ナフサ
ナフサ(英: naphtha)とは、原油を常圧蒸留装置によって蒸留分離して得られる製品のうち沸点範囲がおおむね30 - 230 ℃程度の炭化水素混合物である[1]。粗製ガソリン[2]、直留ガソリンなどとも呼ばれる。主に炭素数(分子鎖長)C8からC10の範囲の芳香族炭化水素などからなる[3]。
ナフサのうち沸点範囲が30 - 140 ℃程度のものを軽質ナフサ[1]といい、日本では石油化学工業でのエチレンプラント原料として多く使用される。輸入原油を国内で精製して製造するものと、ナフサとして輸入するものが相半ばする。
沸点範囲が40 - 230 ℃程度のものを重質ナフサ[1]といい、接触改質装置におけるガソリンおよび芳香族炭化水素製造の原料としての使用が中心である。これは重質ナフサが炭素原子を6個以上持つ炭化水素を主成分としているため、接触改質における脱水素環化反応によって芳香族炭化水素を多く生成するからである。
また、輸入されるナフサの中には、軽質ナフサと重質ナフサが混じっている(沸点範囲が広い)ものがあり、それらはフルレンジ・ナフサ(full-range naphtha)と呼ばれる。
用途
編集語源
編集元来は単に原油を意味する言葉で、ギリシャ語の「νάϕθα (naphtha)」、ラテン語の「naphtha」に由来するが、おそらく紀元前18世紀のアッカド語の「napṭu」まで遡ることができる。他にもペルシャ語で「湿っていること」を意味する「naft」に由来するという説もある[8]。
石油(petroleum)や灯油(kerosene)、ガソリンなどと異なりナフサの語源だけがインド・ヨーロッパ語族よりも古く遡ることが出来る。灯油やガソリンは用途に応じて名前がつけられていったが、結果として利用価値のない留分にナフサの名称が残ることとなった[9]。
なお現在では脱炭素化で燃料としての石油(灯油、ガソリン)の価値が低下し、相対的に化学原料としてのナフサの価値・価格が上昇すると予想されている[10]。
関連項目
編集- ナフサショック、石油原料節約パッケージ - 2026年に中東情勢の悪化に伴う、ナフサ供給の不安定化により、食品包装の仕様を一時的に変更したり、販売自体を休止にする事例が相次いだ[11]。
脚注
編集- 1 2 3 “ナフサ”. 石油便覧. JX日鉱日石エネルギー. 2026年5月21日閲覧。
- ↑ 「三井化学や三菱ケミカル、中東外からナフサ代替調達 ホルムズ封鎖で」『日本経済新聞』2026年3月30日。2026年3月30日閲覧。
- ↑ “石油ナフサ”. 職場のあんぜんサイト. 化学物質. 厚生労働省 (2009年3月30日). 2022年6月18日閲覧。
- ↑ 府川伊三郎 (2024年3月). “バイオマスプラスチックとバイオマス化学の動向(上)” (PDF). 旭リサーチセンター. 2026年4月12日閲覧。
- ↑ “燃料の比較”. hakukin.net. 2025年12月5日閲覧。
- ↑ “ソルベントナフサ中沸点#100(ソルベントナフサ、コールタールナフサ)|三協化学株式会社|工業用の有機溶剤・薬品メーカー”. Sankyo. 2025年12月5日閲覧。
- ↑ “公益社団法人石油学会|石油豆知識[溶剤]”. www.sekiyu-gakkai.or.jp. 2025年12月5日閲覧。
- ↑ Oxford English Dictionary
- ↑ “ナフサの考古学 vol. 1 ナフサはなぜ「なふさ」っていうんだ?”. plabase.com. 2025年12月5日閲覧。
- ↑ “ナフサの考古学 vol. 2 ナフサはなぜ「なふさ」っていうんだ?”. plabase.com. 2025年12月5日閲覧。
- ↑ 「食品包装、デザイン変更相次ぐ ナフサ不足を懸念、販売休止も」『時事通信』2026年5月19日。2026年5月20日閲覧。
外部リンク
編集- 素材産業|中東対応にかかる資料|ナフサの状況について (PDF) - 経済産業省
- ナフサとは - 石油連盟
- ナフサとは?ナフサ価格とは?知っておくべき基礎知識 - 化学工業日報社
- ナフサ分解工場 - 石油化学工業協会
- 石油化学用原料ナフサ - 石油化学工業協会
- 『ナフサ』 - コトバンク
- 統計FAQ 10C-Q03 ガソリン・ナフサ、アスファルト等石油製品の需給状況 - 統計局