「海事産業のアンモニア元年」…伊藤忠・住商が船舶向け燃料の供給網整備、商業化へ着々
アンモニア燃料船のサプライチェーン(供給網)整備に向け、大手商社の動きが活発になってきた。伊藤忠商事はアンモニアバンカリング(船舶への燃料供給)拠点を拡充。シンガポールに加え、需要動向を見て欧州でも2030年ごろに整備するとみられる。住友商事もシンガポールでアンモニアバンカリングの実証に取り組む。国際海運における脱炭素化は、中長期の重要テーマ。各社が需要の変化に備えた体制づくりを急ぐ。(編集委員・山岸渉)
伊藤忠はアンモニア燃料船の開発からアンモニア燃料のサプライチェーン構築まで取り組む「統合型プロジェクト」を進めている。伊藤忠が先行する一つが、アンモニアバンカリングの領域だ。27年9月にアンモニアバンカリング船の完成を予定しており、シンガポール拠点での28年の実用化を目指す。
また、アイルランドのペニンシュラ・ペトロリウムと欧州でアンモニアバンカリング事業を手がける合弁会社を設立。欧州ではオランダ・ロッテルダムとベルギー・アントワープ、スペイン・アルヘシラスの各港にバンカリング拠点を整備する考えだ。さらにスエズ運河や日本、パナマなどでの拠点整備も視野に入れる。
アンモニア燃料の製造拠点整備にも注力する。30年にインドで立ち上げを予定する拠点は、年30万トンの生産能力を持つ見込み。サウジアラビアでも、同国のACWAパワーと組んでアンモニア燃料の生産を検討する。
アンモニアは燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出しないため、ゼロエミッション(排出ゼロ)船向け燃料の候補とされる。国際海運では国際海事機関(IMO)におけるネットゼロ枠組みの採択延期などがあったものの、50年に温室効果ガス(GHG)排出をネットゼロにする目標自体は変わっていない。
これを踏まえ、住友商事も「海運の脱炭素化が中長期的に重要であるとの認識は変わらない」とし、アンモニアバンカリングなどへの取り組みを加速させる。その一例が、既存のアンモニア輸送船を用いて日本郵船や川崎汽船とシンガポールで進める実証だ。
同実証は経済産業省の補助金に採択された。実証を通じてアンモニアバンカリングにおける安全基準の策定やオペレーションの最適化を図り、29年ごろの本格的な商用化を目指す。米国において、蓄積した知見やノウハウを生かせるとみている。
26年には韓国で世界初のアンモニア燃料船が竣工。伊藤忠商事グリーン・イノベーション営業室の赤松健雄室長は26年を「海事産業のアンモニア元年」と分析し、アンモニア燃料船が商業化に移行する重要な年と捉える。他の日系商社でも、環境負荷の低いアンモニアを電力燃料から船舶燃料にも展開させようとする動きが出ている。各社は本格的なゲームチェンジを見据え、体制整備を進める。
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