言う。

気は進まないが、彼は無駄なことを言わない人間だ。
抜く必要があるのだろう。

いずれ抜く日が来るのであれば、彼にお願いしようと思っていた。
この歯治療特化型タイプの人間ヒューマン。(だから失礼笑)

そうしてこの日、私は診察台に寝転んだ。


麻酔をし、治療開始。

通常時と違う空気。助手の方が二名。
いやでも緊張感が高まる。

徳井は優しく言ってくれた。
「痛かったら手を上げてくださいねー」

いつものことだが、言葉に抑揚がない。
ただ、その安定感が良い。安心だ。

人が人を信じるって、こういうことなんだと思った。

開始10分。

痛い。

えっ、麻酔してるのに?
もしかして麻酔が効いていない??

だとしたら大変だ。とんでもないことになる。

徳井も人の子。
ミスすることもあろう。

私は申し訳なさげに手を上げた。

……
止まらない。

あれ?
見えてない?

もう一回。
手を上げる。

……

止まらない。
いやいやいや。

徳井。

徳井。

見えてる?

徳井!

今!  私!  めちゃくちゃ手を上げてる!

徳井が淡々と言う。
「少しだけ我慢してくださいねー」

だったら最初から言ってくれよ!
「痛かったら手を上げてください。やめはしませんけどね。」って!

「飛べやしないけどね」が浮かんだ。

体感で、1時間以上経過。
あれからも数度手をあげたが、全て却下され続けていた。

徳井との信頼関係はすでに破綻している。

早く終われ早く終われ早く終われ・・

グググググッ……

徳井がとんでもない力を込めている。
成人男性の本気の力。
が、親知らずは抜けない。

手こずっている。

あのパーフェク徳井に誤算が生じている?

麻酔の効果って何時間続くの??
切れどきってわかるの?

不安になる。

その込められた力、麻酔なしで受けきったら死んでまうよ泣。
そう思ったら、体に力が入る。

徳井がふっと一息ついて、さらっと言った。

「歯を割りますねー」


えっ?

ちょっと待って。待って。

割る?どうやって?

歯って、そんなカジュアルに割るものなの?

ジャックバウアーの雑な拷問でも見たことがないんだけど?

そこからはもう地獄だった。

ゴリ。
メキ。
ギリギリギリ。
メメタァ。

脳に、頭蓋骨の内側に、直接響く音。
歯から聞こえてはいけない効果音のオンパレード。

視界は奪われており、どのような器具が使われているかも全くわからない。

きっと、こんな

圧倒的、恐怖。

このマッドサイエンティストは(失礼笑)、

確かに!  今!  私の歯を!  割っている!

「ふぐうぅぅぅ」


今までの人生で出したことのない声が出る。
全身が硬直し続ける。ブリッジでもするのかというくらいのけぞる。
涙が止まらない。

誰かこのバウアーを止めて泣。



どれだけの時間が経ったのだろう、患者は私だけになっていた。

私の治療が終わるまで会計が締められないのだろうか、手持ち無沙汰にしている多くの人間の雑談がヒソヒソと聞こえてくる。

妙に笑い声が聞こえる。

「はい、終わりました」、徳井が言う。
その顔は、穏やかだった。

私は心も、目も、死んでいた。
身体に力が入らない。

悔しい。涙が出る。
徳井が恨めしい。つい無言で睨んでしまう。

「なうまん。君・・」
気づけば、途中から代わった助手の一人は中学校の同級生だった。
仲が良かった時期もある女子。

「ひ、久しぶり。こ、、ここで働いてるんだね」

い、い、今の姿を見ていただと??

恥ずかしい恥ずかしい。。

情けない声をあげ続けたうえ、感謝すべき医師を睨む。
そんな最低すぎる振る舞いを、よりによって知り合いに。

会計までの時間が永遠に感じる・・。

消えたい消えたい。。

徳井は、エレベーターが閉まるまで見送ってくれた。
その表情から、何を考えているかは全くわからない。

夜、眠れなかった。
顔の腫れも、心の腫れもひどい。

あの日の私は、人間が出せる限りの情けなさを全部出し切っていた。

私は、" カス人間 " でした・・。



久々に、特級なやつをひとつ整理することができました🙇。(できたのか?笑)

今でも、地元への帰省に合わせて検診の予約を取るくらい、この先生のことを信頼しています✨。・・向こうは、ヤバい患者リストに入れてるかもですが。

本日も読んでいただきありがとうございました🙇🙇。



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