無人航空機・粉体水素…福島イノベ機構、新産業創出へのカギ
福島イノベーション・コースト構想推進機構(福島市)が、脱炭素やロボットなどの新産業創出に挑戦している。ベンチャー育成や企業誘致で産業集積を進め、福島ロボットテストフィールド(福島県南相馬市)などの先端技術実証の場を提供してきた。技術開発では一定の成果が出ているものの、事業化が課題だ。先端技術で事業を成り立たせるには福島県内の需要だけでは足りず、域外の需要を獲得する必要がある。東日本大震災から15年。次の課題が見えてきた。(松本理志、小寺貴之)
「企業進出や雇用創出などでは一定の成果は上がっているが、自立的・持続的な産業発展の実現はまだ道半ばだ」と福島イノベーション・コースト構想推進機構の斎藤保理事長は振り返る。福島イノベ機構は国や福島県をはじめ、関係機関と一体となって産業基盤構築に取り組んできた。「ロボット・ドローン」や「エネルギー・環境・リサイクル」「農林水産業」などの重点6分野を設定し、技術開発からビジネス支援まで一貫してサポートしてきた。
無人航空機を開発するハマ(福島県南相馬市)の金田政太社長は「技術開発や実証支援も優れているが、何より補助金が充実している」と評価する。同社は支援を受けて量産工場を2028年に本格稼働させる計画だ。民生用と防衛用の両方の型式認証取得を目指している。
同社の飛行艇型無人機は水面から飛び立てる点が特徴だ。能登半島地震では沿岸から離水して被災地の高解像度画像を撮影し、自衛隊や消防、警察などに提供した。アクセス方法が限られる被災地の調査に貢献する。
OKUMA TECH(同大熊町)は、小型の燃料電池や水素製造装置を開発する。産業技術総合研究所の福島再生可能エネルギー研究所(FREA)に水素製造装置が採用された。現在は水素化ホウ素ナトリウムを水素キャリアとして使う粉体水素カートリッジの事業化を進めている。李顕一社長は「常温常圧で運べる。極低温や高圧容器がいらない水素インフラになる」と展望する。建設機械や農業機械など、水素ステーションにアクセスしづらい地域で使う大型機械での水素活用に提案する。35年に200億円の売り上げを目指す。
会沢高圧コンクリート(北海道苫小牧市)は、福島県浪江町に研究開発と製造を担う福島RDM2センターを設置した。総工費30億円のうち3分の2の助成を受けた。大橋未来執行役員は「研究開発と製造だけでなく、マーケティングまでやる。洋上風力発電の浮体製造を核として、アンモニア生産や海藻栽培による脱炭素を進めたい」と意気込む。
このように野心的な企業を集積させることには成功している。課題は新技術の実証から事業化へと進む支援だ。福島県内の需要だけでは事業を成り立たせるには小さい。社会実装に向けて域外の事業者を巻き込む必要がある。
福島イノベ機構の植木健司事務局長は「次の実装フェーズでは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などの産業化支援が欠かせない」と指摘する。福島イノベ機構とNEDOは連携を始めている。福島勉強会に参加したNEDOの神田晃佑主任は「福島こそ、NEDOのイノベーション加速支援を実践する場」と気を引き締める。機関連携で支援と支援がつながりつつある。産業を創出できるかが注目される。