虚辞
虚辞(きょじ;英語: Syntactic expletive)とは英語の"it"など、文の中に用いられる、それ自体は意味のない語の総称である。
文法的に正しい文を作るのに必要な文法的虚辞と、文法的には不要であるが話者の気持ちを表現するなどの目的で用いられる修辞的虚辞に分けられる。以下のような例がある。
文法的虚辞
編集非人称主語
編集目的語の it
編集it ... that 節、it ... to 不定詞
編集助動詞 do
編集There
編集存在を表すthere 構文では、文頭のthere は「そこに」という具体的意味を失って、存在文を示す標識となっている。(例: "There are six cars there." - 「そこには6台の車両がある」このように「そこに」の意味を表すには文末にもうひとつthereを必要とする)これは、主語の右方移動に伴い項位置に現れた虚辞とも解釈される。同じような存在文における虚辞としてはフランス語の "il y a ..." のil y、イタリア語の"c'è(=ce + è) ..." のce、ドイツ語の"es gibt ..."のesなどがある。
修辞的虚辞
編集虚辞の ne
編集フランス語の ne は本来否定を示す語であるが、意味的に否定ではない文に現れることがあり、これを虚辞の ne という。ne はなくてもよく、意味は変わらない。これは論理的な否定ではなく、否定的な思いを表現するためと説明される。接続詞 que のあとに用いることが多い。なお通常のフランス語の否定文では ne と共に pas などの否定語を用いるが、虚辞の ne は単独で用いる。
- 比較で「そんな程度ではない」という気持ちを示す。
- Il est plus rigide que vous (ne) pensez. 「彼はあなたが思うよりも頑固だ」
- 接続法で「もしかしたら」という気持ちを示す。
- J'ai peur qu'elle (ne) pleure. 「彼女が泣かないか心配だ」
日本語の、「ではないかと思う」(基本的には「だろうと思う」と同じ意味だが、積極的でないことを示す)という言い方もこれに似ている。
その他
編集このほか、意味のない語を付け加える修辞技法を虚辞ということもある。