杖
杖(つえ)は、体を支え、歩行の助けとするために用いられる細長くまっすぐな、手で持つのに適した道具[1]。長くて自分の腰の高さ程度のもので、木製、竹製である場合が多い[1]。稀に象牙や金属で作られることもある。杖は権威の象徴とされたほか、蛇や獣を追い払う道具さらに武器としても使われた[2]。また、白杖は視覚障害者の安全の確保のためにも用いられる。


歴史
編集象徴
編集権威
編集宗教
編集魔術
編集
フィクションの魔女や魔法使いに特有の魔法の呪文に対して効力を持たせるための小道具として「魔法の杖」が登場することが多い。所謂「杖」より短い、指揮棒程度の長さの杖もある。
各種のファンタジー作品で魔法使いを象徴する道具のひとつとして用いられる事が多い。コンピュータゲームやテーブルトークRPGなどで複数の種類が登場する際には、形状や大きさによって「ワンド」「ロッド」「スタッフ」などに分類される場合もある。
魔法少女を題材とする作品においては、変身する際の魔法の道具の一種として「マジカルステッキ」が登場する。この場合ステッキの用例が比較的多いが、ロッドなどの用例も見られる。
用途
編集礼装
編集医療・介護
編集老人などが持つ歩行杖の他、視覚障害者などが使用する白杖、医療用の松葉杖(ロフストランドクラッチも)なども杖の一種である。折り畳み式もある。接地点の数を複数にした三点杖(三点支持杖)や四点杖(四点支持杖)もある。杖に肘当てがついた杖もある。
登山
編集技芸
編集スイングジャグリングの道具として、木製・金属製・プラスチック製の杖が用いられる場合がある。暗闇での演出効果を高めるため、杖に照明が施されることもある。この種の技芸はスタッフトワリング(Staff twirling)と呼ばれる。
奇術
編集武具
編集刑具
編集古代(6世紀頃から平安時代前期の遣唐使中止の頃までと推定)、杖罪(大宝律令以後は単に「杖」)と呼ばれる罪人を打つ刑罰や、拷問に用いる棒のことも、杖と称していた(刑罰に用いる場合は常行杖、拷問に用いる場合は訊杖(じんじょう)といった。律令の規定では、長さは3尺5寸=約1mと定められていた)。罪人を杖で打つ拷問は、刑部省の役人の立会いのもと、背中15回・尻部15回を打つもので、罪を自白しない場合は次の拷問まで20日以上の間隔をおき、合計200回以下とする条件で行っていた(ただし謀反など、国家にかかわる犯罪に加担していた場合は合計回数の制限はなかったと推定される)。奈良時代に橘奈良麻呂の乱で、謀反に加担していた道祖王、黄文王、大伴古麻呂、小野東人などが長時間の拷問の末、絶命したのは有名だが、他にも承和の変(伴健岑、橘逸勢らが流罪)、応天門の変などの政変でも容疑者を杖で打ち続ける拷問があったといわれる。
仕込み杖・仕掛け杖
編集杖の機能以外の機能を持った杖のことである。バイオリン、望遠鏡、ウィスキーのボトルとグラスなど様々なものがある[2]。英語ではシステム・ケーン、ガジェット・ケーンと呼ばれる。
日本では、時代劇映画『座頭市』の主人公・市の得物である刀の仕込まれたものや、皇太子時代の昭和天皇が杖に仕込まれた散弾銃によって狙撃された虎ノ門事件が有名である[4]。
細いフラスコを仕込んだ杖や腰掛になる杖、望遠鏡を仕込んだ杖、傘を仕込んだ杖、カメラ用一脚や三脚になるトレッキング・ポールは現在も生産されている。キャサリン・ダイクの著書 Cane Curiosa, from Gun To Gadget には、過去に生産されていた、カメラを仕込んだ杖、カメラ用三脚を仕込んだ杖、ハンガーになる杖、化粧用コンパクト・日除け用ファンなどを仕込んだ女性用の杖、ハーモニカ・リコーダーなどの楽器を仕込んだ杖、サイコロ・水鉄砲など遊具を仕込んだ杖、地図・新聞を巻き込んだ杖など、様々な機構の杖が掲載されている。
高齢者の夜間の安全を考えてLEDライトを内蔵した物や、ハイキング等で使う事を想定して方位磁石を内蔵したトレッキングポールなど合理的な組み合わせもみられる。
慣用句・関連する表現
編集- 「杖にすがる」、「転ばぬ先の杖」、頼りにするもの意味で「老後の杖とする」 というような用いられ方をする。
- ソースティン・ヴェブレンの『有閑階級の理論』では、必要もないのにこれ見よがしに手にする杖、ステッキを顕示的な消費として、無用なものに敢えて消費する例として引き合いに出された。
- 「杖とたのむ」という言い回しの場合は頼りにするものの例えとして杖という言葉を使っている。
- 頬杖は手を頬やあごに添えて自分の顔をささえること。考え事をするときや、ときに居眠りする場合に人はこの姿勢をとることがある。
脚注
編集- 1 2 “コトバンク - 杖・丈(読み)つえ 大辞林 第三版の解説”. 2019年4月9日閲覧。
- 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 柳谷廣之 (2013). “布とステッキの素敵な関係 ——ステッキのおしゃれな世界——”. 繊維学会誌 69 (12): 439-443. doi:10.2115/fiber.69.P_439. (
要購読契約) オリジナルの2019-12-10時点におけるアーカイブ。 2019年12月10日閲覧。. - ↑ 古川不可知、「ネパール・ソルクンブ郡、エベレスト南麓地域における荷運びの苦痛と希望」『南アジア研究』 2017年 2017巻 29号 p.144-177 doi:10.11384/jjasas.2017.144, 日本南アジア学会
- ↑ ただし、この時犯人が使用した仕込み杖は護身や暗殺を目的として作られた物ではなく、本来は猟銃である。所荘吉『図解古銃事典』(雄山閣、1996年)222-223ページ参照。



