ドラマ『月夜行路』原作者と脚本家の密なやりとりによって実現したミステリーエンターテインメント。楽しく「文学」に触れるドラマ制作のねらい【プロデューサー水嶋陽インタビュー】
更新日:2026/6/12

ドラマ『月夜行路 ―答えは名作の中に―』(日本テレビ系)は秋吉理香子氏の小説『月夜行路』(講談社文庫)、『月夜行路 Returns』(講談社)を原作にした文学ロードミステリー。銀座のバーのママとして働くトランスジェンダー女性の文学オタク・野宮ルナ(波瑠)と、自身の選択に後悔を抱える専業主婦の沢辻涼子(麻生久美子)が出会い、旅先で起きる事件を解決していく。
文学と謎解きを題材にして描かれる本作。プロデューサーをつとめる水嶋陽氏に作品の魅力や原作者と脚本家の密なやりとりが実現した経緯、そして、6月10日夜10時に放送される最終話の見どころを伺った。
ハードルの高い「文学」を楽しく学べる作品に
――最初に本作をドラマ化しようと思ったきっかけを教えてください。
水嶋陽さん(以下、水嶋):最初は「面白い本があるよ」と紹介されたことがきっかけです。僕は『THE突破ファイル』『カズレーザーと学ぶ。』(日本テレビ系)といった教養バラエティを担当していたこともあって、もともと新しい知識に触れることに興味があり、本を読んだときもすごく知的好奇心をくすぐられました。文学の知識で謎を解いていく物語も新鮮で、1話ごとの連作になっているので連続ドラマとの相性もいい。大阪で文豪にゆかりのある場所を巡りながら、毎話、さまざまな文学の名作も学べるので、いろいろな要素を楽しんでもらえる作品になると思いました。
――本作は「文学×ミステリー」という一見、難解なジャンルでありながら、深い知識がなくても入り込みやすい物語になっています。ドラマ化する際に、何か意識していたポイントはありますか?
水嶋:幅広い視聴者の方々に向けたテレビドラマという特性を考えると、当初は「文学の要素をあまり前面に出さずに、あくまでルナと涼子のシンプルな旅物語としてアピールした方がいいんじゃないか」という意見もあったのですが、僕はやっぱり本作の圧倒的にユニークな部分は文学で謎を解く部分だと思ったので、そこは怖がらずに推していこうと。実際、夏目漱石や太宰治という名前はみんな聞いたことがあるはずなので、詳しくは知らなかったとしても取っ掛かりがあるなら興味をもってもらえると思いました。
――ドラマで文学の魅力を伝えるうえで、どのように工夫しましたか?
水嶋:名作とされる小説は重厚な作品が多いのでどうしても敷居が高いですよね。なのであくまでライトに、文学作品を全く読んだことがない人でも安心して楽しんでもらえるよう工夫をこらしました。たとえば、聞き手である涼子の設定は原作だともう少し文学に詳しいんです。一方、ドラマ版では全然本を読まない人という設定にしています。そうすることでルナの説明も一段と易しくなりますし、結果的にルナの文学の魅力を伝えたいという熱量がのりやすくなり2人のギャップも相まってオタクキャラが強まりました。ほかにもイラストを入れたり、テロップを入れたり、文学を楽しく学べる作品にするために何度も話し合いました。
――話し手のルナが楽しそうに作家や本の話をしてくれるのも、文学に興味をもつきっかけになりますね。
水嶋:まさにそこは皆がこだわった部分です。特にその回のテーマとなっている文学を紹介するブロックでの、ルナの抑揚のある活弁士風のしゃべり方は監督のこだわりです。きっと文学オタクのルナなら大好きな涼子にも文学を好きになってもらいたいから、一生懸命工夫をこらして話すだろうと。文学愛は作品の大テーマのひとつですので、実際にSNSでドラマをきっかけに本を手にとってくれる人を見かけることもあり、とても嬉しいです。それは彼女の個性でもあるので、そう感じてくれたなら嬉しいです。